観た日 | 2006/06/04 20:25- 98min |
観た場所 | TOHO CINEMAS 船橋ららぽーと |
原題 | POSEIDON(ポセイドン号) |
監督 | ウォルフガング・ペーターゼン |
パニック映画の金字塔といわれる
名作「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイク版。
監督はかならずしもリメイクとは考えていないらしいですが
それなら大晦日にポセイドン号が転覆なんて設定拝借しなきゃいいじゃんねー。
まずはここから、ポセイドン・アドベンチャーの感想とネタバレ
これからこっちも借りて観てみようって人や
すぐ借りられるからこっちだけでも観てみようって人は
あぶり出し部分は読まないでください。
有名な俳優は途中降板しないんです。
何があっても最後まで生き残るんです。
だからパニック映画には普通はあまり有名な俳優は出ないんです。
死なないのがわかっちゃうから。
ほら、日本の二時間もののテレビサスペンスでも
一見なんでもない脇役に有名な俳優使ってたら
そいつが実は真犯人だったりすることあるじゃないですか。
あれと一緒ですよ。
でもポセイドン・アドベンチャーでは、
生存者を率いて船底を目指す牧師役で名優ジーン・ハックマンが出てました。
これはジーン・ハックマンがみんなをまとめつつ引っ張って
最後まで生き残って無事脱出して終わり・・・。と思いきや
最後の最後で死ぬんですよこの牧師!
キャラクターの性格的にも俳優のネームバリュー的にも死にそうにない人が最後の最後で死んで
えぇぇ?この人が死ぬの?といい意味で期待を裏切られて驚いた覚えがあります。
実は生きていて後から脱出してくるんじゃないか?とすら思った。
これを観た私の高校時代の友人も似たようなことを言っていました。
このラストは結構衝撃ですよ。
転覆した客船の惨状とともによく描き込まれていたのは人物。
ひとりひとりがいろいろな人生を背負ってきて、災害が起きたその瞬間でも生きていて
それが何の天秤にかかるわけでもなく無作為に奪い去られていく残酷さと恐怖。
誰が次に犠牲になるのかまったくわからない。
混乱した極限の状況下での行動とか発言とかも面白い。
キャラクターがこれだけ描き込まれていたからこの映画すごく評価が高いのだと思います。
豪華客船が転覆して船内さかさまな状況で
助かるために上(船底)を目指すというストーリーは
予告編からは同じっぽく感じたので、
今回は新しい技術での絵の見せ方が楽しみだったのはもちろんのこと、
どういう期待の裏切り方をしてくれるかなというのが
このリメイク版のほうを観る楽しみな点もありました。
全然話違いますがポセイドンアドベンチャーには続き?があって
駄作といわれてるポセイドンアドベンチャー2なんですけど
ポセイドン号が実はプルトニウムを積んでいて
転覆したポセイドン号からそれを回収しようとするばかどもの話らしいです。
ポセイドンアドベンチャーで生存者が脱出したあとの話みたいです。
いくらせっかく作ったセットを活かしたかったからってその無茶な設定はなかろうよ。
あまりに設定がおかしいので観る気にならなかったから観てませんがね。
ここまで
ここから今回のポセイドンの感想。
船内さかさまって設定は最初にリメイク元の映画を観たときは面白かったけど
やっぱりいまさら真新しいかんじはしないですね。
船首を波に垂直に向ければ多少波被って被害うけても
転覆まではしないんじゃないの?とか思ったり。
無論そのつもりで向きを変えようとしてたのに面舵が間に合わなかったわけですがね。
それにしてもあんな大型客船が
まっさかさまにひっくり返ったりするものかい?
船の重心はどこにあるんだい?
