nowhere/FictionJunction YUUKA
☆担当者コメント
性懲りもなくFiction Junctionの曲を紹介させていただきます。今回は「長すぎるから…」とのことで「featuring YUUKA」がただの「YUUKA」となっています。
この曲はTVアニメ「MADLAX」の挿入歌として使われている曲です。主人公の戦闘シーンで使われているもので戦闘を意識した激しい曲となっています。でも女主人公のためか、その中にも女性的な彩りが添えられています。
この曲の最大の特徴はコーラスでしょう。梶浦由記お得意の造語なんでしょうが、「ヤンマーニ」と聞こえるそれは、某巨大掲示板でネタにされたりフラッシュにされたりまでするほど。挿入歌なので戦闘に入る際の雰囲気、緊張感といった場面の急な転換には抜群の効果を発揮します。が、普通の曲として聴くとそのラディカルな勢いにヤラれてしまう事は間違いありません!1週間はコーラス部分が頭の中で渦巻き続けることと思います(笑
もちろんコーラス部分だけでこの曲を推薦する訳ではなく、他にも優れた点はあります。
まずは曲の構成。前半部で駆け抜けた詞を後半では何箇所にもくぎって、テンポと印象を変えること、そして潔い締めによって一つの曲の中で起承転結を巧みに表現していることによって、聞き終えた後にはすっきりとした感じになると思います。余韻を残していく曲も良いのですが、こういう曲もお薦めです。
そして南里侑香の声です。前に「暁の車」の紹介でも書きましたがこのヴォーカルは本当声が奥深いです。「暁の車」とは曲調が違うので低音はそれほど響いてませんが、このヴォーカルにはどこか惹かれるものがあると前から思っていました。
その理由として最近思いついたのは、相反した2つの要素を持ち合わせているから、ということです。基本的には清々しさを印象として受けるんですが、語尾で声が震えるんです。それが官能的なものを喚起させ、聴き手はそんな状態でまた彼女の清々しい声を聴くことになるわけです。この特長が聴き手を魅惑する一番大きな要因なんじゃないでしょうか。
もちろん歌詞についても言及させていただきます。
魂の話を聞かせてよ 瞳を逸らさず見つめてよ
あなたは私がどこにもいないと思っている
出だしでいきなり曲のタイトルと符合したテーマを示し、
優しげに微笑む運命に背いて
あなたにもし私を捜す勇気があれば
どこにでも私はいるの
最後でしっかり答えを出して終わる。先に書いたように余韻は残しません。何と気持ちの良い終わり方でしょうか。結末に触れた後でもう一度曲の中盤の話に戻るのも何なんですが、ここでもう一点紹介しておきたい所があります。
全てを見せる星の導く優しい明日
それより明るい未来へと行くから
曲の「転」に当たる部分なんですが、表でこの詞を歌っている時、裏では
(本当のあなたと本当の私が
出会える場所まできっと行けるはず
運命に背いて 涙を散らして
それでも会いたい
we will reach nowhere land
take me to the nowhere land)
という詞が流れてるんです。このような異なる詞を重ね合わせることを専門的に何と呼ぶのかは知りませんが、実に巧い表現方法だと思います。表面と内側で詞に込められている感情が全然違います。そのまま詞の中の「彼女」の建前と本音につながり、それを聴き手ははっきりとしながらも、不自然でない形で聴くことになるからです。
…と、ここまで長々とつまらないこと書いてきましたがやっぱり人には好き嫌いはあるわけで。この曲は極めてアクの強い曲なので特にそれは顕著だと思います。人によっては「暗い」「重い」「わざとらしい」としか思えないかもしれません。しかしハマればその中毒性はもうあなたを離しませんよ!
※作詞・作曲:梶浦由記
※収録:シングル「瞳の欠片」c/w