平成10年度 国文学研究資料館史料館
史料管理学研修会研修レポート

歴史史料の電子化について
敦賀短期大学多仁研究室の事例

飯野八幡宮 飯野文庫
敦賀短期大学 研究生
飯野 敦子

1 はじめに

電子化の現状

 史料の電子化とは,原史料だけでなく今まで行われた史料調査や,それらよりもたらされた情報をコンピュータを用いて変換し,容易に管理・活用することを目的とする新たな知的活動のはじまりである.コンピュータは,利用することによって情報が個人情報の域から解放され,公に共有される.共有されて公認されることによってもたらされた情報は,個人の知識を深め,個人の意見を産むことに繋がる.情報の繋がりは新たな情報を生み出すことが可能になるのである.また,生まれた情報は過去情報と融合させ,標準的な環境で管理をすることによって新たに利用することが出来る.

 近年,文書館・史料館のコンピュータ導入が盛んに行われている.しかし,歴史史料の電子化は大量の過去情報が活性化されるので大変有効であるが,その性質ゆえ特質を生かし変化に柔軟に対応することが難しい.本稿では,敦賀短期大学多仁研究室で取られている,史料の画像データベース化などを事例に挙げて,電子化の現状と展望を披瀝してみようとおもう.

2 多仁研究室の史料管理計画

多仁研究室は,今年度で電子化導入3年目を迎える.3年前までの史料整理には大きく2つの問題があった.環境を挙げてみると以下のような問題点が指摘出来る.

 室内撮影はM2型マイクロカメラ,臨地ではポータブル型マイクロカメラや一眼レフなどで撮影.現像されたマイクロフィルムはCanonNP9330レーザーコピーで紙焼きをして利用してきた.しかし,多仁教授の研究史料と過去10年間にわたるゼミ史料は膨大で,紙焼き史料やマイクロフィルムを研究室で管理・活用するには限界になった.

 また,同研究室では学生が史料の撮影から管理まで全てを行うのだが,マイクロフィルム撮影はかなりの習熟度が求められる.遠隔地での史料撮影は二度と撮影できないことが殆どであり,また,過去に1回の撮影でフィルムを何本も無駄にすることもあった.

 それらを解決して,なおかつ過去史料情報を融合して管理・利用することが出来る方法として,昨年度より同研究室ではマイクロフィルムからデジタル機器(主にデジタルカメラとデジタルビデオカメラ)に調査方法を切り替え,電子化の導入を試みた.

3 原史料の調査・管理・加工

多仁研究室の調査データカード

 別紙の図は,今年度から多仁研究室で試験的に使用している画像管理ソフト『アイサーブ』処理用の調査データカードである.調査カードの項目は,目録化とキーワード検索に使用可能な語句を前提に限定させた.

データカード項目補足

◎「NO.」…「調査データカード」「CD-ROM番号」「原史料番号」の3つを各々一致させ,管理番号として用いる.

◎「概要」…表題の補足として入力

◎「種類」…紙,モノ,画像などを媒体に因って選択し項目を埋める.ジャンルは例えば石仏や建造物といったように記述する.素材は例えば石仏なら石の素材名を記述する.画像の記憶媒体は例えばCD-ROMやマイクロフィルムといったように,保存してある媒体を記述する.

◎「メモ」…史料調査時に疑問に思った点や,取りきれなかった情報の原因などを記述して,データ入力の補助に用いることが出来るようにする.

文字データ

 史料の文字データは,差し出しなど調査で取られる情報(調査データ)と,所蔵場所などの史料のメタデータ(原史料データ)に分けて,画像データベースの文字入力部分に記述する.

原史料データ

 集められた原史料データは、先ずファイル名で市区町村レベルと地区・団体・作成者・所蔵場所レベルを記述して史料のおおまかな情報を明らかにする.

