第5回お話会 「コレステロールはなぜ悪い?」



 2月19日(土曜日)午後1時半から第5回のお話会を開きました。テーマは「コレステロールはなぜ悪い?」でした。雨が降って皆さんの集まりが心配でしたが、47名と大勢の方にお出で頂きました。

 当日は外来終了間際に往診依頼があったり新患が来られたりして、外来が終了したのは12時50分近くでした。普段は12時頃になると外来はだいたい終了し、お話会の準備が出来ていたのですが、今回は準備が出来ませんでした。椅子のセッティングやスライドの準備をしようと思ったのですが、職員はいないし、もう参加者が来られており慌てました。それで先に昼食を済ませることにしました。自宅で急いで昼ごはんをすまし、すぐに診察室に戻りお話会の準備をしました。今回はまず、私がシティFMで話した時のテープを聞いて貰い、次にスライドを使って話し、途中でビデオを見て貰い、最後に私がまたスライドで話すという忙しい計画でした。ビデオをスクリーンに映すことは当院では初めてで、前日に出来るかどうかテストしてみました。勿論OKでした。またビデオはいろいろ見て、今回のお話会にふさわしいビデオに決めました。

 ほぼ定刻に始めました。まずシティFMで私が話した「頭痛」のテープを聞いて貰いました。今までに3回喋っており、このテープが一番新しいものと思っていました。自分の声を聞くのはなんとも恥ずかしいものです。話し方が下手で、喋る前に「えー」と言う前置きをする癖があります。聞いていて妙に耳障りでした。これからは喋り方に注意しなくてはと思いました。さてテープを流しながら、この内容は「えんゆう」何号で紹介したかと昔の「えんゆう」を見てみました。するとこのテープは3回目ではなく2回目であることがわかりました。2002年10月9日でした。3回目は脳卒中の話をしています。ちなみに1回目は「間違った頭の話」と言うタイトルで話をしています。

 15分間テープを聞いた後、いよいよスライドで今日のメインテーマ「コレステロールはなぜ悪い?」を話し始めました。コレステロールはなぜか体に悪いものと言う印象を与えます。でもコレステロール自体は体に必要な栄養素ですから、これなしでは人間は生きていけません。コレステロールが悪いのではなくて、コレステロールが多すぎることがいけないのです。コレステロールは体の中の脂質の一つです。大半は肝臓で合成され、体の隅々まで運ばれるのですが、血液に入って運ばれるためには水に溶けやすいたんぱく質などに包まれた状態になっています。これをリポ蛋白といいます。このリポ蛋白のうちで、肝臓で合成されたコレステロールを体の隅々に運ぶ働きをするものをLDLと言います。この中の入っているコレステロールがLDLコレステロールで、俗に言う悪玉コレステロールです。なぜ悪玉かと言うと血管に運ばれ動脈硬化を進めるコレステロールだからです。動脈硬化が進むと心筋梗塞などの病気が起こります。一方血管に余ったコレステロールを回収して肝臓に戻すリポ蛋白をHDLと言います。血管の中のコレステロールを持って行ってくれますから血管がきれいになります。動脈硬化を予防できます。ですからHDLに入っているコレステロールを善玉コレステロールと言います。総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の正常値を左下に示します。これらが異常の場合を高脂血症と言います。日本で多いのは高コレステロール血症と高中性脂肪血症と両者が共に高い混合型です。

 さて、少し話が難しくなりましたので、整理の意味も含めて「高脂血症の基礎知識・食事療法 丈夫で、しなやかな血管を」と言うビデオを見ました。13分の間に高脂血症の要点と治療を分かりやすくまとめてあります。ビデオで皆さんはコレステロールの事を恐らく理解されたでしょう。血液中のLDLコレステロールが血液中から血管壁に入り込み、酸化されてどん食細胞(マクロファージ)に食べられてしまい、これがどんどんふくれて泡沫細胞となり血管壁にたまり膨れていきます。これをプラークと言い粥状動脈硬化です。これが破けた時に血管内膜に傷がつき、そこに血小板がくっついて血栓が出来上がり血管の内腔が塞がってしまうのです。これが心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞です。ビデオはさらに食事の注意点を丁寧に話してくれました。

 ビデオを見た後で、またスライドで解説を続けました。動脈硬化の危険因子(起こしやすい体質や生活習慣)には、高血圧・高脂血症・糖尿病・高尿酸血漿・肥満・タバコ・ストレス・運動不足があります。動脈硬化が来す病気には脳卒中(脳出血・脳梗塞)、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、眼底出血、腎不全、下肢の壊死などがあります。こういう病気を起こさないためには危険因子を一つでも減らす事が大事です。

 さて、どういう人が高脂血症になるのでしょうか。一番の原因は悪い生活習慣によるものです。これには食べ過ぎや糖分や脂肪分の摂り過ぎ、お酒の飲み過ぎ、運動不足、タバコ、ストレスなどがあります。ほかに結構多いのが遺伝です。肝臓でコレステロールを作りやすい体質です。また他の病気の影響で高脂血症になることもありますし、女性では閉経後にコレステロールが上昇します。

 高脂血症の治療はまずは悪い生活習慣の改善が必要です。食事療法は必ずしなければなりません。そのポイントは@食べ過ぎないこと(適正なカロリーの摂取)、A動物性脂肪を控え植物性脂肪を中心に摂ること(サラダ油、オリーブ油、ごま油など)、Bコレステロールを多く含む物をさけること(卵黄、いくら、ししゃもなど)C食物繊維の多い食品(黄緑色野菜や海藻)を摂る、などです。そして最後に運動療法を心がけましょう。有酸素運動が望ましく、毎日少なくとも週に3回は30分程度の散歩を行いましょう。とにかく三日坊主では行けません。一番大事なのはこれらの治療を毎日続ける事です。それでも下がらない時は薬を飲みます。コレステロールを下げる薬はたくさん開発されています。薬を飲んでも食事療法・運動療法は必要です。そしてストレスのない明るい生活を送る様に心がけましょう。


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