「心配させるな」
彼は憮然とした表情でそう呟くと、僕をそっと抱き寄せた。
いつの間にか、自分を追い越した背。しなやかで長い手足。
力強い一手を放つその指先が、今は自分のためだけに優しく差し伸べられている。
その気遣いに甘えてしまいそうになる自分。
絶対に寄りかかりたくはないと思っている自分。
「体調が悪いなら、そう言えよ」
怒ったような口調に、本気で彼が心配しているのだと察する。けれど、だからと言って素直に彼に甘えられない。
一人で立ち上がらなければ、歩き続けなければ、僕は立ち上がり方も、歩き方も忘れてしまう。
彼の温もりを知ってしまえば、僕は僕でなくなる。
「お前が他人に甘えないことも知ってる。でもこんな時、俺はどうすればいいんだ? 何も出来ずにいろというのか?」
抱き締める腕から、痛いほど彼の想いが、その苦しみが伝わってくる。
「塔矢、俺はお前にとって何なんだ?」
僕の表情を至近距離で覗きこむ真摯な眼差し。嘘はつけない、そう想った。
もう彼にも自分の心にも…。
「君は優しすぎるから…僕は…」
「塔矢?」
そっと彼の腕に自分の身体を預ける。その胸元に頭をもたせかけると、ホッと息をついた。
「どうしていいか、分からなくなるんだ」
...words by Yohko
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