 次に,郵便番号などを使用した地区・団体・作成者・所蔵場所・年代別目録など,史料の性質・背景によって項目を細分化して管理し,検索に用いることが出来るようにする.このようなメタデータからの検索項目でもかなり限定された画像を呼び出すことができ,調査データとして役立たせることが可能となる.地域ごとでの検索は,学生が容易にテキストとして活用できることは勿論,地域学習の発展に繋がると共に歴史に明るくない非専門家でも過去の歴史を容易に知ることができる.

調査データ

 調査データを画像も用いてデータベース化する場合,紙・物・画像など調査対象によって必要になる検索項目とのバランスが問題となる.また,過去の調査データをいかに活かしていくかといった点も重要である.いままでの調査法でおこなわれた調査データは,カード化して目録作成をされているわけだが,これらは電子化以降の調査データと同じ条件で,継続して活用出来るようにする必要がある.文字情報入力には,過去・現在・将来に向けて多すぎず少なすぎない,変更可能な柔軟な標準が要求される.

テキストデータのキーワード化

 コンピュータでのキーワード検索は,標準化を試みていかなければいけないのであろう.しかし,多仁研究室内のような調査データが大量にあり日々増えていくところのテキストデータは,どうしても性質によって細分化せざるを得なく,標準キーワードで管理するのは困難である.また,デジタルカメラの特徴である,被写体を選ばない柔軟さもテキストデータのキーワード化が確立出来ない原因としてあげられる.

 では、テキストデータだけに限定したデータベースの構築を試みるとしよう.歴史学者が計算機科学・工学を理解し,応用して現在の文書に対するテキスト処理をすることが可能になれば,歴史学に多くの恩恵を得られる.例えば,データベースと単語検索,文書整形出力,文字認識・画像処理などを歴史史料管理に導入できれば,歴史研究者の手間を大きく削減できる.テキスト処理された古文書は,文書に現れる具象をデータベースから抜き出し,その個数・時代・テキスト間の関連を統計学や計算言語学などにおいて現代文書と同様に研究を行うことを可能にする.しかし,文字コードから外れる文字や異体字が現れる古文書テキストの扱いは現状では困難である.

文字コード問題

 フルテキストデータ内に用いた文字コードから外れる文字や異体字は,Macintosh・Windowsなどの主要OSでは正確に表示・印刷することが出来ない.何故コンピュータで表す文字にこの様な問題が生じるのか,原因はコンピュータが文字を表示させるシステムにある.日本の文字はコンピュータ内に「雨」なら「312B(JISコード)」や「1711(区点JISコード)」のように文字番号で登録されていて,表示・印刷する際は羅列する文字番号で検索して該当する番号の字形データに変換している.一つの文章でも同音・同訓・異字など複数表示させて選択できたり,フルテキストデータベース・ハイパーメディア文書など検索機能付き電子文書を作成するのに文字番号方式は有利である.しかし,コンピュータ内に登録されていない文字は表示・印刷することは出来ない.WWWに至っては,標準から外れた文字は,たとえ外字登録されていても文字化けを起こしてしまって判読不可能となる.

 機種依存文字によって文字が正常に表示されないことは,知的活動の基盤となる言葉を用いた表現交流において,各言語間で使用条件に格差が設けられる,また,分野毎に言語の使用条件に格差が生じるとも云えることで,WWWなどで漢字をデータを管理・活用することに非常に大きなデメリットを生じる.残念ながらコンピュータの世界ではこの格差があり,しかも制度化されてしまっている.それは文字コードの規格が原因なのである.JISが,例えば森鴎外の「鴎」などの旧漢字も規格に取り入れるというニュースを耳にしたことがあるが,2000年に向かって新拡張JIS漢字策定で検討中とのことで,結論は未だ明らかになっていない.

 文字コードには,現代日本語を表記するために作られた文字コードJIS(日本工業規格)以外に,ISO(国際標準化機構)が存在する.ISOにはコンピュータの文字処理に関して幾つかの規格が存在する.しかし,登録された処理可能な文字はJISコードの第一水準・第二水準・補助漢字までなので,ISOのユニコードを用いても問題は解決されていない.

