ここでは、サルモネラ菌による食中毒について説明しています。知りたい項目をクリックして、答えの部分にJump!

はじめに

 サルモネラは、代表的な感染型食中毒菌で、数年前までわが国では食中毒発生件数の第三位に位置していました。ところが、1980年代後半から、鶏卵関係食品を原因としたサルモネラの一菌型(サルモネラ・エンテリティディス)による食中毒が 欧米を中心に多発し、わが国でも、平成元(1989) 年から 発生件数の1、2位を占めるようになりました。
 また昨今の宅配ブームで、ケーキなどもよく見かけますが、これらも注意が必要です。卵関係以外では、最近では「イカの珍味」で、話題になりました。

サルモネラに対する一般的知識

 菌の分布状況について

 原因食品について

 とくに鶏卵について

 症状について

 予防のポイント

最近の事例

 ケース1:イカ乾製品

 ケース2:日替わり弁当

 ケース3:宅配チーズケーキ


サルモネラに対する一般的知識

 菌の分布状況について

この菌は、鶏、豚、牛、ペット、スッポンやウナギなど、ほとんどの動物が持っています。サルモネラが付着した卵や肉を原材料として使用したときに調理済の食品を汚染したり、時には調理者がサルモネラの保菌者となり、その人が食品を汚染し、食中毒を引き起こします。

 原因食品について

卵とじ、かつ丼、玉子焼、自家製マヨネーズ、卵入りとろろ汁、ケーキ類で生卵か半熟の状態の食品や、レバー刺しや牛肉刺身などの食肉食品が多いです。また、卵や生肉などから調理器具や手指を介して他の食品が汚染を受けることもあります。

 とくに鶏卵について

 最近,スーパーなどで「サルモネラ菌チェック済み」という表示をした卵が売られています。これは、サルモネラ菌による食中毒が増加しているため、それに対応したものだと考えられます。サルモネラ食中毒の原因菌としては,ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)と腸炎菌(Salmonella enteritidis:SE)が代表的なもので、特に鶏卵や鶏肉を原因としたSEによる事例が1989年以降増えているようです。
 卵は,最もよく利用される食品ですし,そんなに怖がることはありませんが,最近のグルメブームで「生」が好まれるようになったことも食中毒増加の原因の一つと考えられます。

夏場の鶏卵について
 鶏(特に赤玉鶏)は梅雨時から9月までの非常に蒸し暑い時期、人間と同じで鶏が夏バテしてしまい飼料(エサ)を食べる量が減ってしまい水を多く摂取します。そのため濃厚卵白(白身でもプルンとしている部分)の比率が減ってしまい、水様卵白が増えてしまいます。
 卵白(特に濃厚卵白)は非常に優れた性質を持ち「リゾチーム」という酵素で雑菌を死滅させる能力を持っています。この濃厚卵白が減ってしまうと鶏卵自体の鮮度(ハウユニット)が急激に落ち雑菌に対する抵抗が減ってしまい、いわゆる食中毒菌の侵入や腐敗に繋がります。

鶏卵の保存の問題
 卵がだぶつく時期に常温で長期間保存された卵が出回ることがあります。この卵にin egg(卵の中にサルモネラ・エンテリティデス(SE)が入る)が混じりますとその卵は汚染が非常に進んでいます。その様な卵は生食はもちろんのこと、菌量が多いため、手指や卵料理に使った調理器具、冷蔵庫等からの2次汚染の可能性も非常に高くなります。

食中毒の多発
 上の2つの条件が重なった鶏卵は大変危険で、9月、10月が要注意です。現実に、過去2年間9月〜10月にSEによる大きな食中毒が多発しています。

ポイント

  1. 卵の賞味期限を確認し、期限内に使用する。
  2. 使用量に応じた仕入れ。卵を購入後、冷蔵保管。
  3. 事前のまとめ割りをしない。割卵時、卵の状態(破卵、ひび割れ、水様性卵白)に注意する。
  4. 卵使用後の手洗い、器具の消毒、殺菌。
  5. 調理従事者の健康チェックと手洗いをしっかりとする。

