頭痛










 頭痛と言っても何が痛むのでしょうか? 

 頭蓋内外の痛覚感受部位

  頭蓋外では
    表皮、筋膜、筋、頭蓋底部の骨膜、末梢神経、動脈

  頭蓋内では
    脳血管、硬膜の一部(特に脳底部)、第5・9・10脳神経、第2・3頸神経

 すなわち、脳実質は痛みを感じないのですよ。と言うことは、
 脳実質の病気は痛くないと言う事ですね。 ここは皆さんの勘違いの多いところです。
 




頭痛の分類 


 
 1. 一次性頭痛(機能性頭痛): 基礎疾患のないもの: 心配のない頭痛
    片頭痛 緊張型頭痛、群発頭痛、神経痛、心因性頭痛 など

 2.二次性頭痛(器質性頭痛): 原因疾患のあるもの: 心配な頭痛
    脳外科的適応のある疾患
      くも膜下出血、脳腫瘍、脳内出血
    内科的疾患
      髄膜炎、感冒 など
    耳・鼻・眼・歯科疾患によるもの



国際頭痛学会による頭痛の大分類


 機能性頭痛   1.片頭痛
 2.緊張型頭痛
 3.群発頭痛および慢性発作性片頭痛 
 4.器質的疾患を伴わない各種の頭痛 
 症候性頭痛   5.頭部外傷に伴う頭痛
 6.血管障害に伴う頭痛
 7.非血管性頭蓋内疾患に伴う頭痛
 8.原因物質あるいはその離脱に伴う頭痛 
 9.頭部以外の感染症に伴う頭痛
 10.代謝障害に伴う頭痛
 11.頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいは
    他の頭蓋・頭蓋組織に起因する頭痛あるいは顔面痛   
 12.頭部神経痛、神経幹痛、求心路遮断性疼痛
 13.その他





片頭痛とは


片頭痛は頭の血管が拡張する為に、血管の周りの神経が刺激されて起こります。
     (詳しくは頭痛大学の片頭痛のページへ
頭痛を訴える患者さんの大部分は、自らを「頭痛もち」と思っています。この頭痛もちの頭痛の中にはいくつかの種類がありますが、最も多く、しかも悩まされるのが「片頭痛」です。
 
片頭痛は頭の片側からこめかみにかけて脈打つように「ずきずき」、「がんがん」と痛み、ひどいときには日常生活が妨げられるほどの強さの痛みや、吐き気を伴うとてもつらい頭痛です。
 
片頭痛は思春期頃から発症することが多く、成人の約8%が罹患しています。

中でも女性に多く、患者さんの数は男性の約4倍といわれています。片頭痛は一生の病気であり、現在の医学では完全に治すことはできません。

 片頭痛の症状

 片頭痛はその名の通り、片側の頭痛として現れることも少なくありませんが、痛みの現れる部位が左右変動する場合や、両側が痛むが左右で差がでる場合、両側が痛む場合など痛みの種類はさまざまです。
 片頭痛は決まった片側のみに現れる頭痛ではなく、「偏った痛みがあらわれやすい」と理解していてください。 片頭痛の特徴は以下のとおりです。

  • 脈に合致したズキンズキンとした痛みである。
  • 痛みは頭の片側の時が多いが、両側の時もある。
  • 頭痛は、数日〜数週間の間隔をおいて発作性に現れる。
  • 一回の頭痛は数時間から3日で治まる。
  • 頭痛発作の時に、悪心(吐き気)、嘔吐などを伴うことがある。
  • 頭痛発作の時に、強い光や大きな音、不快なにおいで頭痛が強まることがある。
  • 明け方から目覚めの時に頭痛発作が起こることが多い。
  • 頭痛の強い部分を手で圧迫すると、その間は痛みが和らぐ。
  • 遅くとも30歳までに発症する。
  • 頭痛発作の時、またはその直後に下痢や発熱などの症状があらわれることがある。
  • 血縁者の中に似たような頭痛を訴える人がいる(母親が片頭痛である事が多い)。

 片頭痛の種類

片頭痛では、小児や高齢者を除いてたいていの人が頭痛のあらわれる30分から数時間前に前ぶれを感じます。片頭痛は、前兆(目の前にチカチカと光が見えたり、星が見えたりする症状:閃輝暗点)のある片頭痛と、前兆はないがなんらかの前駆症状(頸すじ・肩の張り、生あくびなど)のある片頭痛、前兆も前駆症状もまったくない片頭痛と、大きく3つに分類されます。