10万字表示可能な国産OS「TRON」

 これら文字コード問題を解決するために,現在様々なシステム構築がなされているが,そのなかで最も有力だと思われるものに10万字以上の漢字を扱えるOS,TRONシステムがあげられる.トロン( TRON : The Real-time Operating system Nucleus )は,理想的なコンピュータアーキテクチャの構築を目的として,1984 年に東京大学の坂村健博士によっ て開始されたプロジェクトである.産業界と大学の協力のもとで,まったく新しいコンピュータの体系の実現を目指している.

ハイパーメディアテキスト

 古文書のテキストデータ化が可能ならば,テキストをハイパーメディア化することも可能である.ハイパーメディア化できる方法は様々だが,私はXML+BTRONをお勧めする.と,云っても未だ実験する機会がないので果たして正常に動作するかわからないのだが,将来的に見てこの組み合わせが最も可能性があり得るだろう.

XML

 XML(eXtensible Makeup Language)とは,HTML(HyperText Makeup Language)SGML(Standard Generalized Makeup Language)にかわる次世代の文書形式である.
SGMLは,HTMLでは出来なかった,文書データの異なるコンピュータでの交換を可能とする方法と,文書を構造化して多角的に利用の可能性を目的とした文書表現形式である.例えばHTMLではマークアップがあらかじめ規定として定められていて,データベースのスキーマのようにユーザーが自分のアプリケーションに合わせて設計できる仕組みに欠けている.この問題をSGMLとXMLは解決できる.また,SGMLはSGMLツールの進歩と普及により,SGML文書をハンドマークアップで作成することが無くなり,そのためのSGML機能が不要になった.

 XMLは,先述した構造化されたデータベース設計の他に,多様なハイパーテキスト仕様が用意されている.そのなかでも,HTMLには存在しない概念として機能を持つリンクがある.例えば,「”報告者○○”の”課題”へリンク」などのような,記述構造や記述内容に基づく検索的なリンクもXMLには可能である.

BTRON

 BTRON (Business TRON ) の設計において先ず重要視されたテーマは「 HMI(コンピュータの操作方法 )の研究と標準化 」と「データの互換性を確保するためのフォーマットの標準化」であった.

 「HMI(Human Machine Interface )の研究と標準化」とは,コンピュータ上で種々の操作を行う場合にどういう HMI を用いるのが最も望ましいか,種々のアプリケーションにおける操作方法をできるだけ同じにするにはどうすればよいか,というのが研究のテーマであった.ユーザーにとって望ましい HMI とは, わかりやすくて自然に覚えられ,かつ別の局面や別のアプリケーションに移っても前に学習した成果ができるだけ生かせるようなものである.当然のことのように思えるが,従来のシステムでは操作方法に関する規約がないままに機能のみが実現されてきたため、こういったあたりまえのこともなかなか実現できなかった.このような背景から研究・設計されたのが BTRON の HMI 仕様である.

 次に「データの互換性を確保するためのフォーマットの標準化」についてだが,コンピュータ関連技術のうち,最もライフサイクルの短いのはハードウェアであり,最もサイクルの長いのは言語・データ形式・通信プロトコルなどである.これらのものは,一度仕様を決めるとその上に多くの情報資産(プログラム,データなど)が蓄積し影響が広範囲に及ぶため,いったん決めた過去の仕様を引きずりやすく,引きずらざるを得ないという性質を持つ.また,文字コードのようなものも広い意味ではこの範疇に含まれ,かつ影響が大きい.こういった観点から, BTRON はデータ形式の標準化を重要なテーマとして考えており,以下にあるような様々な規格を決めている.

・多国語に対応した文字コード体系
世界各国の言語に対応できる文字コードを作る
・標準フロッピーディスクのフォーマット
データ交換媒体であるフロッピーディスクの標準形式を規定している
・BTRON の実行ファイルのオブジェクトレコード形式

 BTRON 上で動くプログラムのオブジェクト形式の規定を行う.オブジェクト形式の標準化により,コンパイラ,アセンブラ,リンカ,ローダーなどの開発ツールを共有化することが可能となる.

