ポリオワクチンによる副反応で死亡か?厚生省よりワクチンの一時停止の通達

福岡県内でポリオ(小児まひ)ワクチンの予防接種を受けた3歳2か月の女児が接種から23日後に死亡したほか、別の1歳1か月の男児が入院する問題が起こり、厚生省は16日、同時期に検定合格したワクチン(約400万人分)について、品質を再確認するまで使用を見合わせるよう各市町村などに指示しました。ワクチンの全国的な使用停止は極めて異例なことです。

ポリオワクチンを接種すると、約100万人に1人の割合で、手足のまひが発生するといわれています。今回、女児は急性脳症を、男児は無菌性髄膜炎の後に足のまひを発症しましたが、厚生省では「ワクチンによる急性脳症や無菌性髄膜炎の発症例は過去にない」として、男児の足の麻痺についてだけ「原因となった可能性がやや高い」としています。 つまり、厚生省としては、ポリオワクチンと急性脳症による死亡例との関係は少ないが、完全に否定もできないという見解のようです。

このワクチンは昨年5月に検定に合格。400万人分のうち、今年2月以降、156万人分が出荷され、100万人分が使用されたとみられています。これらの品質チェックは1か月程度かかる見込み。

ポリオの予防接種は年間約120万人の小児が受けており、接種率はほぼ100%。接種後の死亡は1977年以降、4件報告されています。

ポリオワクチンによる麻痺症状について

ポリオワクチンは生ワクチンのため、以前よりポリオワクチンによる麻痺症状は知られています。ワクチンウイルスは弱毒化されており基本的には安全なワクチンですが、服用後体内で増え、そのため極めてまれな頻度ですが、ウイルスが脳脊髄に達して麻痺を生ずることがあります。 100万人に接種して1人以下の頻度で、接種された小児に、接種から4〜35日(平均15日)の間に、手足の麻痺を生ずるといわれています。したがって、今回受けられた方は、現時点では完全に大丈夫と断定することは残念ながらできません。接種後、1ヶ月は注意を要すると考えてください。

また、現在接種されているポリオワクチンは、ワクチン投与後15〜37日間(平均26日間)にわたって、ウイルスが便中に排泄されます。このワクチンウイルスが人から人へとうつっていく間に、弱めた毒性があともどりして、強い力を持つようになり、ポリオを発症するという可能性があります。日本でワクチン投与(乳幼児に投与)に関連して発生したと思われる麻痺患者の割合は、約200万回の投与に1人で、その内訳は、接種を受けた本人に関しては約400万回の投与に1人、接種を受けた者から感染し、免疫を持っていない家族等が麻痺をおこした人に関しては約500万回の投与に1人などとなっていて、いずれも1年に1人程度となっています。

ポリオワクチンについて

ポリオワクチンは、小児マヒ(急性灰白髄炎)を予防するための経口生ワクチンです。弱毒化したポリオウイルスを飲んで、ポリオウイルスに対する抗体をつくろうというものです。このワクチンには3種類のポリオウイルスが入っており、3種類ともに確実に免疫をつけるため2回接種します。副作用はまずありませんが、弱毒化したポリオウイルスが腸管を通る間に突然変異を起こし強毒化し、免疫のない周りの人がポリオに感染する可能性があります。そのため、地域ごとに一斉接種がされています。

ポリオ(小児マヒ、急性灰白髄炎)という病気について

「小児マヒ」と呼ばれ、わが国でも30年前までは流行を繰り返していましたが、予防接種の効果で現在は国内での自然感染は報告されていません。しかし、現在でも東南アジアや中国、インドなどではポリオの流行がありますから、これらの地域で日本人がポリオに感染したり、日本にポリオウイルスが入ってくる可能性があります。予防のためにワクチンを飲んで免疫をつけておく必要があります。
ボリオウイルスはヒトからヒトへ感染します。感染した人の便中に排泄されたウイルスが口からはいっ咽頭または腸に感染します。感染したウイルスは3〜35日(平均7〜14日)腸の中で増えます。しかし、ほとんどの例は不顕性感染(感染しても症状がでない)で終生免疫(一度免疫ができると一生かからない)を獲得します。症状が出る場合、ウイルスが血液を介して脳・脊髄へ感染し、麻痒をおこすことがあります。ポリオウイルスが感染すると100人中5〜10人は、カゼ様の症状を呈し、発熱を認め、統いて頭痛、嘔吐(おうと)があらわれ、1000〜2000人に1人の割合で麻痺が出現します。一部の人は永久に残ります。呼吸困難によっ死亡することもあります。