第2回お話会 「痴呆」



 6月19日に第2回目のお話会を予定通りに行いました。台風6号の進行具合では皆さんの足に影響するのではと心配していましたが、台風の進行が遅く、天気は晴れでした。そのせいか、37名の参加がありました(今のスペースでは40名くらいが限界と思います)。

 まず、前回の「高血圧」のおさらいをしました。「なぜ高血圧が悪いのか?」「高血圧ってどれくらいから?」「血圧は測る度に違うが、どれが本当か?」「動脈硬化の危険因子ってなに?」の4つに関してスライドを使って解説しました。今回は話の合間合間にクイズを出すことにしました。答えを聞くとな〜んだと言いたくなる様な問題ばかりです。出だしの問題は「アフリカのある部族が、雨乞いの踊りを踊ると、かならず雨が降るそうです。なぜでしょう。」でした。答えは簡単、「雨が降るまで踊るから」でした。「ヨシザワ氏は歯痛で苦しんでいるのに、毎日、皮膚科の病院にかよっています。どうしてでしょうか?」と言う問題で楽しんだ後、今日のメインテーマの「痴呆」の話を始めました(この答えを知りたい方は診察日に院長にお聞き下さい)。

 痴呆とは、「後天的な脳の障害によって、正常に発達した知能が持続的に低下し不可逆的になった状態」と定義されています。「不可逆的」と言うのは元に戻らない状態ですから、治らないと言い換える事が出来ます。すなわち私が学生の時に習った痴呆と言うのは治らなくなった重症の話なのです(治るのは痴呆ではないと習いました)。痴呆は老年痴呆(アルツハイマー型痴呆とも言う)、脳血管性痴呆、アルツハイマー病、その他に分けられます。又痴呆のように見えるが痴呆ではない病気に、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、薬の効きすぎなどがあります。

 さて、すべての病気に言える事ですが、早期発見、治療と予防が痴呆においても大事です。軽い痴呆をいかに見付けるか、予防するか、治すか、これを実践して来られた先生のお話を以前に熊本痴呆研究会でお聞きした事がありました。その方は元浜松医療センター副院長金子満雄先生でした。先生は脳神経外科医で、脳神経外科関係の学会で時々発言されていたので、名前と顔は知っていましたが、その先生が痴呆の研究と治療を熱心にされているとは知らずに、講演を聞いた時にはビックリすると同時に感銘を受け、すぐに先生の書かれた本を読みました。今回の話はその本に書いてある事を参考にしました。その本は「ボケない生き方革命」と「浜松方式でボケは防げる治せる」です。関心のある方は是非お読み下さい。

 先生は脳の中で大脳の総合司令部と言われる前頭前野が障害されると痴呆が起こると言われます。前頭前野は、創造性、発想力、機転、感動、ユーモア、注意分散能力、集中力、決断力、具象化能力などに関与していますから、これらをチェックすれば痴呆が早く発見されるという訳です。例えば、ユーモアが通じなくなったら危ないと言う事です。それで今回いろいろクイズを出しながら皆さんの反応を見た訳です。例えば「馬が一頭まっすぐに立っています。頭が東を向いている時、尻尾はどっちを向いていますか?」と聞くと、たいていの方は西と言われます。しかし馬の尻尾は下を向いていますから、下が正解というと、どっと笑える方は痴呆の心配がないという訳です。でも尻尾は上を向くこともあるし横を向くこともあります。答えは何でも良いですが、その時にユーモアが通じるかどうかが問題なのです。

 先生が考案された痴呆のテストを皆さんにして貰いました。初めは「かな拾いテスト」です。これはひらがなで書いた文章を一定の時間で読んで、その意味をくみ取りながら、「あいうえお」を見つけ出し、○をつけるものです。今述べた3つのことが出来ないといけません。例えば文を読むのに夢中になって「あいうえを」を見落としても、「あいうえお」ばかり気にして文の意味がわからなくても、不合格です。次は動物名想起テストです。4本足の動物を知っているだけ述べるだけです。花の名前でも木の名前でも構いません。命題を覚えているかどうかが問われます。60歳までが1分間に15個以上、70歳、80歳では12個以上が普通です。最後は立方体模写テストです。これは紙に書いた立方体を立体的に把握しないと描けないのです。

 わいわい、がやがやと問題をした後、自己採点して貰いました。今回は痴呆を早く気付くテストはこういうものだと経験して貰う事が目的でした。だから内容の小さいことまで言いませんでした。痴呆の気になる方は診察時に言って下さい。検査をしますが、少し時間がかかりますので、予約制にしたいと考えています。以上でお話会の内容は終わりです。

 今回のお話会を計画してみて大事な事を忘れていました。それは日程の事です。この日は地元での田植えの時期だったのです。それでお出でになれなかった方もおられました。次回からはこう言うことにも気をつけて日程を決めたいと思っていますが、今のところでは8月の終わり頃を予定しています。これからは、2月、5月、8月、11月で行きたいと思います。

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