TAD (TRON Application Databus )

BTRON で扱う文章,図形などの表現方法に関する規定である.文章については,書式指定や飾り文字などの修飾情報も含む.もちろん,文章と図形の混在も可能である.従来の MS-DOS やUNIX などの OS では,ファイル形式の規定と文字コードの規定のみが行われており,文章の書式指定や図形の表現方法に関する規定は設けられていなかった.そのため,修飾情報を含まない文章の中身(プレーンテキスト)については互換性があっても,文章の修飾情報や図形の表現形式については互換性がなく,アプリケーションに依存するものとなっていた.

 BTRON の場合は,こういった高位のデータ形式についても標準フォーマットを設けている.これが TAD ( TRON Application Databus )と呼ばれるものである.さらに,将来,コンピュータの扱うデータがマルチメディア化してくることを考慮し,この TAD には動画や音声などのマルチメディアデータも組み込めるようになっている. TAD の利用により文章,図表から動画、音声まで含めたデータ形式が標準化され, BTRON マシンの間でマルチメディア情報を自由にやり取りできるようになる.

TAD 通信機能

  TAD の応用として,リアルタイムの図形通信機能( TAD 通信機能)が実現されている.この機能は, BTRON の通信ソフトウェアにおい て,TAD データをリアルタイムに文字情報に変換し,NIFTY-Serve などの一般のパ ソコン通信サービスの上で送受信できるようにする機能である.

 従来のパソコン通信サービスは,ライブラリのような特殊な格納場所を使えば,図形を含めたバイナリデータを送ることも不可能ではないが,電子会議に発言するのとは全く異なった操作方法が必要であり,パソコン通信の普通の会話の中に図形を混ぜることはできなかった. BTRONの通信ソフトウェアの TAD 通信機能はこの欠点を補うものである. BTRON マシン同士で会話すれば,大手のパソコン通信サービスを経由して,全国規模で文字・図形の混ざったデータを自由にやりとりできる.

実身仮身モデル

  実身仮身モデルとは, BTRON における基本的な情報管理のモデルである.「実身」「仮身」は BTRONの造語であり,「実身」とは情報の本体を示すもの,「仮身」とは 実身を参照するタグ(名札)である.コンピュータの一般的な用語で言えば,実身がファイルに,仮身がディレクトリの 1 エントリ,あるいは文書を示すアイコンに相当する. BTRON の仮身は,ウインドウの中に横長の短冊の形で表示される.

 実身仮身モデルの特徴は、実身(文章や図形)の中に他の実身を指す仮身が混在できるという点である.このため,文章や図形の中に仮身を入れておき,さらに詳しい情報を見たい場合はその仮身を開く,といったハイパーテキストの機能が自然に実現できる.たとえば,史料情報を別々の実身(ファイル)に分割してそれらに対する仮身を入れておけば,史料群全体の目録・解題を見ながら,読みたい個々の史料だけを詳しく読むことができる.また,用語に注釈を付ける場合に,注釈の中身は別の実身に入れておき,本文にはそれを指す仮身のみを入れておくことにより,注釈を読みたい人だけが必要な場所で注釈を読むことができる.

 また,実身仮身モデルでは 1 つの実身に対して複数の仮身を設けることを許している.すなわち,仮身のコピーを複数用意して,必要な箇所(実身を参照すべき場所)すべてに仮身を置くことができる.

 上記の注釈付けの例で言うと,注釈を付けられる語が 本文中の仮身として複数出現しても,その仮身の指す実身,すなわち注釈の中身は 1 つで構わないということである.結果的に,実身と仮身の参照関係は,木構造ではなく,ネットワーク構造になる.ループ状の参照関係があっても構わない.

