脳腫瘍



脳腫瘍とは、脳組織の中に異常細胞が増殖する病気です。

 脳腫瘍には、脳組織自体から発生する原発性脳腫瘍と、他の臓器のがんが脳へ転移してきた転移性脳腫瘍の2種類があります。

 原発性脳腫瘍には、良性と悪性の2種類があります。たとえ良性の腫瘍であっても、頭蓋内という限られたスペース内に発生する脳腫瘍は、大きくなると正常な脳を圧迫し障害をおこし、治療の対象になります。

 脳腫瘍の年間発生率は人口10万人につき約10人と算定されており、どちらかといえば発生頻度の低い腫瘍です。成人に多く発生し、脳腫瘍全国集計調査報告では、小児期(15歳末満)の脳腫瘍は全脳腫瘍の13.1%を占めるにすぎません。しかし、小児腫瘍のなかでは、白血病(42%)に次いで第2(24%)を占め、小児腫瘍の分野では多い方の腫瘍です。

 脳腫瘍は頭蓋骨の内部に発生する腫瘍で、脳組織そのものから発生する腫瘍はもとよリ、脳組織の外側にある、たとえば脳を保護する膜(髄膜)から出る腫瘍(髄膜腫)などもふくみます。一般に、脳組織内に発生する腫瘍は悪性で、脳組織を破壊しつつ脳内を浸潤・進展し、脳機能低下(半身麻痺や言語障害など)をひきおこし、治療が無効な場合には呼吸中枢を冒して致命的となります。それに対して、脳組織の外側に発生する腫瘍、たとえば前記の髄膜腫や聴神経腫瘍は良性で、早期発見をして手術で全摘出が行えれば、再発もなく治癒が得られます。脳腫瘍全体では、悪性と良性の数はほぼ半々ですが、小児期では75%が悪性です。
 一般的に悪性脳腫瘍の治療は決してやさしくありません。その最も大きな理由は、脳という重要な場所に発生しているため、腫瘍が正常脳のなかに進んでいる部分(浸潤部)を広く切除できないことです。手術を行っても常に腫瘍が残っていると考えなければなりません。放射線治療は有効ですが、腫瘍周囲の正常脳への障害を考えると限度があります。
 脳は重要な臓器なので、有害な物質が血液のなかから脳組織へしみ出してこないような自然の防壁(血液脳関門)があります。これによりわれわれの脳は保護されているわけですが、化学療法を行うときは、この防壁のため薬の脳への移行が不十分になるという欠点があります。このような不利な条件が多いため、現時点での治療成績は満足できるものではありません。
 脳腫瘍で最も多いのは、大人、子どもを問わず脳のグリア細胞由来のグリオーマ(神経膠腫)で、小児では髄芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫がつづきます。症状としては脳圧亢進(頭痛、嘔吐)、小脳失調(歩行障害)、脳神経麻痺(顔面神経麻痺、眼位異常)、視力障害、多飲多尿、などの健康児にはみられないものが多く、このような症状が数日以上つづいたときは、脳神経外科を受診したほうがよいでしょう。検査としては、CTスキャンやMRIの診断精度はきわめて高く信頼できます。

詳しくは下記のHPをご覧下さい(国立ガンセンターHP)。

脳腫瘍(成人)

脳腫瘍(小児)