■頭痛のする時に脳腫瘍を心配する人が多いが、脳腫瘍は頭痛が強いのか?

 脳自体には痛覚を感じる感覚器がないので、脳実質から出来た腫瘍は痛みは少ない。しかし大きくなって周囲を圧迫したり、頭蓋内圧が上がった時は頭痛がするので、頭痛で見つかったときは脳腫瘍はかなり大きくなっている。

 脳腫瘍と言っても脳実質でなく周辺の組織に出来た時は頭痛が早く出る事もあるし、水頭症を伴うような時は頭痛は早く起こる。

 以上から、「脳腫瘍は頭痛が強い」と言う事は、半分本当で半分嘘と言う事である。

【基礎知識】
体の中には痛覚のない部位がある。例えば、爪や髪の毛。
頭で痛みを感じる部位は
頭蓋外では、表皮、筋及び筋膜、頭蓋底部の骨膜、末梢神経、動脈
頭蓋内では、脳血管、硬膜の一部(特に脳底部)、第5・9・10脳神経、第2・3頸神経
即ち、脳実質は痛みを感じないのである。



■血管が詰まるように痛いと言われるが脳の血管が詰まる時に痛いか。


 こう言う方は非常に多い。でも脳梗塞を起こした方に聞いてみると頭痛は少ない。まれに首の動脈が剥離して詰まる時は首が痛い事がある。梗塞が大きいときは頭蓋内圧が上がり頭痛がするが、この時は意識も悪くなることが多い。多発性脳梗塞では頭がスッキリしないことがあると書いてあるが、まず軽症の脳梗塞では頭痛はないと言っても良い。頭痛のするときに一番に脳梗塞を考える必要はない。



■片頭痛と言う言葉の一人歩き、片頭痛って何?


 片方が痛い頭痛を片頭痛と思っている人が多い。自ら片頭痛ですと言っても結構違っている。片頭痛でも両側に起こる事が多い。緊張型頭痛も結構片側に起きるし、これを片頭痛という人が多い。片頭痛は頭蓋内外の動脈から起こる痛み。起こりやすい体質で起こりやすい状態の時に起こる。典型例では閃輝暗点があり15分から30分してズッキンズッキンとした痛み。こめかみや前頭部に多い。嘔気があり吐きやすい。女性に多く、比較的若い人に多い。光がまぶしいので、部屋を暗くして静かに寝ておく方が良い。最近はよく効く薬がある。時に問診票に「変頭痛」と書いている人がいる。片頭痛は変な頭痛という意味では決してない。



■緊張していなくても起こる緊張型頭痛(緊張型頭痛の解説)


 慢性頭痛の中で圧倒的に多いのが緊張型頭痛である。原因は首や頭を取り巻く筋肉の緊張から起こる頭痛で、精神的な緊張がなくても起こる。最大の原因は精神的なストレスであるが、姿勢や体型の問題で首自体に対する身体的なストレスで起こることもある。頭がボーっとして重い感じ。ふらつくことも多い。目の疲れが出やすい。眠りが悪くなる。天気が下り坂の時に悪くなる傾向にある。
 ストレスを単なる「イライラ」と思っている人が多い。緊張型頭痛の説明のあと自分にはストレスはないと言う人がいるが、ちょっとした事でも気になることはストレスであり、些細なことでも起こる。年輩の方は病気の事が気になっている事が多い。ストレスがないと言う人でも、話をよく聞くとストレスがある。



■頭が重い時に本当に頭は重くなるか?


 緊張型頭痛の時には頭の周囲の筋肉が緊張して来るので重たく感じるだけで、頭が重くなることはない(測った人はいないので、正確なデーターはないが)。ただ、頭を取り巻く筋肉が収縮するので、重たい感じがするだけである。



■脳の病気による頭痛の特徴は?


 頭痛が長く続くと、脳の病気ではないかと心配になる。急に起こる病気にくも膜下出血や脳出血があるし、じわじわ痛む病気に脳腫瘍などがある。これらでは、頭痛に吐き気を伴ったり、視力の異常や手足の麻痺や言語障害や平衡機能障害など、神経・精神に異常を伴う事が多い。脳腫瘍の様に頭蓋内圧が上がってからの頭痛は寝ていると頭痛がみられ、起きてしばらくすると楽になる事がある。とにかく脳の病気はCTスキャン(コンピューター脳断層写真)やMRI(磁気を使った脳断層写真)で、これらの病気は発見できるようになったので、おかしいときは病院へ。ただし、ウイルス性髄膜炎など脳の形に変化を来さない病気は神経症状はすくない。



■慢性頭痛が将来ほかの脳の病気を起こすか?


 慢性頭痛なら脳の病気を起こすことはない。ただ慢性頭痛の人でも他の脳の病気を起こす事はあるので、頭痛の仕方がいつもと違う時は要注意。直ぐに病院へ。



■高血圧と頭痛は関係あるか?


 高血圧の状態に馴れてしまうと頭痛はあまりしなくなる。急に血圧が上がると頭痛はする。高血圧の頭痛は後頭部が痛むという場合が多いようである。降圧剤によっては、血管拡張作用のために、頭痛の副作用が起こることがある。このような頭痛は狭心症の薬でも起こる。



■お酒と頭痛の関係


 血管性の頭痛(片頭痛や群発頭痛)にはお酒は悪い。とくに群発頭痛は頭痛発作が必発。群発期には避けた方が良い。片頭痛はお酒で誘発される傾向がある。しかし蒸留酒は頭痛は起こしにくい傾向がある。ワインでも「赤」が頭痛を起こしやすいことが知られている。 お酒が片頭痛の誘因になるといっても、飲む量や状況で大いに異なるので、絶対に「だめ」というわけではなく、うまくつきあう事が大事。 緊張型頭痛はお酒を飲むと軽くなることが多い。精神的にも肉体的にもリラックス出来るから。でも飲み過ぎは二日酔いとなり頭痛がする。



■頭が痛い時に冷やすか温めるか?


 片頭痛は暖めると悪化し(血管が開くから)、冷やすと改善する。緊張型頭痛は暖めると改善(筋の血流がよくなるから)し、冷やすと悪化する。片頭痛の場合はこめかみ(頭の前)を冷やし、緊張型頭痛の場合は頭の後ろを暖める方がいい。よく首筋を冷やすと頭痛が楽という方がいるが、これは神経が麻痺するための見せ掛けの改善であり、治りを遅くする。



■一番恐ろしい頭痛は?


 なんといってもくも膜下出血。 頭全体あるいは後頭部に金槌で突然なぐられたような強烈な頭痛が特徴。意識を失ったり、痙攣を伴うこともある。原因は、脳動脈瘤の破裂がほとんどである。脳神経外科ではまずCTで診断し、脳血管撮影により出血原因を確認する。 動脈瘤の場合は、クリップで止める手術(クリッピングと言う)を行う。これをしないと、いつ再破裂するか分からず大変危険。