はしか(麻疹)


どんな病気? 原因は? 症状は? 合併症は? 治療は? お家では? 予防するには?


どんな病気?

 急性で伝染力の強い麻疹ウイルスの感染でおこる急性熱性発疹性疾患です。幼児期に多く、はじめは風邪症状に似ているが次第に高熱、発疹、咳がで、一般に症状が重く、神経系の合併症を起こしたり重症麻疹で死亡することもある。かつては「命定め」といわれるほど多くの子供が、麻疹で命を落とした。現在でも予防接種を受けていない多くの子供が麻疹にかかっており、毎年約50人の子供が麻疹で命を落としています。
 最近では予防接種の普及で、流行が減少しているが、今でも5年に1度の割合で大流行したり、小児期に感染せず成人になってから感染する人もいる。
 麻疹は一度かかると二度とかからない免疫(=終生免疫)ができる。
<麻疹にかかり易い年齢>
 麻疹の免疫はお母さんから赤ちゃんに受け継がれるので、麻疹にかかったことのあるお母さんから生まれた赤ちゃんは、生後3ヶ月までは麻疹の流行があってもほとんど麻疹にかかることはありません。その後、お母さんからもらった免疫がだんだん減ってくる6ヶ月ごろまでは麻疹にかかる可能性は低くかかっても軽くすむことが多いようです。
 麻疹にかかる可能性が大きくなるのは生後6ヶ月以降で、お母さんからの免疫が完全になくなってしまう1歳を過ぎたころにはもっともかかりやすくなる。

 しかし、最近は予防接種もせず、麻疹にもかからずに育ち麻疹の免疫を持たないまま出産するお母さんや、予防接種のみで麻疹にかかったことも、麻疹の患者さんに接する機会が少なかったために免疫の程度が弱いお母さんも増えています。このようなお母さんから生まれた赤ちゃんはお母さんから十分な麻疹の免疫がもらえないため6ヶ月よりもっと早い時期から麻疹に感染する危険がある。

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原因は?

 麻疹ウイルスによる感染。感染経路は、麻疹患者の鼻や咽頭(のど)などの分泌液(鼻水や痰)からの飛沫感染もしくは直接感染でおこる。麻疹ウイルスの感染力は非常に強いため保育園や幼稚園などで流行すると予防接種をしていない子供のほとんどは感染すると考えられる。
 潜伏期間(感染してから発症するまで)は約10日間で、発疹出現までは14日。
 麻疹ウイルスは咳や熱が出始める3日前から発疹が出現した5日後まで患者から出ていて、ほかの人に感染させる。

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症状は?

 麻疹は、くしゃみ、鼻水、咳などの風邪のような症状かから始まり、熱は比較的高熱になります。この時点では麻疹と診断することは難しく、風邪と診断されることもある。

 潜伏期は約10日でその後の経過は前駆(カタル)期、発疹期、回復期に分けられる。
普通の経過は下表のとおりである。
  症状
前駆(カタル)期
  • 38〜39℃の高熱。咳・くしゃみ・鼻水・目やになどに風邪症状
  • 熱が出て2〜3日後に口の中の頬の内側に周囲が赤く中心が白っぽい斑点(コプリック斑)が数個から数十個現れる。これは麻疹にかかった人にしかみられないので、このコプリック斑が認められれば、身体に発疹がなくても麻疹と診断することができる。
発疹期
(発熱から3〜4日後)
  • 発熱から3〜4日後に一度熱が37℃台に下るが再び上昇し、39〜40℃にまでなることがある。はじめの熱よりさらに上昇するため、熱性けいれんを起こすこともある。
  • この再発熱とほぼ同時に耳の後ろ・顔から発疹が現れ、次第に胸やおなかにと2〜3日で全身に広がる。
  • 発疹の大きさはさまざまで、発疹同士がくっつき、まだらになる。はじめは鮮紅色で4〜5日たつと暗赤色から茶褐色に変わってくる。発疹に痒みや痛みはない。
  • 眼の充血や声のかすれ、咳などの症状がもっとも重い時期。
回復期
(はじめの熱から約10日後、発疹が出てから3〜4日後)
(この頃まで他人に感染させる可能性があるので注意する。)
  • 発疹が足の先のほうまで広がるころになると熱が下がり始める。
  • 解熱とともに出現した順に発疹は薄い褐色の色素沈着を残し剥がれ落ちる。発疹のあとが正常の皮膚に戻るまでは10日以上かかるが跡は残らない。
  • はじめの熱から2週間程度で急速によくなるが、咳だけが残ることもある。
 しかし、普通と違った経過をとる非定型麻疹もあるので注意する。
軽症はしか
  • はしか予防のためにガンマ−グロブリンの注射を受けた場合や母親からの移行抗体(お母さんから胎盤や母乳を通してもらった免疫)の影響が残っている1歳以下の乳児の場合には、高熱やコプリック斑がみられず、咳・くしゃみ・鼻水・目やになどや軽い発疹だけのこともある。
重症麻疹
(中毒性麻疹)
  • 乳児や基礎疾患(ほかに持病がある)を有する子供では重症化することがある。
  • 前駆期から40℃を超える高熱が出現し、症状が急速に悪化し、チアノーゼやけいれんなどが認められる。
  • 高熱・呼吸困難・出血・けいれん意識障害・昏睡・心不全などで死亡することもある。

