いまどきの父親はダメおやじ?
昔の父親は立派だった!?
「昔の父親は子供の躾を始め家庭教育もしっかりしていた。毅然としていて立派だった」という説が、この国のさる有名人を始めとして中・高年とくに高齢者の間で唱えられ、支持されているようです。
私事ですが筆者(1934(S9).1.28生)の父を見てみましょう。父の私に対する(他の5人の兄弟姉妹も同じ)家庭教育の内容は、総じて①儒教、②武士道、③二宮金次郎、④天皇篤拝、⑤軍国主義の5本柱に要約されます。それは徹底したものでした。ちなみに小学校での6年間受けた教育は、二人の超国粋・軍国教師の専横で1945(S20).8.15(筆者小学6年)の敗戦がひとまず落ち着く?までもっとひどいものでした。
その具体例は別の機会に譲りますが、当時がそんな時代だなんて知らずに生れてきたのですから敵いません。11.5歳までにいいようにすっかり丸ごと善導(マインドコントロール)されてしまいました。
その年の二学期の終わり頃、マッカーサーの命令とかで教科書の軍国主義の個所を墨で塗り潰したりの日々が続きほどなく気が付いたのですがとどのつまり、徳川幕府が終わってからというものは天皇組(ぐみ)の縄張り護持とその果て無き縄張り拡張(天皇=現人神(あらひとがみ)、天皇中心の神国日本、国威発揚=他民族・他国への縄張り拡張・人殺し・切り取り強盗=聖戦、八紘(はっこう)一宇(いちう)=世界中侵略)の日々だったのです。
私の両親(とくに父)はもとより祖父母、曾祖父母も天皇組にまるっきり善導(マインドコントロール)されていたのです。「勝った勝ったの提灯行列」に日清戦争(1894~1895)以来何回も参加したそうです。おまけに祖父は放蕩のすえ準禁治産者となりました。なんて不孝・不忠モノだったんでしょう。そんな祖先の農業後継者で「天皇陛下様(天皇組)の忠臣(子分)、赤子(せきし)だと自称し、大規模な国際的大量人殺し・切り取り強盗(縄張り拡張)も容認しそれに熱中していた、次男だからお前は少年航空兵に志願するのが良いと私に言い続けていた」父の家庭教育ってなんだったんでしょう? それでもやはり昔の父は立派だった!?
天皇組は負けてマッカーサーに武力で脅かされると、父はそれに取り立ててあがらうこともせず、内心はともかく表向きは「昨日までは天皇、今日からはマッカーサー」に変わりました。8月15日の夕食時、父は居並ぶ家族に対しては、「戦争に負けたのだから今まで以上に何かと苦しく、厳しくなる。これからはそのつもりで家中(うちちゅう)心を合わせるように」と訓示しました。しかし、敗戦の感想や反省?については一言も有りませんでした。ましてや「神風が吹かなかったから負けたんだ」なんて言いませんでした。
よその家ではどうだったんでしょう!?
締め上げて 根こそぎ民を追い立てて 招き寄せたり原爆投下
この民は 赤紙・空襲・原爆に 耐えて善男善女におわす
(短歌雑誌・みぎわ1999.11月号p51被採録・筆者投稿)
ちなみに小学校の先生方からも、負けた聖戦の感想や反省?については一言も有りませんでした。言えなかったのか、言えたとしても相手は生徒だから、まだ子供だからということでシカトしたのかも知れません。
今どきの父親に対していろいろの言い分があるにしても、「君に忠、大規模な国際的大量人殺し・切り取り強盗とその容認に熱中・狂奔はしない」という一点で、今どきの父親の方が昔の父親たちよりずっと「まし」だと言えます。この一点で、いろいろ言われている今どきの父親も自信を持って良いのです。
しかしそうは言っても、今どきの父親・母親は、その両親や祖父母、学校の諸先生、世の諸先輩・お偉いさん、同僚などから「時代劇の時代の常識・良識、センス」で知らぬ間にけっこう善導(マインドコントロール)されていますから自分自身に油断はできません。
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