第4回お話会 「怖い頭痛と怖くない頭痛」



 11月20日土曜日午後一時半から病院内で第四回目のお話会を開きました。お昼前に診察に来られて時間を調整された方で、開始時間を間違われた方がおられました。次回からご注意下さい。今回は非常に参加者が多くて、46名でした。今の部屋(治療室)では狭すぎるので、次回からは待合室で行おうかと思っています。
 まず、最初に「もしも、『混合診療』が解禁になったら・・・」と言うビデオを放映しました。「えんゆう」11月号に混合診療の事を書いていましたから、少し分かりやすかったと思いますが、混合診療が解禁されたら医療は今後どうなるか、実例をあげて解説してありましたから、とても分かりやすかったのではないかと思います。今月号にもこの問題は取り上げていますから、是非お読み下さい。
 14分のビデオを見た後で、すぐに本日の主題「怖い頭痛と怖くない頭痛」の話を始めました。本来は混合診療解禁反対の署名をお願いする予定でしたが、その時は忘れておりました。
 頭痛と言ってもいろんな原因があります。それぞれでまた治療も異なります。頭痛の分類を一つ一つ説明しても良いのですが、これではつまらないだろうと思い、今回は実例を出してその頭痛が何かをみんなで考えようと企画しました。そしてそれが命に関わる「怖い頭痛」なのか、そうでない「怖くない頭痛」なのかを判断して貰う事にしました。「怖い頭痛」「怖くない頭痛」と言うのは医学的な分類ではありません。今回私が勝手につけた呼び方です。
 さて、「怖い頭痛」と言うのは命に関わることのある頭痛です。頭の中の何らかの病気に伴う頭痛で、二次性頭痛とも言います。例えば、くも膜下出血・脳出血・脳腫瘍・脳炎などに伴う頭痛です。放っておいては良くなりません。病院で治療を受けなければなりません。一方、「怖くない頭痛」は「命を落とす事のない頭痛」です。基礎疾患がない場合は慢性頭痛とか、一次性頭痛とか、機能性頭痛と呼びます。俗に言う頭痛持ちです。片頭痛とか緊張型頭痛が多く、結構知られている頭痛です。風邪とか二日酔いの様に頭痛の原因がある場合もあります。

(1)突然激しい頭痛に襲われた。ハンマーで殴られた様な感じで、しばらく意識がなかった。気が付くと頭が割れるような感じで吐き気が強い。初めての経験である。

 突然の発症ですから、慢性頭痛ではありません。意識がなくなるのは脳の病気に間違いありません。突然起こる病気でハンマーで殴られた様に激しい頭痛です。脳の病気は吐き気が起こりやすいのが特徴です。これは頭蓋内圧亢進の症状です。
 これは怖い頭痛ですね。くも膜下出血を疑います。怖い頭痛の一番目にあげられます。その特徴は@突然起こり、A激しい頭痛で、「ハンマーで殴られる様な」とか、「雷が落ちた様な」とか表現され、B意識障害を伴う事が多く、C吐き気が強く、D手足の麻痺などないことが多い、と言う事です。治療は@とにかく一刻も早く治療の出来る病院に救急車で行き、A出血の原因の脳動脈瘤を再破裂の前に手術する、と言う事です。出血の程度が軽ければ、また治療がうまく行けば完全復帰出来る病気でもあります。

(2)風邪が治っても頭痛がいつまでも治らない。かえって頭が割れるように痛くなった。もともと頭痛持ちではない。

 髄膜炎(特にウイルス性髄膜炎)を疑います。怖い頭痛ですが、その程度はちょっとです。風邪などのウイルスが頭の中に入って来て髄膜を刺激するから頭痛がします。普通の免疫力があれば2〜3週間で治ります。免疫力の低下した場合は悪化します。脳炎を起こせば重篤です。