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合併症・後遺症

 麻疹は症状が激しい病気です。その上肺炎気管支炎中耳炎などの合併症をおこし易い病気です。一般的な病気の回復までの経過を頭において、子供の状態を見てあげましょう。
 中でも多い合併症は肺炎で、はじめの熱から10日を過ぎても熱が下がらず咳がどんどんひどくなるときは肺炎を合併している可能性があります。また熱の上昇が続き、けいれんや意識障害を伴うときは脳炎を合併してる可能性があるので、受診しましょう。

 まれに亜急性硬化性全脳炎という後遺症が起こることがあります。約10万人に1人の割合で、麻疹にかかったあと数ヶ月から数年後に起こる脳炎です。多くは学童期に起こります。
 初期症状は落ち着きがなくなる・記憶力の低下・自閉・言語不明瞭などの知的行動の異常があり、その後けいれん・運動障害・視力障害などが現れ、さらに進行すると痴呆・寝たきり・昏睡となり数ヶ月から数年で死にいたる。

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治療は?

麻疹ウイルスによる感染のため、ウイルスに対する薬はありません。それぞれの症状に対する対症療法(熱には解熱剤、咳には咳止めなど)と、他人への感染を防ぐための隔離、合併症予防のための抗生物質の投与が行われます。高熱のために水分が取れず脱水症が起きている場合には点滴で水分を補給します。
 麻疹予防ワクチンが開発され、予防接種が導入されてからは致死率は減少傾向にあります。

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お家ではどうする?

 <受診>
 高熱、くしゃみ、鼻水、咳などの風邪症状から始まるため初期から麻疹の診断は難しい。
「麻疹にかかった子供と接触したか」「麻疹の予防接種を受けたかどうか」「コプリック斑があるか」もあわせて診断します。まわりで麻疹が流行していないかチェックしてください。同時に自分の子が麻疹にかかったときは、遊び仲間や幼稚園保育園にも連絡を入れてください。
 はじめは風邪と診断さ、高熱が続くので再受診すると「麻疹」と診断されることもあります。
 
 麻疹の可能性があるときは、ほかの子供への感染を防ぐために一般の待合室に入るのは控えてください。受診する前に、電話などで伝えれば別室に案内されるはずです。
 
 
<発熱・発疹>
 麻疹の経過を見るうえで、熱は大切な指標になるので、診察を受ける前に解熱剤を使うことはさけたほうがいいです。しかし高熱がかなり長く続くので、体力の消耗を防ぐために、解熱剤は医師に処方してもらったものを指示に従って正しく使うようにしてください。現在処方される多くの解熱剤は非常に効き目のマイルドなものです。高熱が1度下がれば(39度の熱が38度に下がるくらいで)解熱剤の効果があったと思ってください。平熱まで下げる必要はありません。麻疹ウイルスが体内からいなくなるまで熱は出ます。解熱剤は一時的に熱を下げてるに過ぎません。したがって解熱剤の効果が切れると熱はまたあがってきます。平熱まで下げてしまうと、熱の上がり下がりが激しくなり余計体力を奪うことになります。全速力で走っているスピードを(=高熱の時)少し緩めてやる(=解熱剤を使う)楽に走れるのとおなじだとおもってください。

 発疹が出現してから完全に解熱するまでの約1週間は、他人への感染を防ぐため、また体力の消耗を防ぐため家で安静にする。

 高熱のため脱水を起こしやすいので、イオン水・番茶・果汁など(飲めるものなら何でもいいです。)で充分な水分補給を忘れないでください。1度にたくさんもませると咳き込んだときに吐いてしまうこともあるので、少しずつこまめに飲ませることがポイントです。
「唇がカサカサしている、ぐったりしている、おしっこの量が少ない」といったときは脱水を起こしている可能性があるので急いで受診し点滴などの処置を受けてください。

 熱が高く暑がっているときは、布団はかけなくてもいいです。布団を掛けすぎたり、厚着をさせると、熱が体内にこもり、ますます体温があがって時には熱性けいれんを引き起こすこともあります。暑がっているときはいつもより少し薄着で熱がこもらないようにしましょう。

 入浴は体力を消耗するので、熱が完全に下がってからの方がいいでしょう。汗をたくさんかいているときはこまめに着替えをし、暖かいタオルで身体を拭くようにしてあげるといいでしょう。

