心よ原始に戻れ(Naked Flower Version)/林原めぐみ
☆担当者コメント
この曲が入っている「Iravati」、実は私の人生で最初に買ったCDで、今に続く私のアニソン収集の原点とも言えるものです。その中で一番好きな曲がこの曲です。ご存知の方も多いと思いますが、もともとは高橋洋子さんの「魂のルフラン」のカップリングでした。それをリアレンジしたバージョンをめぐさんが唄っていますが、この曲を聴いていると、このCDのジャケット写真である屋久島の森の中にいるような錯覚を覚え、いい意味で身体の力が抜けて、歌の世界へと引き込まれていくような気がします。
まず歌いだしの、力強い澄んだ歌声、余計な伴奏を極力排すことで、声のもつ力を最大限に発揮していると思います。この部分は「静」、この後に続く「動」を秘めたアクティブな「静」とも言えるでしょう。
そして、民俗音楽的な、ノスタルジーを感じさせる伴奏の後は、深い森の中で足下を踏みしめながら歩く動物のような、荘厳な生命感あふれる「動」の部分が始まり、緩やかなミドルテンポのリズムで刻まれる「動」がサビにかけて頂点に達し、最後の「心よ原始に戻れ」の後の壮大なコーラス、最後はゆっくり眠りに落ちるようにフェードアウトし、再び訪れる「静」、ここで唄のどこまでも広がる海からこの世界に帰るのです。唄が終わると、森林浴をした後のような爽やかで澄みきった気分になることができると思います。
この曲を一言で言うと、「胎内回帰」とでもいうのでしょうか。どこかギスギスした現世から、温かく柔らかな、不安や悲しみを忘れさせてくれる世界へと帰っていくような優しさに満ち溢れている気がします。そのどこか儚げなこのリアレンジの雰囲気を、壊さずにそっと包み込むめぐさんの優しい、それでいて芯のある強さを持った声はこの曲の最大の聴き所だと思います。
それに対して、原曲の方は、原始の世界へと強く導いていくようなパワフルな感じのアレンジです。そのスピード感を損なわない程度で、なおかつ聴いていて疲れないテンポに合わせ、透明なイメージすら浮かべるような曲調に大きく変えたこのリアレンジ、実は両方とも同じ大森俊之さんが担当しています。原曲と比較して聞いてみるのも面白いと思います。
「Iravati」自体は中古CDコーナーでも比較的よく見かけるCDなので、機会があれば聴いてみてくれればと思います。
※作詞:及川眠子 作曲:佐藤英敏 編曲:大森俊之
※アルバム「Iravati」収録