画像データ

画像入力

コンピュータに史料を画像として入力する際の,取り入れ方の主流は主に4つある.

1.スキャナからの出力
  原史料を機械に乗せて直接スキャンする
2.フィルムスキャナからの出力
  フィルムの大きさにあわせて専用の機械に読み込ませる
3.デジタルカメラからの出力
  紙・モノなど,被写体の媒体に関わらず見たそのままを撮影する
4.デジタルビデオカメラ(DV)からの出力
  デジタルカメラと同様,被写体の媒体に関わらず見たそのままを撮影できるが,DVは動画・音声も撮影することができる.

 多仁研究室では,デジタルカメラとDVで史料撮影をしている.過去のフィルム史料も,フィルムスキャナ等を用いて徐々に変換していく予定である.

画像の加工

 入力された画像データは,色や光量などを原史料に近くなるように修正し,出来るだけ圧縮・減色をしないようにして画像データベースで管理をする.研究室で使用している画像処理ソフトは『Adobe Photoshop 5.0J』で,以下にこのソフトを用いた画像修正方法について記述する.

画像のしくみ

 画像は小さなドットの集まりで出来ていて,その一個一個が色を持って絵に見えている.そのために情報量がテキストデータよりも多くなるわけである.情報が多いと,当然運ぶ情報が多いわけで処理が遅くなる.WEBで画像を用いる際に画像自体が重いと閲覧者にかかる負担も大きくなるので,画像修正の時点で出来る限り情報量を減すようにしたい.情報量を減らすには,大きく3つの技術があげられる.

1 画像のサイズを小さくする
2 色数を減らす
3 圧縮する

 この様な処置で,ファイルのサイズはダウンジングできる.1は単に,画像サイズ設定で値を小さくするだけである.2・3は,このように色数を減らし圧縮できるファイル形式のものにgif形式というものが有り,通常インターネットでは、この形式にして乗せている.

 本当はgifにする方法というのは他にも沢山有るのだが,私がお勧めするのはPhotoshop3.0.5から標準装備のGIF89を使う方法である.それはこの方法が,一番ファイルサイズが小さくなるからである.Photoshop3.0.5以下のバージョンのPhotoshopを使用の方にお勧めできる方法に,一度PhotoshopでSaveしたファイルをGif ConverterなどでSaveしなおす方法がある.PhotoshopでSaveすると,ファイルサイズが大きくなってしまうからである.

GIF89aを使う方法

 GIF89a出力そのままで色数を落として出力する事は出来るが,そうすると色が抜け落ちるという欠陥がある.色数はPhotoshop上で落としてから出力したほうが無難といえる.

1. Photoshopを起動し,環境設定で「単位」をピクセルにする.

2. 写真を読み込む.「イメージ」→「色調補正」の「トーンカーブ」で光度を足したり,判読しにくい文字を「イメージ」→「色調補正」の「自動レベル補正」で見易くするなど,ここで画像の必要性に合わせて加工を施す.色数が多かったり,緻密な史料写真などはディザをかけると良い.

3. 画像モードを「RGB」から「インデックスカラー」に変える.このとき色数が変えられるので,最初は128色に変えてみる.これで変にならなかったら,もう一度「RGB」に戻して,もう一回「インデックスカラー」にして試しに64色などを選んでみる.色が変になる手前までこの操作を繰り返し,最適だと思える色数を選択する(変になったらアンドゥ(編集から取り消し指定)で戻す).
 色数は出来るだけ少ない方が好ましいが,元の画像とあまりにかけ離れてしまっても困る.プレビュー画面を見ながら無難に減色する.

 色数を選択した後「インデックスカラーモード」にして「ファイル」→「出力用プラグ」で「GIF89a」を選択.「インタレース」はチェックする.「.gif」という拡張子がファイル名の後ろに付いてることを確認して保存する.
 ブラウザによっては読み込んでくれない場合があるので,ファイルの名前に日本語は用いない.ここで保存した画像が画像データベースで使われることになるので,分かり易い保存場所と分かり易いファイル名にすることをお勧めする.