 高熱のため、食欲は落ちています。無理に食べさせることはありませんが、水分だけは注意して与えてください。食べられそうなときは、ほしがるものを少しずつ与えます。スープやプリン・ゼリー・アイスクリームなど口当たりのよくツルンとしたものが食べやすいと思います。
 病気の間はほとんどたべられなくて、体重が1〜2Kgもへってしまう子もいますが、病気が治ると元に戻るので、心配は要りません。

 麻疹にかかるとビタミンAが大量に消費されることがわかりました。ビタミンAや体内でビタミンAに変わるカロチンを含む、にんじんやかぼちゃを使ったスープもいいようです。

 合併症がなく、熱が下がれば通学・通園はできますが、伝染病なので病院の指示を仰ぎましょう。病気が治っても1〜2ヶ月は体力が弱っているので、ほかの病気にかからないように注意しましょう。またほかの予防接種も完全に体力が回復してからにしましょう。

 1週間を過ぎても高熱が下がらない場合や、一般の経過と違う場合は合併症が疑われるので必ず受診しましょう。 

<咳・鼻水・目やに>
 
ひどい咳は、咳止めを飲んだからといってでなくなるわけではありません。でもできるだけ楽になるようにしてあげましょう。
 空気が乾燥していると咳は出やすくなります。湿度を50〜60%くらいに保てるように、室内に洗濯物を干したり、加湿器を使ったりして乾燥を防ぎましょう。咳き込むときは、上体を起こしたほうが楽になるといわれるので、縦に抱いてあげたり背中をさすって上げるといいかもしれません。

 空気が汚れていても咳が出ますので、換気もこまめにしましょう。

 鼻水はこまめにとってあげましょう。鼻水が多くなるとふき取る回数も増えて鼻の下が赤くただれてしまうこともあります。これを防ぐには、早めに軟膏(メンソレータムのミントにおいが鼻詰まりをとり、鼻の下のただれも予防するので、うちは鼻水が出始めたらメンソレータムを塗っています。)を塗って、肌に直接鼻水が当たらないようにし、擦り取る刺激を緩和するようにしてあげてください。ふき取るよりは、鼻水吸いで吸ったり、お母さんが口で吸ってあげるといいと思います。

 目やには、ばい菌が付きやすく、結膜炎を起こすこともあります。こまめにぬるま湯でぬらしたガーゼやティッシュなどで、目頭から目じりのほうへふき取ってあげてください。固まっているときは、ぬらしたガーゼなどを目にあててふやかしてからふき取ります。
一度使ったガーゼは捨ててください。反対側の目を拭く時は新しい物を使ってください。

 市販の目薬は、入っている防腐剤が悪さをすることがありますし、赤ちゃんには刺激が強いので、使わないでください。

 <再受診の目安>
 耳を痛がるようなら「中耳炎」、発疹が出たあとに高熱が5日以上続く、咳がどんどんひどくなるようなときは「肺炎」の疑いがあります。早めに再受診してください。

 麻疹の状態は良くなりかけているのに、「眠ってばかりいる」、「元気がない」、「何度も吐く」、「けいれんを起こす」、「意識がもうろうとしている(名前を呼んでも反応しない。ボーっとしている)」といった場合は「脳炎」を起こしている可能性があります。この場合は夜間でも至急受診してください。

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予防方法

 麻疹を予防するには、麻疹の予防接種を受けるしか方法はありません。予防接種を受けることで、確実に防ぐことのできる病気です。予防接種の普及で患者数は少なくなってきたとはいえ、予防接種を受けていない多くの子供が麻疹にかかっており、現在でも毎年50人の子供が麻疹で命を落としています

 麻疹予防ワクチンの開発により致死率は減少傾向にあります。1回のワクチン接種で95%以上の小児に免疫が得られ14年間は持続することが確認されています。1歳を過ぎたら予防接種を受けましょう。1〜7歳6ヶ月までは公費で予防接種が受けられます。麻疹にかかる子供の60%以上が2歳以下の子供なのと、1歳になるとお母さんからの免疫が完全になくなるので、1歳を過ぎたらなるべく早く予防接種を受けましょう。

 お母さんからの免疫がなくなってくる6ヶ月以降になると感染の可能性がでてきます。1歳になる前に保育園などの集団生活をはじめる赤ちゃんは1歳前に予防接種を受けておくことが望まれます。この場合は任意接種扱いになるので自己負担になります。

 予防接種を受ける前に、兄弟などがはしかにかかったり、通っている保育園で麻疹が流行し始めたなど感染の危険がある場合は、発病の予防や症状の軽減を図るために、麻疹の子供と接触してから3日以内に麻疹ワクチン、あるいは6日以内にガンマ−グロブリン(血液中から取り出して作られた免疫物質)を注射すると発症しないか、発症しても症状が軽くすみます。
 感染が疑われるときは、症状がなくても小児科を受診しその旨を伝え医師の指示を仰ぎましょう。

 また、予防接種を受ける前に輸血やガンマ−グロブリンの注射を受けた場合はワクチンが中和される恐れがあるので、約3ヶ月間は接種を延期します。

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