ここでは、腸炎ビブリオ菌による食中毒について説明しています。知りたい項目をクリックして、答えの部分にJump!

はじめに

この菌による食中毒は、毎年、サルモネラによるものと発生件数の1位、2位を争っています。その発生時期は7月から9月の夏場に集中します。

腸炎ビブリオに対する一般的知識

 菌の分布状況と特徴について

 原因食品について

 症状について

 予防のポイント

最近の事例

 ケース1:催し物弁当

 ケース2:寿司屋の仕出し料理(鉢盛り)


腸炎ビブリオに対する一般的知識

 菌の分布状況と特徴について

 この菌は好塩菌の一種で、沿岸の海水中や海泥中にいます。1日の最低気温が15℃以上、海水温度が20℃以上になると海水中で大量に増殖し、魚や貝に付着して陸上に運ばれます。
 海水とほぼ同じ塩分(3%前後)で発育増殖しますが熱や酸に弱く、真水の中では生存できません。一般の細菌は普通30分から45分で分裂して増えますが、陽炎ビブリオは、条件さえ良ければ10分たらずで分裂し増殖します。しかし、10℃以下では増殖しません。 

 原因食品について

魚介類の刺身やすし類が代表的なものです。また、野菜の一夜漬けも多く、生の魚介類を調理した後の調理器具や手指などを介してこの菌に汚染されます。

 症状について

潜伏時間は約6時間から32時間で、激しい腹痛、下痢などが主症状です。発熱、はき気、嘔吐を起こす人もいます。通常、2〜3日で回復します。

 予防のポイント

  1. 魚介類は、調理前に流水(真水)で良く洗うこと。
  2. 魚介類に使った調理器具類は良く洗浄・消毒してニ次汚染を防ぐこと。
  3. 魚を調理したままのまな板で、野菜などを切らないこと。
  4. 魚介類はわずかな時間でも5℃以下で冷蔵保存すること。

最近の事例

 ケース1:催し物弁当

<発生状況>
 平成@年9月△△日、Aデパートで開催された「大北海道展」で販売された弁当を購入した1003名のうち、742名に腹痛、下痢、発熱などの食中毒症状があらわれた。催しもの弁当の主な具 は、カニ棒、カニフレーク、イクラ、蒸しウニ であった。

<原因食品>
 検査の結果、弁当残品のすべての具から腸炎ビブリオが検出された。さらに詳細な調査の結果、原因食品はカニ棒(推定)、病因物質は腸炎ビブリオと特定された。

<汚染経路>
 催し物当日、冷凍のカニ棒は午前6時から解凍され、冷蔵オープンショーケースに保管されていたが、大量に保管したことから十分に温度が下がらず、また会場の気温も高かったことから食中毒菌が増殖したものと考えられた。

 ケース2:寿司屋の仕出し料理(鉢盛り)

<発生状況>
 *年8月17日、A病院より「関連の無い複数の家族約15名位が腹痛、下痢の症状を訴えており、食中毒が疑われる」旨の通報があった。原因を調査したところ、お盆に近くのA寿司店から仕出しを取っており、共通食は鉢盛りであった。検便で腸炎ビブリオ菌を検出した。 その後他の病院からも届出があり、15グループ70人の食中毒事件となった。

<原因食品>
 鉢盛り料理 原因食は不明 

<汚染経路>
 ・注文が増えたので、前日に下処理を行った。
 ・ベテランの調理長が休みのため、調理場の段取りが悪く、調理台、冷蔵庫内とも混雑していた。
 ・調理済み食品と生の魚介類が接触したりして2次汚染を起こした。
 ・鉢盛で器が大きく、冷蔵庫に入らず配達まで室温に置いていた。
 ・配達担当者を調理場に入れ、アルバイトに配達にまかせた。地図を見ながらで、配達に2時間近くもかかっていた。

<対策>
 ・2次汚染しないよう調理済み食品と原材料を区分して調理する。
 ・盛りつけ、配送の時間を短縮する。
 ・危険な食材を使わない。夏場のウニは大変危険。
 ・加熱は、中心温度75℃1分間を守る。冷やすものは素早く冷やして冷蔵庫に。