平成12年度論文本試験雑感

PART 2

次は民法第2問です。
従来の現場思考型一行問題ではなく、
事例問題でしたね。

第2問

1 Xは、Yから甲土地とその地上建物(以下「甲不動産」という。)を代金2,0
00万円で買い受け、代金全額を支払った。当時、Yは、長年にわたって専ら家事に
従事していた妻Zと婚姻中であり、甲不動産は、その婚姻中に購入したものであっ
た。甲不動産につき、YからXへの所有権移転登記を経由しないうちに、YZの協議
離婚届が提出され、離婚に伴う財産分与を原因としてYからZへの所有権移転登記が
された。
  この事案において、YZの協議離婚がどのような場合に無効になるかを論ぜよ。
2 上記の事案において、Yには、甲不動産以外にめぼしい資産がなく、Xのほかに
債権者が多数いるため、Yは既に債務超過の状態にあったものとする。また、YZが
財産分与の合意をした当時、Zは、Yが債務超過の状態にあったことは知っていた
が、甲不動産をXに売却していたことは知らなかったものとする。
  仮に、YZの協議離婚が有効であるとした場合、Xは、裁判上、だれに対してど
のような請求をすることができ、その結果、最終的にどのような形で自己の権利ない
し利益を実現することになるかを説明せよ。

この問題は、過去問を検討されていた方には
有利だったと思います。
過去問といっても、民法の過去問ではなく、
平成9年度商法第2問のことを指します。

平成9年商法第2問は、口述プロパーの商行為法が小問1、
約束手形の問題が小問2でした。
小問1はほとんど誰も論点の所在に気づかず、
合格答案もほとんど条文を示して半ページでおしまい、という感じでした。
そして、そのような守りの答案であっさりと終わらせるのが
この問題では得策である、といわれています。

本問は、この平成9年商法第2問に問題形式がそっくりです。
なので、小問1は当たり前のことを示して守ればいいんです。
それだけで十分です。

このように、小問1は当たり前のことを半ページ程度で終わらせていい、ということに
気づくかどうかが、本問のポイントだったと思います。

当たり前のこと、とは「離婚意思がない場合は無効」ということです。
これだけ示せば落ちることはないと思います。
もっとも、択一過去問には
離婚意思を欠く場合とはどのような場合か、という問題があるので、
その知識を思い出しつつ書くとより完璧です。
僕が書くとすればこの点にも少し触れて、
それでも15行以内で終わりでしょうね。

思い出せないけれど、一行で済ますのが怖い場合は
虚偽表示でも94条2項適用の余地はない、
なぜなら身分行為に総則の意思表示の規定の適用はないから、などという、
あたりまえの事をかいておけばいいでしょう。

こういった未知の問題で一番怖いのは、
書こう書こうと思ったり、動揺するあまり、
「離婚には94条2項が類推適用される」といった明らかなうそを書いたり、
「長年にわたって従事していた配偶者との協議離婚は
認められず無効ではないか」といった、
条文解釈の枠を大きく外れた独自の論点を、勝手に作ってしまうことです。
こうなると、小問1が原因で大きく減点されることにも
なりかねないですしね。

「難問は、どうせみんな出来ないので、当たり前のことから考えて、
わかりやすく示せばいい」のです。

これに対して、小問2は比較的簡単です。
おそらく民法の過去問の中でも簡単な部類に入るでしょう。
しかし、小問1で過度に動揺してしまうと、
普段であれば確実に解けるはずの小問2でも、
焦ってミスを連発することになりかねません。

難問が出た時に、いかに落ち着いて対処できるか、
そのために、いかに本試験特有の難問が出題された場合に備えた対策を
(難問といわれた過去問の解法を事前に検討するなどして)
事前に考えておくことが出来たか、がポイントだったかな、と思います。

なお、小問2は、
詐害行為取消論の法的性質(Zに請求しうるという結論を導くため)
→詐害行為取消権の要件(その検討の中で論点を論じる)
→詐害行為取消権の効果(登記を自己に移転することを請求しうるか)
→結論(問いにしっかり対応させる)
という具合に整理して書けば、十分でしょう。

さて、次は商法にまいります。

商法
  第1問
 
 ある株式会社が、平成12年度の株主総会において、次のような内容の定款変更を
行おうと考えている。それぞれについて、商法上どのような問題があるか説明した
上、そのような定款変更が許されるかどうかについて論ぜよ。
1 株式の譲渡について株主総会の承認を必要とする。
2 1万株以上の株式の所有者は、自社の製品を定価の4割引きで購入することがで
きる。
3 平成13年度以降に発行する株式に対して行う利益配当は、それまでに発行した
株式に対して行う利益配当の2分の1とする。

なんと一行問題の傾向からはなれた事例問題です。
本試験の会社法の事例問題は
簡単なものが多いですが、
本問もすごく簡単です。
小問3で少し応用が入る程度であります。

しかし、いざ書こうすれば、
あれもこれも書きたくなってしまう問題でもあります。
その中で、自分の頭の中にある知識から、
うまく情報を取捨選択し、
整理して4ページ以内に表現できるか、が
ポイントではないかな、と思います。