  頭痛の検査と診断

 片頭痛は検査ではわかりません。患者さんからの問診と医師がもっている医学知識を照らし合わせることによって初めて正確な診断ができます。
 脳の検査として思い出すのがCTやMRIですが、これらは脳組織が破壊されるような病気については写しだすことができます。しかし、片頭痛は脳組織に異常を起こさないためこれらの検査では診断できないのです。片頭痛は脳ではなく血管が拡張することで痛みが起こるのです。

片頭痛の治療法

片頭痛の時には光が刺激となりますので、暗い部屋で静かにする方が望ましいでしょう。また頭を氷枕等で冷やすと拡張した血管が収縮するので、頭痛が軽くなります。
 でも、
片頭痛の治療法の中心は薬物療法です。現在までにわかっている範囲では薬物以外の治療法つまり物理療法食事療法といった方法では、補助的効果葉認められるものの、その効果は薬物療法を上回るものはありません。
 片頭痛薬物療法には大きく分けて二つの方法があります。一つは頭痛発作が出たときに対処する方法で、これを頭痛抑制治療といいます。これに対し頭痛を出にくくする治療法があり、これを頭痛予防治療といいます。
 たいていの場合、頭痛抑制治療から開始し、症状が強かったり、頭痛の回数が多かったりした場合に、頭痛予防治療を追加します。
 片頭痛の予防効果が認められている薬は、抗うつ薬、βアドレナリン遮断薬、バルプロ酸、カルシウム拮抗薬などがありますが、日本ではカルシウム拮抗薬の塩酸ロメリジンが保険適応となっています。

主な抑制薬

薬剤分類 長 所
短 所
各種消炎鎮痛薬 軽症例では十分な効果が得られることが多い。 連用によって薬物性頭痛を招く可能性がある。
エルゴタミン製剤(カフェルゴットRなど) 血管収縮作用によって動脈の拡張を抑制する。前兆や前駆症状のうちに服用すると、高い効果がある。 狭心症、妊婦には使用できない。
トリプタン系製剤(スマトリプタンRなど) 頭痛発作があらわれたのちの投与でも頭痛の改善をもたらす。 血管収縮をきたすので高齢者への投与は避ける必要がある。


片頭痛には種々の誘発因子があります。これらの関与の程度はさまざまですが、ちょっとした注意で片頭痛の引き金となるものを避けることができます。具体的な注意事項は次のとおりです。
  • 空腹時に頭痛は起こりやすいので、食事は3食しっかり食べる。
  • チョコレートや赤ワインなどの飲食物は避ける。
  • 過ぎや寝不足は避ける。
  • 月経の始まる前や月経中などに発作が集中して起こる人は、早めに予防薬を服用する。
  • 経口避妊薬やホルモン療法で頭痛が悪化することがあるので、症状がひどい時は治療の継続を検討する。
  • 旅行中に片頭痛が起こることが多いので、旅行中でもできるだけ普段とおなじ生活のリズムを崩さないようにする。




緊張型頭痛とは


緊張型頭痛は頸部から頭部全体を取り巻く筋肉の緊張から起こる頭痛です。

中高年に多く、女性にも男性にもみられる頭痛で、程度としては軽度〜中等度で、日常生活への影響は余りありません。頭全体を締めつけられるような持続的な頭痛です。帽子を被った感じとか鉢巻きをした感じです。片頭痛とは違い、体を動かすことによって悪くなることはなく、また、片頭痛でみられる吐き気、嘔吐、音や光に対する過敏性といった症状もありません。

この頭痛はいろんな事を気にしすぎるという性格が関係しています。

随伴症状として

(この症状が主な訴えで受診される事が結構多いです。例えば歩くとにふらつくと言う訴えですね。私が意外と重視しているポイントです)

1.頸や肩が凝る、熱感や違和感を頸や肩に感じる
2.眼が疲れやすい(重たい感じ、見えにくい感じ、眼の圧迫感など)
3.全身倦怠感(体がだるい) やる気が出ない
4.集中力の欠如 物忘れ
5.フラフラ感、ふわふわ感、歩くときに何かおかしい 体動時に一瞬フラッとする
6.睡眠障害、眠りが浅い


