事件解決直後の記者会見会場。



私は徐に、それまで背中を預けていた壁から身体を起こすと、
音も立てずに部屋を後にする。
もう然程待たずして、部屋の中は、
一気に怒号と混乱と喧騒に包まれる。
その渦の中から、
私だけは一足先に逃れる事にして・・・・・。



人気の無い廊下を私だけが歩いてゆく。
突き当たりの角を一つ曲がり、
途中の角でもう一つ曲がる。



其処に、男は立っていた。



「室井警視正ですね?」
知っているクセに、
一応は段取りを踏んでという感じで声を掛けてきた。
無意識の内、僅かに眉根が寄ってしまう。
それでも出来うる限りで不愉快を押し隠し、私は応えた。
「そうだが・・・君は?」
「失礼しました。
 私(わたくし)東京地検の検察官で、土谷と申します」
「・・・・・東京地検?」
男は、まるで私とチェスでもしているかの様な口調で言った。
そう。
「チェックメイト」
とでも言うように。
「本日−−時。
 貴方に逮捕令状が出ました」
「・・・・・な・・・・・に・・・・・・・?」
「御同行、願います」
有無を言わさぬ口調だった。





___ これは 何かの間違いに 違いない ___





己の血溜まりの中でさえ、私を気遣ってくれた君。

「信じてる!!」と、たった一人叫んでくれた君。

慟哭し、のたうち回る私の魂の傍らに、そっと寄り添ってくれた君。

季節の移ろいを、市井の人々の機微を教えてくれた君。

人を愛し、恋うる事を教えてくれた君。

辿り着けるか定かでもない程の高みを目指す私を、

何時までも、何処にいても、待っていると言ってくれた君。





けれど・・・・・

けれど・・・・・

ああ、けれど・・・・・





「青島、君との約束は果たせそうにない」





            〜怒りのままに、突っ走ったらこうなった!!17.05.06〜