風邪症候群

どんな病気? 原因は? 症状は? 治療は? お家では? 

どんな病気?

 医学的に「かぜ」という病気はありません。一般的に上気道(鼻・咽頭・喉頭)の急性炎症の呈する疾患の総称を「かぜ症候群」と言います。最近ではその症状が上気道だけでなく下気道(気管・気管支・肺)にまで広がっていることが多く、多病因による気道の炎症症状を総称する意味で「かぜ」または「かぜ症候群」という病名が使われています。
 つまり「かぜ」は独立した病気ではなく鼻から気管支にいたる気道粘膜の感染性あるいは非感染性の急性炎症のいくつかの組み合わせの総称で、厳密に言うと「急性鼻炎」「急性喉頭炎」などの病名となるがほとんど同時にそれらの症状があらわれるので、「かぜ症候群」と呼ぶ。

 特に鼻粘膜の急性カタル性炎症(粘膜の発赤・腫脹・粘液分泌過剰)が主な症状で、軽症に経過する疾患である。

 赤ちゃんはお母さんからもらった免疫が切れる6ヶ月以降の風邪を引きやすくなります。それ以前にも風邪にかかることもありますが、お母さんの免疫があるので、大体は軽くすみます。

このページのTOPへ戻る↑

原因は?

 ほとんどがライノウイルスやコロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが上気道(鼻から喉まで)粘膜にくっついて感染、炎症を起こすために起こる。
 かぜのほとんどは感染性かつ流行性で、原因の90%以上がウイルスで、ほかに細菌やマイコプラズマなども原因になる。非感染性の原因としてアレルギー性原因(ダニ、スギ花粉など)、物理的原因(寒冷、乾燥)、科学的原因(刺激性ガスなど)があり多彩。
 原因になる病原ウイルスはその数が細かくみると230以上といわれる。ウイルスには高温多湿の環境を好むものもあれば、低温や乾燥した環境を好むものもあるので、季節によって感染しやすいタイプが大体決まっている。
 かぜをひいた患者の鼻やのどから、くしゃみや咳で、鼻水や痰などの小粒子に含まれて飛び散った病原ウイルスは別の人の鼻やのどなどの上気道粘膜に付着して、20分ほどでその人の身体の細胞に入り込み、18〜24時間で増殖する。

 子供のかぜの大部分はウイルスによる気道感染ですが、環境因子(気温の変化、低湿度、空気の汚れ、周囲の喫煙などや)、固体因子(慢性の気管支疾患、未熟児、新生児呼吸障害、先天異常など)がかぜの症状に多彩な飾り付けをしたり、感染ではない病因もかぜ症状をおこすことがあります。

 同じウイルスでもインフルエンザの場合は高熱や全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状が激しく風邪とはかなり異なる。新型肺炎(SARS)はコロナウイルスが変身し(=変異という)まったく異なる新種の憂いするになったもの。
主な病因ウイルスとその症状
ウイルス名 主な症状
パラインフルエンザ 乳児から学童期前半に多く、喉頭炎・気管支炎・肺炎などをおこし易い。
RSウイルス 特に乳児に毛細気管支炎の原因となり、気管支炎・毛細気管支炎・肺炎を起こす。
エンテロウイルス
アデノウイルス
上気道感染症状のほかに、感冒性下痢症などの消化器症状を合併しやすい。
ライノウイルス 普通感冒の主因
乳幼児では下気道炎も起こす。
マイコプラズマ 学童期以後の肺炎ではこれが原因となることが多い。
β溶連菌 幼児期以後の喉頭炎の原因菌。

このページのTOPへ戻る↑

症状は?

 原因となるウイルスによって症状が異なるが、鼻水・鼻ずまり・のどの痛み・咳・発熱・頭痛・全身倦怠感といった全身の症状をあらわすが、他覚的所見としては咽頭部(のど)の発赤のほかには著しい所見が特になく多くは数日の経過でよくなる。
子供のかぜの特徴
大人のかぜより重く、特に乳幼児は重症になりやすい。
 乳幼児では無意識に痰を出すことができず、また鼻呼吸しかできないため、鼻水が多すぎたり鼻が詰まると呼吸が困難になります。発熱とそれに伴うけいれん、夜間の咳による睡眠不足、消化器症状のほうが呼吸器症状より強いことも多い。
 2歳以下の乳幼児の下痢症の40%は感冒性の下痢で、逆にかぜの15%に下痢を伴うと言われる。嘔吐も初発症状となることが多い。
 発熱・多呼吸・嘔吐・下痢による水分の消失、吐き気・腹痛による水分摂取の減少で容易に脱水症になる。
 脱水のため痰が粘っこくなり、、痰が出しにくく、痰が切れなかったり、その為嘔吐しやすくさらに脱水になるという悪循環を招きやすい。

多くの小児疾患がかぜ症状を初発症状として発症する。

このページのTOPへ戻る↑

治療は?

