福島県いわき市にある飯野家には国指定重要文化財の古文書「飯野家文書」がある。

 飯野家文書は鎌倉時代の有力吏僚である伊賀氏の系譜を引く飯野家伝来の文書群で、総数は1683通にものぼる。その内容は、約223通ある中世においては鎌倉幕府裁許状など好嶋荘の相論に関わる文書、南北朝期の足利尊氏感状・同直義感状など武家としての伊賀氏(=飯野氏)の活動に関わる文書、岩城郡八幡宮飯野八幡宮縁起注進状案・鳥居作料飯野八幡宮鳥居造立配分状など飯野八幡宮に関する文書に大別される。

 また、近世の文書は内藤氏から安藤氏まで歴代平藩主の寄進状がほぼ揃っているほか、飯野家および飯野八幡宮に関する由緒・祭礼・系図・領地・年貢など広範囲にわたる。

いわき地域学會がおこなった近世文書の編年順分類項目

1)由緒・縁起 2)神事・祭礼・吉田家関係 3)家譜・系図類
4)朱印・寄進状 5)領地 6)年貢
7)御用留 8)触・達・辞令 9)口上・願書等
10)八幡宮営繕 11)諸勘定・借用・請取 12)日記
13)書状 14)冠婚葬送 15)文芸・武芸
16)社寺明細・供僧 17)寺請 18)鉄砲
19)戸口・徴兵 20)絵図 21)雑

 飯野家文書は東北地方屈指の文書群であり、既に『史料纂集[古文書編]飯野八幡宮文書』など、史料調査報告書関連が幾つか刊行されている。しかし、原本の激しい傷みや時代的に公開をはばからなくてはいけない内容の史料などもあり、原本の閲覧の機会は容易には得られないのが現状である。

 気軽に閲覧し活用することを可能にするために、飯野家は飯野八幡宮に飯野文庫を設立し、史料の一般公開に踏み切る計画をたてた。近い将来、文書群限定のキーワード検索・施設内での原本の保存・画像での閲覧・書籍やCD-ROM、www等を通じた公開提供が可能となる予定である。これによって、専門家だけでなく一般の人にでも必要に応じて情報を引き出せるようになり、学習や遠隔地からの閲覧にも応じられるようになるだろう。飯野家文書の新たなる発展への繋がりとなることを祈念して、公開を試みることにする。

Home