とかいう突っ込みもリメイク元からの設定なのでおいとくことにしましょう。
(沖合をあんな大型の豪華客船が航海してしかも海底地震の津波で転覆するなんてのは
海洋物理学上もありえないらしいです)
感想は見た日の日記にもちょっと書いてますが簡潔にいうと
金かけて作ったわりにはよくできたB級クリフハンガーに収まっちゃったもったいない作品。
リメイクはどうしてもオリジナルと比較してしまいがちですが
オリジナルは除外して考えるにしても今回ストーリーが薄っぺらすぎです。
転覆、上下さかさま。という面白い設定も活かしきれてないし。
登場人物の人間性の描写や人物関係などのドラマが一切ないし
こういう映画ってよく登場人物同士がムダに意見の食い違いを見せて争ったりして、
誰かがそれを上手く収めていくのを見せたりもするんですが、
そういったこともなかったし。
最新のCG技術と撮影技術で映像のすごさを見せただけというかんじで
ちょっと物足りなかったですね。
これはもうポセイドンアドベンチャーとは設定一緒ですがまったく別の作品でしょう。
人物だってカート・ラッセルが元市長の設定の意味もわからないし
わけあり風の自殺願望男リチャード・ドレイファスの背景も語られず終いだし
ジョシュ・ルーカスのプロギャンブラーという設定も意味があったのは最初だけだし。
途中カート・ラッセルが元消防士とか言い出したのは映画ファンなら苦笑いするとこでしょう。
出来すぎです。
っていうか牧師はどこにいったんだい?
キャラクターをちょっと入れ替えるくらいならともかく
原作に居る中心人物を消すなーっ。
ここからちょっとネタバレなんてまた消します。
脚本も、あーこれエレベータ絶対落ちてくるだろとか
こいつ自分をラッキーとか言ってるけど、
言ってるそばからなんか落ちてくるか自分が足でも滑らせて死ぬんだろうなとか
子供どうせジョシュが助けてくるんだろとか、
娘婿の気をそらしてる隙にお父さんのほうがもぐっちゃうんだろ。アルマゲドンじゃん。とか
もう実に安易に先が読める展開。
そして、水没してるはずなのになぜか時間が経ってから爆発する船内とか
全てのバラストタンクに水が満たされてるはずなのに
唐突に浮上する船首なんていう意味不明さ。
迫力はおいといて展開が、えぇぇ??ってかんじでした。
逃げてる最中にしても、
一体どこがどう壊れてたら普通の客室や厨房からバラストタンクに出ちゃうんだい?
なにしろ船底へと向かっていく上下さかさまな状態での「縦」の移動を
上手く描ききれてないといった印象。
オリジナルだとこのへんすごく上手く設定を活かしていたんだけどなぁ。
縦を意識できたのって排気口の中を昇って行くとこだけだよね。
セットの豪華さと技術を活かして、冒頭の転覆シーンと、
ボール・ルームの派手さとか船の大きさはよく描けてましたけどそれだけだなぁ。
今回の予想外はドレイファスが生存したとこだけかしら。
私、彼は途中で脱落すると思ってた。
あんまりハラハラはしなかったですよ。
あ、プロペラの回転を止めようとしてるとこだけは良かったかなぁ。
「天才だ」とか一言だけで片付けてほしくなかったけど。
あぁわかった。
ジョシュのキャラクター(演じてる人も含めて)が魅力的じゃないから
私この映画気に入らないんだわ。
主役に「頑張れー」と思えないパニック映画って駄目かも。
最新技術を使った映像の迫力と、
最後までいっきにもっていく展開のスピード感はすごい。
でもそれだけ。
つまらなくはないけど薄いのであとに残らない。
アメリカで興行的にかなりこけたらしいのも理解できます。
観てる最中は退屈こそしませんが、映画好きな人が満足出来るとは言いがたいです。
迫力があったとは言うけど、面白かったとは言いたくない。
リメイクする意味あったのかこれ?
あたらしく話作って豪華客船転覆沈没パニック映画とればよかったのに。
観るつもりがあるなら今のうちにぜひとも「劇場」でどうぞ。これはTVで観たらダメですよ。
但し「ポセイドンアドベンチャー」を観て面白いと思った人は、
プロットだけパクった、まったく別物のアクションスペクタクル映画だと思ってごらんください。