緊張型頭痛の原因

精神的ストレス

神経を使いすぎると頸や頭の周りの筋肉が凝ってきて緊張型頭痛になります。ストレスと言うと「イライラ」と考える方が多いのですが、いろんなストレスがあります。ちょっとした事でも気にすると原因になりますし、気にしすぎる方には起こりやすいです。
身体的ストレス

頸や肩が凝る様な姿勢を長く続けると起こります。デスクワークやパソコンなどの仕事で起こることが多い様です。目の疲れからも起こります。首の病気からも起こります。

緊張型頭痛の診断

問診が大事です。問診でだいたいの診断がつきます。初めて受診された方には器質的疾患がないことを確認するためにCTスキャンを撮る事はあります。

ここで、問診の説明を。

@時々ある頭痛か、初めての頭痛か?
A頭痛の起こり方は? ジワジワか、急か、突然か?
B頭痛の部位は? 側頭部か、後頭部か、全体か?
C頭痛を言葉で表現したら? 重たい感じ、ガンガン、ズキッ、ズッキンズッキン
Dどんな時に痛くなりやすいか? 生理の時、寝不足の時、お酒を飲んだ時
E随伴症状は? 閃輝暗点、嘔気・嘔吐、肩こり
F家族歴は? 

緊張型頭痛の治療

原因によりけりですが、ストレスのもとがはっきりしている場合はそれを取り除くようにしなけらばなりません(と言っても無理な場合が多いですね)。またその方の性格が関係していますので、スッキリと治らない場合や、治ってもまた起こる場合もあります。大事な事は頭痛の原因を理解して貰うことです。

@心身共にリラックスする事。
 気分転換を勧めます。自分の病気を心配しすぎて悪くなっている方もおられます。こういう場合は頭痛自体が心配ないと説明すると軽くなることもあります。1人で考えすぎている方は、どなたか相談できる人がいれば良くなります。
A首や肩のこりをとる。
 こりを取るためには温めてもみほぐす事が大事です。お風呂で暖まった時に体操するといいでしょう。マッサージもいいです。一番いいのは運動でしょう。暖まりますし、気分転換にもなります。
 また、姿勢を正します。方が凝るような姿勢は短くし、休憩を間にいれ、その時に体操をする様にしましょう。
B以上の治療で治らない時にはお薬を併用する事があります。
 薬には気分だけでなく筋肉もリラックスさせる働きをもつ薬を使います。これで不十分な時は鎮痛剤を併用します。不眠は強い方には睡眠導入剤を使います。うつ傾向の強い方には抗うつ剤を使います。これらの薬をうまいこと使い分けながら、病状を詳しく説明し理解して頂くと頭痛は軽くなります。
 



その他の機能性頭痛

群発頭痛

【特徴】この頭痛は起こり始めると1〜2ヶ月の間、毎日起こる(だから群発と言います、群発地震と同じ言葉の使い方)のが特徴です。20〜30才の男性に多く起こります。一側の眼がえぐられるような激しい頭痛です。寝ているときに起こることが多く、痛みで目が覚めます。だいたい同じ時間に起こります。涙や鼻水が出たり、顔面が紅潮したり発汗したり、結膜が充血したりします。飲酒で誘発されやすいです。
【治療】片頭痛の予防の薬を毎日内服し、それでも起こるときはトリプタン製剤を飲みます。酸素吸入が効くこともあります。
後頭神経痛

大後頭神経痛、小後頭神経痛、三叉神経痛などがあります。大後頭神経痛は意外と多いです。外来で神経痛ですねと言いますと、「えーっ、頭に神経痛ってあるんですか」と時々聞かれます。神経痛と言うと膝や足と思われている方が多いのです。
大後頭神経は首から出て後頭部を通って前頭部まで伸びます。前頭部からは三叉神経の枝が伸びて来て吻合しています。
【特徴】神経痛の特徴は過敏になった神経が刺激された時だけズキーッと痛みます。程度は強いのですが、しばらく我慢しているとおさまります。また時間をあけてズキーッと痛みます。頭を動かした時に起こります。たいていは肩や首のこりが強い時に起こります。ですから緊張型頭痛に併発することが多いのです。たまには首自体の病気や帯状疱疹から起こることもあります。
【治療】原因次第ですが、緊張型頭痛に伴う時はその治療を行います。帯状疱疹や首の病気で起きている時は、それぞれの治療を行います。原因がはっきりしない時もありますが、鎮痛剤で止まることが多いです。帯状疱疹では発疹が2〜3日遅れて出ますので、痛み始めに受診された時は後で発疹が出るかも知れないと注意します。出たら皮膚科で治療を受けます。



危険な頭痛は?