また、商法はレベルがすごく低いといわれています。
なので、書きすぎずに普通に取組み、
相対的に上位の答案を確実に書けるか、というのも、
本問のポイントだったのではないか、と思います。

それでは書き方ですが、
本問では総論は不要でしょう。
小問1〜3に関連性は見出せないからです。

一 小問1について
 204条但書には承認機関は取締役会と定め。
にもかかわらず、承認機関を株主総会とすることは
204条但書に反するのではないか。204条が定款によって
株主総会を承認機関にしうるという例外を許容する趣旨なのか、
明らかでなく問題になる。

と、ここまでひつこく条文解釈の姿勢を見せなくても
いいのですが、204条但書には触れる必要はありますね。

論証は 思うに、204条の根拠
    とすれば、原則自由→過度の制約を許容すべきではない
    そして株主総会→招集がなしにくい点で過度の制約
    よって
というように、株式譲渡自由の原則までさかのぼって論じると思います。

小問2は株主平等原則に反しないか、という問題ですが、
規範定立→あてはめの流れを忠実に守る答案を書いていたと思います。
そうしないと、「株主平等原則に反する」という一言で
終わってしまう気がしたからです。

株主権そのものの制約ではないけれど、
株主の地位に関する扱いであるから、
平等原則の緩やかな適用は有り
→○株式数との比例関係、給付の程度などに照らし、
そのような取り扱いに一定の合理性が認められる場合、にOK
→本問では合理性ない→だめ
という流れでしょう。

小問3は
確かに株主平等原則に反するようにも思える
しかし、法自体劣後株の存在認める
また、経営の悪化→必要性有り。しかも、予測可能
→なお合理性が認められる取り扱い
→OK
という感じですね。

小問1、2がしっかり書けると、小問3は自分なりの考えで
大丈夫かなと思います。

では次に商法第二問です。

第2問

 手形法第16条第2項ただし書の「悪意又ハ重大ナル過失」、第17条ただし書の
「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」及び第40条第3項前段の「悪意又ハ重大ナル過
失」には、どのような違いがあるか。そのような違いが生じる理由を挙げながら論ぜ
よ。

一行問題が来ましたか。
しかも実務上は問題とならないといわれている
40条3項まで出題しています。
よっぽどネタがないのでしょうか。

さて、本問では
「そのような違いが生じる理由を挙げながら」と問題文に指示されているので、
その指示に忠実に従うのがいいでしょう。
これに対し、理由を示さずに、解釈論ばかり大展開していくと、
問いに答えていないことになり、
いい評価はえられないと思います。

といっても、どう書くかが問題ですよね。
けっこう書き方が難しいですね。

一 総論
 1 16条2項、17条但書、40条3項は、それぞれ
善意取得、人的抗弁切断、善意支払が適用されない者の
要件について定めた規定
 2 しかし、これら3者は、手形取得者または手形債務者を
保護すべき要請の程度が異なる。
 そこで、以下のような違い

総論はこの程度あっさりしたので十分だと思います。
ここで本問の視点を簡単に示すわけです。

二 16条2項
 善意取得制度は無権利者であることを知らないものに権利を認め保護する制度
→悪意の者は保護すべきでない
+無権利か否かは手形そのものに関する事項
→注意義務に著しく違反する場合は保護すべきでない
よって、通常の意味

三 17条但書
1 人的抗弁→手形外の事項
 とすれば、例えその事項について知っていたとしても、
なお手形上の法律関係については保護に値する場合も。
(具体例)
→強く保護すべき
よって、河本フォーミュラ
2 このように、同じ手形取得者制度であるが、主観的要件は17但の方が広い
→16条は手形権利そのものに関してであるのに対し
 17条は手形外の事項→より保護はかるべきだから

四 善意支払
1 前二者と異なり、手形債務者の保護の制度
そして手形債務者→支払を強制
たとえ無権利者であることを知っていたとしても、
保護に値する場合も(具体例)→強く保護すべき
よって〜
2 このように、主観的要件は手形取得者制度のそれより広い
→手形債務者保護の要請が強いから

なんかほとんど同じことを、繰り返し書いていますが、
本問のポイント=答案の視点は
「手形取得者または手形債務者を保護すべき要請の程度が異なる
→主観的要件に違いが出る」という点にあるのですから、
これを中心に論証を組み立て、
かつ違いの理由を具体的に説明していくほうが、
理解を強くアピールできて、いいと思います。

そして、さらにひつこく理解をアピールするために、
僕なら最後にまとめを入れます。

五 このように、善意取得、人的抗弁の切断、善意支払は、
それぞれ手形取得者保護の要請の度合いが異なる。
よって、〜といった違いが生じる、と考える。

このようなまとめを入れると、問いにも対応できますし、
わかっていることを強くアピールできると思います。

さて、次は刑法ですが、
都合により刑法以下はまたの機会とさせていただきます。
期待しないで待っててください。

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