
このページは、「麻疹ワクチン」について説明しています。以下の質問項目から、見てみたいものをクリックしてください。このページの答えの部分にジャンプします。
A:たまに「3日ばしか」といわれるぐらいでたいしたことがないから、受けなくていいなどと言う人がいますが、これは大変な間違いです。「3日ばしか」とは風疹のことで、これは確かに3日程度で発疹がひき、比較的軽くすみますが、本物のはしか(麻疹)は3日どころか乳幼児には「命定め」と言われるほど重症になりやすい病気です。予防接種に積極的でない小児科医でも、麻疹だけは受けておいたほうがいいという意見が多数です。現に今も年間50人程度の子どもが麻疹で亡くなっています。
A:麻疹に自然感染した経験のあるお母さんは、胎盤を通過して赤ちゃんにも抗体を分け与えています。おかげでしばらくの間は麻疹に感染することはないのです。この抗体は生後6〜9ヶ月ころには消えていきますが、抗体が残っている時期にワクチンを接種すると、ウイルスが中和されてしまい、効力が低くなる可能性があります。国の規定で「1歳を過ぎてから」となっているのはそのためです。とはいえ、もし周囲で麻疹が流行している状況なら、有料になりますがワクチンを受けておいたほうがいいでしょう。低月齢だとワクチンの効果が十分でないという意見もありますが、自然感染に比べたら軽くすむことは間違いありません。ただその場合、低月齢がゆえに免疫が十分つかない可能性がありますので、1歳以降にもう一度受けておくようにしましょう。
A:昭和60年から麻疹生ワクチンの定期接種がはじまり、全国的に患者数は激減しました。しかし接種漏れが依然として多く、かつ標準接種年齢が3歳であったため、感受性者(麻疹に対する抗体を持たない人)が蓄積した時点で麻疹の流行が起きています。特に昭和59年と平成2年には全国規模の流行がありました。平成6年の予防接種法の改正で、対象が12ヶ月から90ヶ月に広げられ、平均して1歳から2歳までに接種されるようになり、患者数はさらに減っています。とくに最近では、局所的な流行が起きても、全国規模の流行はほとんど見られなくなりました。
A:麻疹ワクチンが普及した一方で、新たな問題が発生しました。麻疹ワクチンが使われるようになったころには、麻疹はどこでも常在する病気でした。そのためにワクチンを受けた人は、ワクチン免疫がある間に麻疹ウイルスの感染を受け、発病せずに免疫のみが押し上げられる状況にありました(これをブースター効果といいます)。ところが、ワクチンが普及すると、人口過疎地域では急速に麻疹の流行が止まり、長期間麻疹の流行がない地域に流行が起きると、ワクチンを受けた子どもが発病することがわかってきました。つまり乳幼児期の1回接種だけでは、十分な抗体レベルを維持できないのではという心配がもちあがってきているのです。つまり一生大丈夫という保証はないのです。
A:現在日本では1回法ですが、アメリカ、西ヨーロッパ、韓国、台湾は2回法をとってほぼ撲滅しています。いまから10年前まで、アメリカでも麻疹ワクチンの接種は1回でよいとしてきました。しかし、麻疹ワクチンの接種でも抗体ができない者や接種もれの者が常に2〜3%はいるので、10年ぐらいの間に感受性者が蓄積して、大きな麻疹流行となってしまいました。そこでアメリカでは麻疹ワクチンは2回と改められ、さらにMMRワクチンが採用され、麻疹、ムンプス、風疹の流行を抑制することに成功したのです。
またアメリカでは幼稚園や小学校に入るときに必要なワクチン接種状況をチェックされ、麻疹は珍しい病気になっています。それでも年間に約1000例出ています。その中では日本人の占める割合が高いといわれています。このような事実から、一時的な旅行はともかく転勤などでアメリカに移住する場合、2回目のワクチンを日本で受けていかなければ入国できないということになってきているのです。
A:感染が確実もしくは疑われているときには、ガンマグロブリン製剤を注射し、一時的に免疫をつくって発症を抑えたり、症状を軽くしたりする方法があります。ガンマグロブリンは人間の血液から抽出した成分で、麻疹の抗体も含まれているのですが、この効果は短時間で、時間とともに抗体は消えてしまいます。注射をする時期にすでにウイルスが増殖していれば発病してしまい、予防できるタイミングは限られています。最終的にはワクチンを受けて、免疫を獲得しなければなりません。