↑モルドバ・キシニョフのチーズマーケット。セントラルマーケットの中にある建物の中には、とにかくチーズしか扱わないマーケットがある。チーズ、チーズ、チーズな市場
●旧ソ連の一小国、モルドバ共和国へ行ってきました。「モルドバに行きました」というと、「どこ?それ?」「何しに行ったの?」という反応が帰ってきます。知っている人は知っているけれども、知らない人にはまったく知らない小国。知らない人は、地図をご覧になって欲しい。西側はルーマニアと国境を接し、北東部をぐるっとウクライナに囲まれている小さな国がある。国土は
3万3843平方キロメートルしかなく、海も無く、農地がほとんどで、産業的にも農業と軽工業が中心の小国だ。民族的にはルーマニア人と同じで、言葉もルーマニア語が通用する。街の看板や、新聞にはルーマニア語と、ソ連時代からの名残でロシア語も併記されている。
●さて、そんなモルドバへ入国した。事前の情報では、日本人の入国にはビザが必要なのだが、ビザは国境で取得が可能とのこと。しかも現地からの招待状も不要とのことだ。ただ、そのビザがどこの国境で取れて、いくらかかるかという情報は皆無だ。行ってみなきゃわからないのだ。
●モルドバへは、ルーマニアのヤシ(IASI)の街から陸路で国境を超えました。ルーマニアのブラショフで友人2人と別れて、一人になった私はヤシへ向かう列車に乗った。14時10分ブラショフ発、ヤシ行きアクセリレート(急行)号でヤシには22時30分着予定。8時間の列車の旅なんて短いほうだ。コンパートメントの中ではブラショフで買ったポテトチップスとツボービールを飲む。ルーマニアの平原に暮れてゆく太陽を見ながらのむビールは最高だ。
●8時間の列車の旅なんてあっという間だ。ヤシ駅には北駅に到着した。ここで午前3時30分発のモスクワ行きの列車でキシニョフ(モルドバの首都)へ向かおうとチケットを買おうとする。しかし、列車はここの駅からは出ないとのこと。ヤシ北駅から2キロ離れたヤシ・ニッコリーナ駅から列車は出るからそこへ行けという。駅前に24時間営業のマクドナルドがあったからとりあえずそこで食事をして、時間をつぶし、タクシーでニッコリーナ駅へ。
●ニッコーリーナ駅でキシニョフ行きのチケットを7ドル(程度)で購入。時間は午前0時すぎ、3時半まで時間があるのでこの小さな駅で野宿することにした。ルーマニアの辺境の小さな駅の待合室のベンチで横になる。蚊が多い。長袖で肌を覆っていても顔や手のひらを刺してくる。ルーマニアの蚊は、とてもしつこい。
●眠りから目覚めたら時間は3時半。すでに列車は到着していた。急いで車両に乗り込む。すると警察官の制服を着た人がやってきて、パスポートを見せろという。「何しにモルドバへ行くのか?」とか「帰りのチケットは持っているのか?」などいくつか質問をされ、最後に「ビザはどうした?」と係官。私は「ビザは国境で取りたい」と言ったが、「鉄道の国境でビザは取れない。バス・自動車の国境ならビザが発給される。君はこの列車には乗れないので、朝になるのを待ってバスか車で行け」とのことで、無惨にも夜中の3時にニッコリーナ駅でおろされた。
●すると、この警官の横にいて一部始終を見ていた白タクの運転手が「今から国境へ連れて行ってやる。No,Ploblemダー」と言って引き下がらない。警官も「大丈夫だ」というあいずちを打つ。彼しかタクシーらしいのがいなかったので、仕方なく彼の車に乗ってヤシの市街へ戻ってもらうことに。するともう一人後部座席に乗り込もうとするではないか。「彼は、オラの友達だ。駅まで行くからNo,Ploblemダ」という。ボロボロの旧ポーランド製の車で国境を目指すのはいささか不安だったので、「頼むから、ヤシのホテルへ連れて行ってくれ」とお願いするも「大丈夫だ。ここはルーマニアだ。おれが国境へ連れて行ってやる」の一点張り。こちらも「俺は明日の朝、バスで行くからとりあえずホテルへ戻れ。100万やる!」と語気も荒げに言う。
●もうだめだと思いながらヤシの市街を走っていると、ガイドブックにのっていたホテル・コンチネンタルが見えたので「ここで止まってフロントの人と話をしよう」と停車させ、ホテルへ逃げ込む。フロントの人も眠い目を擦りながら「どうした?」と出てきて交渉。タクシードライバー「俺は警察と仲がいいから安心だ。俺が今から国境へ連れて行くつもりだ」と言うが、「僕は今日はここで泊まりたい」といったので、ここまでのタクシー代金として100万レイを払い、やっと解放。その日はホテル宿泊。暗く天井の高いホテルの部屋にはベットが3つ置かれていたのを覚えている。とにかくシャワーを浴び、恐怖感から解放され興奮冷めやらぬままにベットに眠る。
●次の日、朝10時にキシニョフへ行くバスがあるというので、急いでチェックアウトし、ヤシーの街外れのバス停へ。1時間ほど待っていると、キシニョフへ行くバスが来た。バスはメルセデスの中型のマイクロバス。これに25人程ぎゅうぎゅうつめでのせられて出発。20分程で無事国境到着。ルーマニア側はなんなく通過。で、ドキドキしながらモルドバ側の国境に移動。「ビザはどうした?」と係官。「今ここで取得したい」と言うと「じゃ、こっちへこい」と別室へ。別室にはロシア風の衣装を着た太ったおばさんがデーンと座り、「この書類を書け」といわれ、その場でビザが発給された。料金は不思議なことに無料だった。だったらビザじゃなくてスタンプでもいいじゃんと思いながらバスは再び首都キシニョフへ向けて走り出したのだった。
