規則正しく繰り返される呼吸。
預けられた身体の重み。
穏やかに眠る恋人に愛しさの意味を知る夏の午後。
枝を一杯に広げた大樹の根元に腰を下ろす二人の頬を時折吹く風が優しく撫でる。
夏の盛りだというのに木陰は涼しくて、歩きつかれた足と暑さに負けた身体を休めるには最適の場所。
いつの間にか途切れた会話を特に意識するでもなく
二人でいる事の有意義さを噛み締めていたヒカルは、ふと右肩に重みを感じてそちらを見た。
そこに読んでいたはずの本を胸に伏せて眠るアキラを発見して思わず焦る。
こんなあどけない表情の塔矢アキラを見るのは初めてで。
「塔矢…」
起こす目的というよりもつい口をついたといったかなり押さえた声でヒカルは名前を呼んでみる。
案の定起きる気配の無いアキラ。
規則正しく繰り返される穏やかな呼吸と預けられた身体の優しい重み。
すぐ間近で愛しい人の存在を感じるということは、
切なくなるくらいに幸せで、胸が詰まるほどの喜び与えてくれる。
ましてこんな風に無防備な姿を見せられると尚更で。
例えば守りたいとか、頼られたいと思うのが男側の願望で、
相手も同じ男である場合は結構な確率で空回りしてしまう感情だったとしても、
それでも懲りずに思ってしまう。
アキラにとって自分の側にいる事が、誰の側にいるときよりも安らげる場所であればいいのに、と。
シャンプーの香りだろうか、甘い匂いに誘われてヒカルは自分の方に預けられたアキラの髪に唇を寄せる。
「あら、可愛いカップル」
途端に聞こえてきた言葉に慌てて顔を離す。
「まぁ本当、高校生くらいかしら」
「ねぇ、彼女の方、寝ちゃってるのね」
少し離れた場所で小さな子供をあそばせている母親達の会話。
風に乗って流れてくるそれに思わずヒカルは赤面する。
多分、いや絶対に今の自分の行動は彼女達に見られていた筈だから…
「やだ、彼、顔赤くしている。初々しいわよねぇ」
「うふふ、今時珍しいわ」
無責任に続けられる母親たちの会話にますます身の置き所のなくなるヒカル。
勘弁して欲しいと思う。
いや、それよりも今この状態でアキラが起きないかの方が心配で。
アキラが女の子と間違えられたことに対する反応はヒカルには未知で。
おまけに人前でしたキスの罪はどれ程になるのだろうか。
ヒカルはひかない頬の熱さと鳴り止まない鼓動に途方にくれた気分になる。
このまま暫くは恋人の目が覚めないことを祈りながら。
吹く風に梢を鳴らす木が優しく守ように眩しさを増す夏の日差しから二人を隠す昼下がり。
蝉時雨さえも遠い場所から聞こえるようで。

| 2002.07.12.UP
『木漏れ日』
「Radish Pink」
茉代にしき様より寄贈
2002.7.13.転載
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「Radish Pink」の茉代にしき様から、
相互リンクの記念に頂いた小説です。vv
にしきさんがメールの中で
「木陰で休んでるうちに、ヒカルの肩に頭を預
けて寝てしまうアキラくん」
といった事を書いて下さったものですから
相互リンクさせていただいた記念にと、
「お絵かき掲示板」で描いた絵を
勝手に贈らせていただいたのでした。
快く受け取って下さったばかりか、
こんな可愛らしいSSを書いて下さるなんて…。
私が贈ったものとくらべても
過分な物を頂いてしまいました。
あぅ…にしきさん、恐縮です〜。(>_<)
本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
2002.07.13 記
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