(3)映画やテレビを見たり、根を詰めて仕事をした時などに、頭がボーっと痛い。普段から肩が凝っている。目の疲れを感じる。眠りも悪い。

 緊張型頭痛と言う頭痛で、怖くない頭痛の代表選手です。
 頸部から頭部全体を取り巻く筋肉の緊張から起こる頭痛です。軽度から中等度の頭痛で、日常生活への影響は余りありません。頭に帽子をかぶった感じで、頭がボーッとしてすっきりしない感じです。吐き気はありません。
 原因は@神経の疲れ‥‥考えすぎ、心配しすぎ、気にしすぎ(性格が関係する)A首の疲れ‥‥姿勢の問題、首の病気B目の疲れや目の使いすぎなどです。随伴症状として@目の疲れ(目が重たい、見えにくい、目が押さえられる感じ、シュパシュパする)A全身倦怠感、やる気が出ないB集中力の欠如、物忘れC平衡機能障害、フラフラするとかフラッとするD睡眠障害、寝付きが悪いとか眠りが浅い。
 治療は@気分転換をする、考えすぎない様にするA体操・マッサージなどの頸部のこりが取れる様な治療。温熱療法(風呂で温めてもいい)もいい。B薬物治療としては安定剤・鎮痛剤・筋弛緩剤など。 緊張型頭痛と言う頭痛で、怖くない頭痛の代表選手です。
 頸部から頭部全体を取り巻く筋肉の緊張から起こる頭痛です。軽度から中等度の頭痛で、日常生活への影響は余りありません。頭に帽子をかぶった感じで、頭がボーッとしてすっきりしない感じです。吐き気はありません。
 原因は@神経の疲れ‥‥考えすぎ、心配しすぎ、気にしすぎ(性格が関係する)A首の疲れ‥‥姿勢の問題、首の病気B目の疲れや目の使いすぎなどです。随伴症状として@目の疲れ(目が重たい、見えにくい、目が押さえられる感じ、シュパシュパする)A全身倦怠感、やる気が出ないB集中力の欠如、物忘れC平衡機能障害、フラフラするとかフラッとするD睡眠障害、寝付きが悪いとか眠りが浅い。
 治療は@気分転換をする、考えすぎない様にするA体操・マッサージなどの頸部のこりが取れる様な治療。温熱療法(風呂で温めてもいい)もいい。B薬物治療としては安定剤・鎮痛剤・筋弛緩剤など。

(4)以前から時々頭がズッキンズッキンして気分が悪くなり仕事を休むことがあった。痛み止めが効く時もあるが、効かない時もある。効かない時は吐いてしまう。まぶしいと痛いので、暗くして寝ている事が多い。

 片頭痛と考えます。片頭痛は痛みが強く吐き気も強いので、一見怖い頭痛の様に見えますが、片頭痛で死ぬ事はありません。怖くない頭痛です。片頭痛は頭の動脈が拡張して起こります。誰にでも起こる訳ではありません(起こりやすい体質のある方のみ)が、日本では840万人と多く、高血圧や糖尿病の患者を上回っています。
 その特徴は、前頭部やこめかみがズキズキ、ガンガン、ズッキンズッキン痛み、吐き気を伴う事が多く、光や音に敏感になり、後頭部から肩も痛くなる事があります。典型的な場合は閃輝暗点と言い、目の前がキラキラ光って見えなくなると言う前兆がありますが、有名の割には余り多くないです。誘因として、@疲労・ストレスAお酒・食べ物B生理C天気などがあります。治療としては、@誘因を避けるA強い頭痛発作時の痛みにはトリプタン製剤(よく効きます)B強くない頭痛には鎮痛剤、C片頭痛の予防薬もいろいろあります。

(5)1〜2ヶ月前から朝起きる前に頭痛がして気分がわるかったが、起きて仕事しているといつの間にか頭痛が取れていた。放っておいたらひどくなってきた。常に頭が痛い。先週からは右の手が使いにくくなった。

 朝起きる前に頭痛と吐き気があり、起きてしまうと良くなる、しかし次第に頭痛がひどくなると言うのは進行性の頭蓋内圧が亢進する脳の病気を疑います。つまり、脳腫瘍の可能性が高いと言うことです。しかも、「右の手が使いにくくなった」と言うのは、病気が左の脳にある事を意味します。前回にも話しましたが、脳の病気を疑わせる症状は、意識障害、手足の運動障害(麻痺)や感覚障害、言語障害などです。これらの症状がある時は脳の病気を疑います。
 脳腫瘍は頭蓋内に出来た「できもの(腫瘍)」です。悪性のものから取れば治る良性のものまでいろいろあります。脳実質に出来た場合は頭痛はすぐには起こりません。大きくなり頭蓋内圧が亢進した時に頭痛がします。

(6)急に横を向いた時に右の後頭部に電気が走る様な痛みが走った。しばらく動けなかった。痛くない時はどうもない。肩は凝る方である。

 大後頭神経痛です。この神経は首から出て後頭部を通って頭頂部、前頭部まで伸びています。この神経に刺激が加わると痛みが生じます。神経痛の痛みはズキーッとする短い強い痛みです。しばらく我慢すると治るのが特徴ですが、繰り返します。怖くない頭痛です。
原因としては@肩や首の凝り、緊張型頭痛に伴って起こることがあります。A帯状庖疹、神経痛を起こすウイルス性皮膚病です。皮膚に水疱瘡の様にぶつぶつが出ます。ただ2〜3日遅れるので、最初診断できない事もあります。B首の病気、変形性頸椎症、頸部椎間板ヘルニアなどがあげられます。

 アッという間に定刻の二時半を過ぎてしまい、スライドの最後まで行き着きませんでした。また用意していたFMで話した「脳の病気あれこれ」は次回に持ち越しました。
 次回は二月です。まだ内容は決めていませんが、少しゆっくり話の出来る会にしたいと思っています。是非ご参加下さい。

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