Jpegへの変換

 どうしても色数が必要な写真等は,Jpeg形式にしたほうが画像が壞れ難く無難である.

1〜2まではGIFと同様の処理をする.

3. 保存する.または別名で保存するときのファイル形式をPhotoshopではなく,JPEGを選択する.この場合,拡張子は.jpgになる.クオリティーを選ぶ画面があるが,きれいに見せたいときは低圧縮、汚くても軽いほうを優先するなら高圧縮率のものを選択する.ファイル名はGIFでの記述と同様である.

アナログとデジタル

 原史料をサポートするものとして,アナログからデジタルまで様々な画像の記憶媒体が作られている.アナログとされるのは主に,紙・マイクロフィルム.デジタルとされる電子媒体は主に,CD-ROM・MO・ZIPなどの光ディスク(含光磁気ディスク、便宜上以下光ディスクと呼ぶ)である.近年,史料のデジタル化が進められているが,決して全ての原史料をデジタル化して保存するわけではない.

 マイクロフィルムと光ディスクは,両者各々の長短所が相互補完的性質を持っていることから,お互いの特性を生かしたハイブリッド・ファイルシステムの構築が可能である.データは,ユーザーが本当に必要とする情報かを見極めて管理していき,特性によって記憶媒体を使い分ければよいのである.例えば,永年保存情報は紙やマイクロフィルムの可視状態で,一過性の活用情報は光ディスクのデジタル状態で,活用頻度の高い保存情報は相互状態というようにである.情報は,ただ蓄積するだけでなく,能率的に活用されて初めて意味がなすものである.だから,保存媒体の変換とは全てを電子化するわけではなく,アナログ・デジタルを目的毎に相互補完的に使い分けることなのである.今後,アナログ・デジタル複合電子ファイルシステムとして,多角的に発展することが期待されるだろう.

マイクロフィルムと光ディスクの長短所比較図

4 敦賀短期大学の画像史料を活用した実例

 平成10年の春に『マルチメディア・イン・敦賀』と云う,福井県高度情報化推進協議会主催のイベントが敦賀短期大学に於いて催され,短大側でもマルチメディアを用いた様々な実験を行った.

電子メールを用いた古文書講座の実験例

 東京大学史料編纂所のホームページにある入来院家文書を,許可を頂いた後にダウンロードして学内のサーバに入れ,史料画像と設問を短大のホームページに設け,教授とメール交換で質疑応答をする古文書講座を学生を対象に行った.この実験は,webの可能性,生涯学習の可能性を模索することを目的として行われた.

テレビ会議システムを用いた講義の実験例

 市内に在住する4軒の家庭にNTTテレビ電話『フェニックス』を設置して,学内で行われている教育心理学の講義を受けて貰うと同時に質疑応答のディスカッションを行った.この実験は,受け身一方の講義ではなく,面と向かって参加することが出来る講義・質疑応答・聞き取りなどの可能性を目的として行われた.

史料の画像データベース化の試み

 画像データベースソフトを用いて史料を管理.検索をし,容易に・確実に史料に行き着くことが可能かどうか.将来的にはイントラネットを用いて学内のどこにいても検索が可能に,また,インターネットを用いて学外からの検索,更に学外の施設との相互通信も可能に出来るかといった点を実験.上記2つの可能性をサポートすることによって更に可能性が高まるか,ということを目的として行われた.

5 将来の展望

デジタルアーカイブズへの道

電子化時代に向けてアーカイブズで目指さなくてはいけないことは,

1,所在を明らかにして把握する
2,整理が容易な2次情報だけでなく,1次情報も積極的に整備する.
  1次情報・2次情報の共有
3,日々多様化するメディアに柔軟に対応
4,利用者・他施設・他分野とのネットワーク
5,最終的な決断は利用者

といったもので,コンピュータが研究活動にもたらすものは能率化よりむしろ研究の制度慣習評価基準と云った,より直接的なものである.デジタルアーカイブズとは「コンピュータをシステムに取り入れている史料館」のことであり、今までの史料館のシステムをより直接的にする、新たなシステムのことである。デジタルアーカイブズの主なシステム構築を試みてみると,以下のような流れが構想できる.