 かのナポレオンが「こんな鼻かぜひとつ治せなくて医学がなんになるのだ」といったくらい、ウイルスを退治する薬は現代でも限られたものしかなく、医学の及ばない病気の一つです。かぜの大部分はウイルスによる感染に寒さや不摂生などが引き金になって発症する病気なので、それぞれの症状にあわせた対症療法しかありません。
 たとえば、熱があるときには「解熱剤」、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりには「抗ヒスタミン剤」、咳には「咳止め」や「痰を切る薬」。風邪に伴って気管支の粘膜がはれ、咳がひどかったり、ゼーゼーするときは「気管支を広げる薬」などが処方されます。
 風邪をきっかけに、中耳炎や気管支炎・肺炎などを併発することもあります。これらの合併症を予防するために抗生物質を併用することもあります。

 熱も咳も体に入り込んだウイルスをやっつけたり、体の外に出そうとしているものです。痰や鼻水は細菌が育つ培地になりやすいので、それを体の外に出そうとしているものです。ですから、つらくなければ咳も鼻水もとめる必要はありません。とめてしまうと帰って風邪症状が長引くことにもなります。しかし、熱で水分も取れない、鼻水・鼻づまりがひどく寝付けない、鼻の下がただれる…など症状が強くて困るときには薬を使って体を休めることも必要です。

このページのTOPへ戻る↑

お家ではどうすればいい?

「かぜは万病のもと」
 かぜによく似た初発症状で発症する病気や、かぜが直接・間接的に原因や契機となって発症する病気、さらにかぜとは無関係だがかぜ症状を呈する疾患などがあります。またこじらせると体力の低下から合併症を起こすこともあります。「たかがかぜくらい…」と簡単に考えず、よくならないときは診察を受けましょう。
受診の目安
  • 風邪とよく似た症状の病気があるのでまず受診をして風邪かどうかを確認しましょう。
  • 一度受診して3〜4日たっても症状がよくならないとき。
  • 治ったと思ったのに、また咳や鼻水が出てきたとき。
  • 水分が取れなくてぐったりしているとき。
  • 息ぐるしそうなとき。
  • 3〜4ヶ月までの赤ちゃんで熱が38度以上ある、ぐったりしていて意識がない、呼吸が苦しそう、嘔吐や下痢が続き、水分を受け付けないときはすぐに受診を!


 薬物療法のほかに、安静を保ち、保温し、十分な栄養を取り、体力を必要以上に落とさないようにすることが大切です。

 通常かぜのような自然に治る病気は2〜3日目に症状が絶頂に達し、後は下り坂になって完治していきますが、2〜3日目を迎えても39℃近くの高熱や、咳や痰などで眠りが妨げられたり、のどの痛みのためのに食事や水分が取れないようなときは合併症やほかの病気を考えて受診したほうがいいでしょう。

 熱が4日以上下がらない。透明だった鼻水に色がついてきたり、咳が激しくなったり、と症状がよくならないときは、細菌感染を起こしている(=風邪がこじれた状態)になっていることが考えられるので、受診すること。

 ウイルスは冷たかったり、乾燥していたり、汚れた空気には強いので、汚れた部屋の空気をきれいにすると同時適度に加湿することを心がける。特に冬は締め切りがちなので、部屋の空気が汚れやすく、暖房のため乾燥しがちなので注意しましょう。

 マスクによってウイルスの進入を防ぐことは、残念ながらできません。しかしマスクすることによって自分が吸う空気に湿り気を与え、のどや鼻を乾燥から守ってくれるので、かけないよりはかけたほうがいいでしょう。ウイルスを完全に遮断することはできませんが、他人への感染を多少は減弱させます。

 入浴は体力を消耗させるので控えたほうがいいのですが、熱で汗をかきその不快感から眠れなかったり、汚れのために発汗が妨げられて、結果的に症状を長引かせることもあるので、湯冷めをしないように、昼間の気温の高いときや、部屋を十分暖めた上で、寝る前などに短時間で、熱のないときに入浴するといいでしょう。また、咳や痰に対してはお風呂の湿気で楽になることもあります。 

風邪は軽いものを含めると、「赤ちゃんのうちは1年に5回は風邪にかかる」といわれるほど。かかり易い子は1年間に10回以上も風邪にかかることは珍しくありません。特に保育園などの集団生活をするようになると風邪のウイルスに感染する機会が増えるため頻繁に熱を出すようになります。しかしその度に免疫をつけて強い体になっていくのですから、そういう時期だと割り切ることも大切です。

お大事に!表紙に戻るよ