Drive AKIRA SIDE

Drive 0


Prologue

「もしもし…ああ、オレ。……受かったよ。当然じゃん。
ああ、アリガトな。

あのさ、免許とったからオマエをどっか連れてってやるよ。行こうぜ。
何?遠慮すんなよ。そう、だから予定開けておいて。

すぐには無理だけどさ。多少慣れてからの方がいいな……うん、うん。
……そうだな…それくらいがいいかな。




…雨?
もうやんだよ。オマエのトコは?
まだ降ってる?
こっちなんて、日が照ったまま降ってたんだぜ。変なのな〜。

キツネ…の嫁入り?
……ハハ…そういう事を普通に言うってのがオマエらしいね。
…えっ虹?…なに、オマエんとこから見えんの?

──

こっちは、え
──と、見えネェ…かな…
いやぁ近くに窓無くってさ。
キレイ?ああ虹のことね。
へぇ意外だねぇ、オマエがそういう事言うかね。
塔矢さんけっこうロマンチストなんだ。あはは…



ちゃかしてないって、怒るなって
えっオレ?オレは……えっと…
……そういうのは……いや、興味ねえし……(好きでもねぇし…)

ああ、こっちの事…なんでもないって。うん、うん。
……それじゃまた連絡するわ。じゃあな。」






マナーモードの解除をうっかり忘れていた。
机の上に置かれたままだった携帯が、いらつく様に軽い唸りを上げ震えていた。
着信ランプも慌ただしく点滅を繰り返している。
それに気づいてあわてて取り上げ、ディスプレイ画面を確認すると進藤からだった。

放りっぱなしにしてからしばらく経っていたので、もしかしたら何度かかけて来てくれたのかも知れない。
そう思い急いで通話ボタンを押した。


バラバラと乾いた音を立て雨が屋根にあたる。
進藤が免許を取ったとボクに電話をくれた時は、ちょうど雨が降り出したところだった。通り雨なのか軽い雨音はすぐに瓦屋根の上を通過してしまい、お互いのスケジュールのすりあわせだとか、証明写真の出来映えとか、試験会場で献血して来ただとか、そんな世間話みたいな事を話しているうちに雨は行き過ぎてしまった。


雨が打ち水のかわりになったのか気温は幾分下がったようで、涼しい風が開けたままだった窓から室内に吹き込んで来る。
ふと思いあたって窓から空を見上げると、虹が架かっているのが見えた。


虹を見るなんて、本当に久しぶりだった。
稀なものを目にした事でボクの心は弾んだ。
それで思ったそのままを進藤に話したのだ。

ボクが見た虹は、すこし滲んだような色合いで…



淡く

儚く

優しげで



とても美しいと思った。




あれは消える直前の美しさだったのだと思う。

………………








何故だろう………
電話を切った後、胸の中で何かが燻っていた。









進藤
──────  
キミは何を隠しているんだ…?
何かあるのか…?









どうしてそんな風に思ったのか………
確かなものなどなく、ボクにはわからない事ばかりだ………


青い空に刷毛で牽いたように白くのぴる絹雲と
虹のなごりを目で追いながら
ただ漠然とそう思ったのだった。










Drive.0
2003.02.01.up
Sentence Sayumi-Watayuki