
最近、胃・十二指腸潰瘍の原因に「ヘリコバクター・ピロリ菌」という細菌が関与していると言われるようになってきました。また一部の胃がんの原因では?という意見もあります。しかし今のところ、この菌の除菌療法は保険で認められていません。欧米ではかなり一般化してきているこの治療法も、日本ではまだ治験段階ですが、すでに有効性は証明されつつあります。ただすべての患者さんがこの治療法の対象になるわけではなく、またがんの発生に関しては、まだ有効性のほどははっきりしていません。
ここでは、一般的な考え方を示していますので、知りたい項目をクリックしてみてください。このページの関連部位にジャンプします。
- 胃・十二指腸潰瘍の特徴
- 「再発と寛解を繰り返しながら慢性的に経過していく病気」である。
- 2ヶ月ほどの内服と通院治療によって一時的にはほぼ完全に治すことができる。
- しかしその後、酸分泌抑制薬を飲んでいても、高頻度で再発する。
- 胃・十二指腸潰瘍の原因と治療(これまで言われてきたこと)
- 胃壁の攻撃因子には胃酸、消化酵素ペプシンなどがあり、これに対して薬として、H2ブロッカー(タガメット、ザンタックなど)、プロトンポンプ阻害薬:PPI(オメプラール、タケプロンなど)が使われる。
- 胃壁の防御因子には胃粘膜などがあり、これに対して薬として、粘膜保護剤(セルベックス、ムコスタ、アルサルミンなど)が使われる。
- 潰瘍が瘢痕化しても、さらに維持療法(通常量の半分の潰瘍治療薬の服用を続けること)を行って再発を防止し、病巣を完全に治癒した状態にすることが重要。
- 再発しやすい原因
- 「働き盛りの胃潰瘍の患者の約半数は、6年で再発する」と言われる。原因としては
- ストレスの多い生活に戻る
- 不十分な治療(患者の自己判断による内服中止)
- ヘリコバクター・ピロリ菌の感染
- ピロリ菌は除菌すべきか?
- ピロリ菌がいると必ず消化性潰瘍になるわけではない。ピロリ菌に感染していても、消化性潰瘍にならず健康でいる人のほうが圧倒的に多い。
- 消化性潰瘍はピロリ菌だけが原因ではなく、患者の因子も関与している。
- ピロリ菌のもつ毒性にも関係している。
- 消化性潰瘍が治癒したかに見えて、繰り返し再発する人は除菌したほうがよい.
- ピロリ菌の検出方法は?
- 内視鏡検査
- 菌培養法:3〜5日
- 病理学的検査:組織を取って、特殊染色によりピロリ菌を証明する。がん細胞の有無も同時にチェックできるので当院では、この方法を採用している。
- 迅速ウレアーゼ試験(CLOテスト):30分、最も一般的ですぐに結果が出るというメリットがある。
- 血液検査:抗体検査。
- この方法は最近、人間ドックなどで採用されているところもあるようだが、現在の感染を直接証明するものではないので注意が必要。
- 呼気試験:ピロリ菌の産生するアンモニアを呼気で証明しようというもの。あまり一般的ではない。
- ピロリ菌の除菌療法
- 3剤併用療法:除菌率は高いが、副作用(下痢など)が問題
- プロトンポンプ阻害薬:PPI(オメプラール、タケプロンなど)
- 抗生物質:サワシリン(アモキシリン)、クラリシッド
- 駆虫薬:メトロニダゾール(フラジール)
- 2剤併用療法:除菌率はやや劣るが、安全性は高い
- プロトンポンプ阻害薬
- 抗生物質
- 除菌療法の実際(当院での方法)
- オメプラゾール(20mg)2T 分2 ×14日
- アモキシリン(250mg)6T 分3×14日→84T(\9.8×84=\823)
- フラジール(250mg)4T 分2×14日→56T(\47×56=\2632)