 1、イントラネット
 2、一般向け高速インターネット回線としてのCATV網利用
 3、アーキビストの正確なレファレンス

イントラネット

  サーバを館内に設置してイントラネットをすることによって,館内のどこからでも情報を利用・提供・共有することが出来る.
例えば…HTML・SGML・XML(ハイパーメディアテキストを作成する文書形式)などを使用して,検索ページを作成.館内のどこからでも史料の検索が可能になる.

画像を使用した学習.古文書などの画像をweb上に取り入れて使用することによって,原史料に接する以上の多くの情報を得ることが出来る.

検索+画像で段階的・構造的・能率的な検索.画像史料に行き着くまでに,解題や活字史料など段階を経ることで,より正確で,利用者の目的に合わせた情報量を提供することが出来る.

一般向け高速インターネット回線としてのCATV網利用

 CATVインターネットで,イントラネットで使用しているデータを館内だけでなく,外部からも利用出来るようにする.

 インターネットの接続方法としては高速デジタル回線(ISDN)など電話回線の使用が一般的であるが,最近はCATV局がテレビ放送用のケーブル網を利用して提供する高速インターネットサービスが注目されている.

例えば…高速伝送.CATVインターネット接続は大容量のケーブル回線を使用するため,従来の電話回線を利用したダイヤルアップ型に比べて数十倍の高速伝送が可能.大量なデータの相互伝送.動画像や音声,ソフトウェアなど大量のデータを短時間で取り込み,伝送することが出来る.画面上で会話をすることも可能である.

正確なレファレンス

  史料館に於いて利用者は,アーキビストから正確なレファレンスを受けることによって能率的に目的の史料に行き着くことが出来る.しかし,アーキビストが全ての史料を把握することは勿論,常に利用者と接することも,現在の史料館システムでは不可能に近い.コンピュータシステムを導入したデジタル・アーカイブズは,アーキビストが史料を総括的に把握することを容易にし,また,システムと利用者の間に位置してレファレンスに応じることによって初めて,利用者はニーズに合わせた正確な情報を得ることが出来る.

 史料は紙からマイクロフィルム,更に電子化されることにより急速に活性度を高めてきた.この膨大な情報量を采配することが現代・次世代のアーキビストに求められる最も大事な任務であろう.たとえコンピュータによって能率的・直接的になったといえ,最終的にその情報を操ることが出来るのは処理する人の能力次第である.アーキビストが,史料を求める利用者の欲求とコンピュータの間に立ち,情報をフィルタリングして適切に提供できるかどうかが今後の課題となるであろう.

参考史料・資料

 東京大学総合研究博物館 デジタルミュージアム展
 http://www.um.u-tokyo.ac.jp/DM_CD/DM_TECH/KAN_PRJ/HOME.HTM

 TRON Project Infomation
 http://tron.um.u-tokyo.ac.jp/TRON/

 東京大学史料編纂所 入来院家文書
 http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/iriki-j.html

 ほら貝 加藤弘一氏
 http://www.horagai.com/

 CrossBeamNetworks
 http://www.xbeam.co.jp/

 新JIS漢字策定の進捗状況
 http://jcs.aa.tufs.ac.jp/jcs/

 敦賀短期大学
 http://www.tsuruga.ac.jp/

 目録作成とパソコン利用について
 鎌田和栄著 地方史研究

 電子化と歴史研究(h4.3)
 伊藤宗裕著

 電脳文化と漢字のゆくえ 平凡社

 情報処理 1998.5 特集「デジタルミュージアム」

 情報処理 1998.6 特集「電子出版・電子新聞」

Home