存在/CooRie

 

 

☆担当者コメント

 この曲は「存在」というタイトルが示すとおり、重たいです。音楽を聴く≒娯楽だと思うので、重たい曲が苦手な人も多いことでしょう。しかしこの曲はただ重たいだけじゃありません。そのことを紹介したいと思います。

 歌っているCooRieはこむちゃへの登場回数は少ないですが、結構有名になったグループですよね。(今ではrinoのセルフユニットとのことなので事実上解散したようなものですが…) ヴォーカルのrinoはたどたどしく聞こえるけれども爽やかな声のゲーム出のアーテイストです。

 この曲ではただ一途に「君の存在(こと)ただ君の存在を」求める少女(?)の姿が描かれています。それはAメロまでは1種類の楽器だけで表現される沈んだメロディーと、不吉を暗示する歌詞――

  「漂う日々 そこに何もないと知っても」
  「散ってなお咲き誇れるように」

――のおかげで最初は病的にも感じられます。しかし、Aサビまではただの序章で、Bメロからは、曲中の少女もだいぶ変わってきます。

  「君の微笑み 守りたいから
   少し遠く離れてみようか…」

自己反省の結果なのか、今までとは明らかに様子が違います。またこの歌詞の次から、色々な楽器が入ってきてメロディーも変化がつき、聞き手はここで曲に引き込まれるはずです。ここでの変化は大きく今までは聞き流せていても、ここからは聞き流すわけにはいきません。

 この後も抽象的な歌詞が続くのですが、そこでは少女は明るい方向へ向かって行きます。君に依存するわけではなく、君と対等な関係へとなろうとします。ただそうはいっても簡単にそう変われるものでもなく、心の奥ではまだ根本からは変わってない様で、ラスト直前では以前の自分が顔を覗かせるのですが、それを打ち消すように締めのサビが重なってきます。

  「幸せを感じあえるように
   私はただ 前を見つめて
   生きていこう 心に羽を広げて」

 この曲が重く聞こえるのはメロディー、そしてrinoの歌い方に拠るところが大きいです。歌詞も重いのは最初だけで、実は後半は普通になっています。しかし最初がメロディー、声、歌詞と三拍子揃ってとことん重いため、実際以上に重く聞こえるのです。それにこの構成は、以前の自分という重さを引きずって変わっていく曲中の少女と上手く対応しています。

 だからこの曲は、むしろ気分が落ち込んでどうしようもない時などに聞いてみるといいじゃないんでしょうか。曲中の少女とともに変わっていこう、と思えるかもしれません。もちろん普通に聞いても良い曲ですよ。

※作詞:rino 作曲・編曲:長田直之
※収録:TVアニメーション『D.C.〜ダ・カーポ〜』ヴォーカルアルバムdolce