陸路で超える場合に、国境で発行してくれるモルドバビザ。日本人は無料だがシールを貼ってくれる立派なもの。招聘状は不要。
●バスはモルドバの農地の中のいっぽんみちをひたすら走る。途中、数台の馬車とすれ違って、まるで中国の農村部を走っているような感じだ。沿道に規則正しく並べられたの木々の根元には防虫剤の入った白いペンキが塗られている。いつの間にか一人二人沿道の街でおりて行き、いつの間にかバスは定員通りの人数になっていた。僕は眠りに落ちた。
↑これが、ヤシ-キシニョフ間を走ったバス。この地域ではこの大きさのバスがたくさん走っている。
●15時過ぎに、目覚めるとバスは街を走っていた。これがキシニョフという街だ。中央の大通りにそって、旧共産党時代の大きな建物と市民の憩いの公園がある。
バスは、キシニョフのセントラルマーケット前のバスターミナルに到着。モルドバは国土が狭いので東西南北走っても最高5時間程度しかかからない。
●バスターミナル前の「ホテルメリディアン」(大手チェーンのメリディアンとはまったく違う、雑居ビルのようなホテル)に約350レウ(約25ユーロ)というやや高めの値段で宿泊。部屋はエキゾチックなインテリアと、ソファーベットが置かれた小さなシングルルームだ。お湯もちゃんと出る。窓からはセントラルマーケットの雑踏がよく見える。
●キシニョフの街は殺風景な社会主義的な建築デザインのビルと、涼しげな並木道が立ち並ぶ街だ。これといって見所はないのだが、なんとなく歩いてい美人が多いことが気になる。街が殺風景だから、美しい並木と美人の女性がとくに際立つのだろうか。モルドバの経済は外国への出稼ぎ労働者がもたらす外貨が大きなウエイトを占めているそうだ。近隣のルーマニアやウクライナ、ロシア、遠くは日本まで出稼ぎに行く人が多いらしい。(日本でも、ロシア、ルーマニアについでモルドバ人の女性が錦糸町辺りのパブで働いている光景を目にするという情報が入っている)
↑ホテル・メリディアンの1室。ホテルは1階がフロントだが、部屋をお店に貸しているらしく、写真屋や美容室が入っている。
翌日へ続く。
●翌朝8時のフライトでイスタンブールへ・・・の予定が???
苦労して入国したモルドバ共和国だが、滞在時間はわずか1泊だけ。しかも翌日朝8時のイスタンブール行きのエアーモルドバ745便に搭乗する予定で、チケットを発券してもらっていた。
●ところが、である。当日早起きして空港へ行ったらフライト時間が夕方の18時に変更になったとのこと。「えー18時って。10時間も遅れるのかよ。どうしてくれるんだ」と、空港のカウンターに詰め寄ってみてもどうしようもない。「ソーリー、でもどうするの?乗るの?明日の便にする?」と官僚的に聞かれるだけ。次の日イスタンブールから日本に帰るアエロフロートのチケットを持っていたので、なんとしても今日中にイスタンブールに戻らなくてはならない。私は18時の便を予約して、空港に荷物を預けて、再び市内に戻ることにした。空港から、市内へは中型のマイクロバス165番で約30分ほど。
●10時間もヒマができたので、美容院へ入ってみることにしてみた。受付でお金(約4〜5$)を払って、席に着く。おじさんが「どんな髪型にする?」と聞くので、髪型カタログのモデルを指さして「この映画スターのようにしてくれ」と言うと、「オーケーオーケー、No,Ploblemまかせとけ」と。バリカンを使って軽快に切ってくれたので、結構短髪になった。後で、イスタンブールで合流した友人に見てもらうと「後ろ、一直線になっているよ」とのこと。妙な髪型らしい。
●その後、セントラルマーケットをぶらぶら歩いていると、大きな食料品専門の建物があったので入ってみた。中では、チーズしか扱っておらず、ひたすらチーズを売るお店が数100軒ズラリ。エプロン姿のお姉さんが、大きなカマンベルチーズを量り売りしている。
●その建物をさらに奥へ進むと、カウンターとテーブルが置かれたバーのような店が入っていたので、時間までここでチャイを飲もうとオーダーする。チャイ(1レウ=約10円)を飲んでいると、隣のテーブルの兄貴二人が、「日本人こっちへ来い」と声をかけてくる。この兄貴たち二人もうすでにべろんべろんに酔っぱらってできあがっている。なぜか上機嫌だったので、断るのもなんだから相席させてもらう。若い方の兄貴がが片言の英語を喋るのだが、なぜか、もう一人の全然英語をはなせないおじさんの方の言っている事の方がよく理解できた。動物的なコミュニケーション力が働いたのだろうか。この二人日本人が珍しいらしく、「モルドバのコニャックをおごってやる」というので、御相伴に預かる事に。そのうち、店の主人までも集まってきて、「日本人がこんなところで、酒を飲んでいるという光景はめったにないな」とか言いながら、みんなで「カンパイ」する。
↑キシニョフの街並み。ルーマニアをぐっと田舎にして、社会主義的な色を濃くしたような感じの街並みといえば雰囲気が伝わるだろうか?あまり見るものはないだけに、女性の美しさが目に飛び込んでくる。それが、モルドバ人はきれいだという印象を強めているようだ。
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