前に述べました二次性頭痛(器質性頭痛とも言います)の中で放っておくと命が危なくなるものと考えればいいでしょう。

脳外科的適応のある疾患ではくも膜下出血、脳腫瘍、脳内出血などがあります。特にくも膜下出血は突然発症し、意識がなくなるくらいの激しい頭痛です。嘔気も強く、そのまま意識が戻らない場合もあります。直ぐに治療の出来る脳神経外科の病院に救急車で行かなければ助かりません。現在でも半数の方が命を落とす病気です。脳内出血は小さいと頭痛のしないこともあります。脳腫瘍も同じ事です。それは最初に説明しましたが、脳自体には痛みを感じる受容器がないからです。

内科的疾患では髄膜炎(とくに細菌性髄膜炎)や脳炎は意識障害や精神症などの後遺症が残る事がありますし、重症の時は命を落としますので、危険な頭痛と言ってもいいでしょう。

緑内障も激しい頭痛がしますし、手遅れになると失明しますので、危険な頭痛に入ります。




高血圧と頭痛の関係は?


頭痛がすると血圧が上がっているのではないかと心配される方が非常に多いです。でもその頭痛を問診すると、別の原因の事が多いのです。大半は緊張型頭痛です。緊張型頭痛の原因はストレスが一番です。ストレスのある時は血圧も上がるから、緊張型頭痛の起きるような状況では血圧も上がりやすいのです。

でも血圧が上がると頭痛がする事は分かっています。特に上が220以上下が120以上では頭痛がすると言われています。後頭部が痛みます。特に急に血圧が上がると頭が割れるように痛くなりますが、ジワーッと上がって来た時は慣れてしまって余り頭痛はしません。脳出血を起こすまで自分の血圧が高いと知らなかった人が昔は結構おられました。

頭痛と血圧が関係しているかどうかを見極める方法は、血圧を下げてみる事です。血圧が下がっても頭痛のする方は頭痛の原因が他にあるという事です。




運動と頭痛の関係は?



テニスや水泳なおどの激しい運動をした後に片頭痛が起こることがあります。これは運動の興奮により分泌されたアドレナリンが血管を拡張させる為に起こるものです。運動の前に血管収縮作用のあるエルゴタミンという薬をのむと防ぐことが出来ます。ただ、初めての場合はくも膜下出血などの事もありますので要注意。





お酒と頭痛の関係は?

 血管性の頭痛(片頭痛や群発頭痛)にはお酒は悪いです。
特に群発頭痛では発作が必発です。群発時期には避けましょう。片頭痛はお酒で誘発される傾向があります。

赤ワインが頭痛を起こしやすいことが知られています。お酒が片頭痛の誘因になると言っても飲む量や状況で多いに異なりますので、絶対に駄目という訳ではありません。上手くつきあってください。また蒸留酒は頭痛を起こしにくい傾向があります。

緊張型頭痛にはお酒は百薬の長です。でも飲み過ぎると駄目です。二日酔いになるほどにはお酒は飲まないでください。





頭が痛い時には冷やしたがいいのか、温めたがいいのか?

片頭痛は温めると血管が開くので悪化します。冷やすとその逆で改善します。緊張型頭痛は温めると筋の血管が拡張し血流が良くなるので改善します。冷やすと悪くなります。ですから、頭痛はすべて冷やせば良くなるものではありません。
逆にお風呂に入って暖まった時に頭痛が軽くなるかどうかを聞き、軽くなるなら緊張型頭痛、悪くなるなら片頭痛と考えることもできます。
治療としては片頭痛の時は頭の前の方を冷やします。緊張型頭痛の時は頭の後ろを温めます。よく首筋を冷やすと頭痛が楽になるという方がいますが、これは神経が麻痺するための見せかけの改善で、緊張型頭痛の時はなかなか治りません。