 症状について

潜伏時間は約8時間から48時間で、腹痛、下痢、発熱(38℃-40℃) 、嘔吐、頭痛などが主症状です。

 予防のポイント

  1. 食肉などを取り扱った器具、容器、手指はそのつど必ず洗浄消毒をすること。
  2. 調理の際は食品の中心部まで火が通るように十分に加熱(中心部が75℃、1分以上)すること。
  3. 鶏卵は新鮮なものを購入すること。購入後は、なるべく短期間に消費すること。
  4. 検便を励行して保菌者の発見に努めること。
  5. ネズミ、ゴキブリ、ハエなどの駆除を実施すること。
  6. 乳幼児や高齢者(ハイリスクグループ)には、加熱不十分な卵料理は提供しない。 (卵かけご飯禁止)

最近の事例

 ケース1:イカ乾製品

<発生状況>
 平成@年12月19日〜翌年5月にかけて,全国各地で「いかの珍味」による食中毒が発生した。患者数は1,634名で,主症状は下痢,発熱,腹痛,嘔吐などであった。

<原因食品>
 調査の結果,原因食品はA水産が製造したソウメン状,板状,短冊状のイカをいくつかの会社が加工した「いかの珍味」などで,A水産の従業員の便,施設のふき取り調査,製品などからサルモネラ菌が検出された。

<汚染経路>
 原料,運搬車両,従業員の靴などにサルモネラ菌が付着して工場内に持ち込まれたと推定される。また,手洗い施設に石鹸がない,器具を床に直に置く,器具の洗浄に洗剤や消毒剤を使用しないなど衛生上の問題があり,これらの要因により工場内が汚染されたものと考えられる。さらに,製造工程では,汚染作業区と清潔作業区の区別がなく,解凍および調味工程での汚染,乾燥工程での増殖,殺菌工程がない,製品検査の不備など様々な要因が重なった。

 ケース2:日替わり弁当

<発生状況>
 平成@年1月○○日、株式会社Aの従業員885名がB弁当屋の日替わり弁当を食べたところ、558人の従業員に下痢、腹痛、発熱、悪寒などの食中毒症状があらわれた。この日の日替わり弁当のメニューは、「イナダのみりん醤油漬け、串カツ、玉子巾着、こんにゃく煮、キャベツときゅうりのゆかり和え、ご飯」 であった。

<原因食品>
 検査の結果、原材料の凍結前未加熱の冷凍食品「玉子巾着」、調理済みの「玉子巾着煮」および「こんにゃく煮」からサルモネラ菌が検出された。こんにゃく煮から検出されたサルモネラ菌は、玉子巾着煮から二次汚染したものと考えられた。したがって、原因食品は玉子巾着、病因物質はサルモネラ菌と特定された。

<汚染経路>
 今回の食中毒事件は、まず原材料の凍結前未加熱の冷凍食品「玉子巾着」がサルモネラ菌に汚染されていたことにより発生した。また、この「玉子巾着」は冷凍した生卵を油揚げで包んだ冷凍前未加熱、加熱後摂取の冷凍食品であるにもかかわらず、調理人が加熱済み冷凍食品と勘違いし、十分に加熱しなかったことも食中毒の発生につながった。

 ケース3:宅配チーズケーキ

<発生状況>
 ある食材宅配会社から購入したチーズケーキを食べて、家族3名中3名が下痢、発熱等の食中毒症状を呈した。

<原因食品>
 その後の調べで、患者の便、チーズケーキからサルモネラ・エンテリティディス菌(SE)が検出され、サルモネラ食中毒と判明した。

<汚染経路>

・製造過程
 1.スポンジ  焼成(180度、10分)
 2.カマンベールクリーム
    牛乳・グラニュー糖(沸騰)
     | ←卵黄、グラニュー糖
     | ←ゼラチン、レモンジュース
     | ←イタリアンメレンゲ(卵白に煮詰めたシロップを加えたもの)
    MIX後冷凍
 3.仕上げ
    スポンジでクリームをサンド
      冷凍保管
・原 因
メレンゲに冷凍卵白(無殺菌)を使用し、加熱不足のためSEが残ったと考えられる。(冷凍卵白の表示には、「加熱をして使用する事」と有り)

<対策>

  1. 無殺菌の液卵は、SEの汚染率が高く、加熱不十分なメレンゲ等には使わないこと。
  2. 生食に使う卵は、産卵日、養鶏場の表示のある新鮮な卵を使用すること。

最近、ケーキ類による食中毒が多発しています。
原因として、以下のことが考えられます。注意しましょう!

  1. 卵を大量に使うこと。
  2. メレンゲ等ケーキの仕上げに卵を使うこと。
  3. 大量に作り、作り置きをしていること。
  4. ケーキ、卵の危険性の認識が不足していること。