どんな病気? 原因は? 症状は? 合併症は? 治療は? お家ではどうする? 予防接種
ムンプスウイルスの飛沫感染(ひまつかんせん)により耳下腺炎や顎下腺炎を起こすため、顔がおたふくのように腫れるため「おたふくかぜ」とも呼ばれています。春から冬にかけて流行しやすくなります。子供に多く、両側の唾液腺が腫れ、発熱や疲れ、だるさなどの全身症状が強く現れる。片方だけの耳下腺が腫れたり、顎下腺だけが腫れることもある。 春から夏にかけて流行することが多いが、最近特に都市部では季節に関係なく1年中見られている。 赤ちゃんはお母さんからの免疫があるので生後6ヶ月ごろまではあまりかかりません。(お母さんがおたふくにかかったことがない場合は免疫は移行していないので、この限りではありません)かかりやすくなるのは1歳以降で、特に3〜9歳の子供に多く見られる。 おたふくは一度かかると終生免疫がつくので、再びかかることはありません。まれに再感染することもありますが、その場合でも症状が出なかったり、出ても軽く済むことがほとんどです。
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ムンプスウイルスによる全身感染。おたふくの患者からの飛沫感染(患者の咳やくしゃみなどでウイルスが飛び散りそれを吸い込むことでおこる感染)で感染します。ウイルスは口・鼻から進入し、気道の粘膜で増殖した後、血液中に入り、全身に広がって、耳下腺・顎下腺に病変を起こします。 感染させやすい時期は、耳下腺が腫れる1週間前から発病後10日くらい。症状が出ない不顕性感染が30〜40%に見られるがこの場合も免疫はできているとされています。また不顕性感染であってもウイルスの排出があるため、他人に移す可能性があります。 |
2〜3週間の潜伏期のあと、発熱・頭痛・耳下腺の腫れで始まります。 耳を痛がったり、食事の時に口を開けるのを痛がったりします。ほぼ同時期に両方の耳下腺(耳たぶの前下方から後ろにかけての皮膚)が腫れ、押すと痛むようになります。まず片方が腫れ、2〜3日後にもう片方が腫れてくるのが全体の75%で、残りの25%は片方だけが腫れます。顎下腺(顎の下)だけが腫れたりすることもあります。この場合でも免疫はできます。腫れは1週間程度で軽快していきます。 耳下腺が腫れる前に熱が出ることもありますが、熱がなく耳下腺だけが腫れることもあります。約過半数に耳下腺の腫れと同時に38〜39℃くらいの発熱が見られます。3日目くらいが腫れも熱も最大で、その後3日〜1週間くらいで治ります。 |
ムンプスウイルスは脳や分泌腺組織に親和性があるため、無菌性髄膜炎や膵炎・睾丸炎・卵巣炎などの合併症を起こしやすくなる。 |
無菌性髄膜炎 | <原因> ムンプスウイルスが脳や脊髄を覆っている髄腔に入り込んで炎症を起こすことが原因。10〜30人に1人がかかる。 <症状> 耳下腺が腫れてから1週間ほどして、「高熱・強い頭痛・嘔吐・首を曲げると痛がる」という症状が現れる。3歳までは熱はそれほど高くならないこともあるが、「頭のてっぺん(大泉門)が腫れる。食欲がなくなる、機嫌が悪くなる、抱っこしたときに首を痛がる」という症状が見られる。 <治療> 解熱剤や鎮痛薬を使った対症療法のほかに、特別な治療をしなくても通常2週間程度で後遺症を残さず回復する。 |
難聴 | <原因> 内耳や脳に音を伝える聴神経何らかのトラブルが起こっておこる「感音性難聴」。おたふくにかかった子の2万人に1人くらいの割合で起きる。 <症状> 多くの場合が片方だけの耳が難聴になる。この場合は気づきにくいので注意が必要。耳元で小さな音を立てて反応を見ることである程度わかる。「ほかの赤ちゃんより動作が遅い、呼びかけても反応が悪い、テレビに近づいて音を聞く」などが難聴のサインになることもあります。 <治療> 少しでも聞こえにくいようであれば早めに専門医を受診しましょう。赤ちゃんの難聴は言葉の発達に大きく影響するので早期に発見して適切な対応をとることが重要。 |
睾丸炎 卵巣炎 |
思春期以降の人がおたふくにかかると、男性では睾丸炎、女性では卵巣炎を起こすことがある。 睾丸炎になると、睾丸が大きく腫れて激しく痛みます。両方の睾丸に炎症が起きると不妊症になることがあるので、心配する人が多いですが、おたふくの合併症でおこる睾丸炎はほとんどの場合片側だけにおこる。片側だけであれば不妊症になることはありません。 卵巣炎が起こると腹痛などの症状が現れますが、卵巣炎を起こしても不妊症になることはありません。 |
膵炎 | ムンプスウイルスの5〜10%の患者が膵炎を合併し、嘔吐・下痢などの胃腸症状を起こす。 |
耳下腺の腫れに気がついたら小児科を受診しましょう。耳下腺に炎症を起こす病気で最も多いのは「おたふく(流行性耳下腺炎)」だが、中には細菌性の感染による化膿性の耳下腺炎などもあるので、確定診断してもらう必要があります。 ムンプスウイルスに効く薬はありません。したがって発熱や痛みに対する対症療法を行います。 全身の安静と症状に応じた解熱剤や鎮痛剤の投与を行ったり、ガンマ−グロブリンの注射を行います。 発熱してから5日以上高熱が続き、激しい頭痛や吐き気があれば髄膜炎の可能性があるので病院で適切な治療を受ける必要があります。 化膿性の耳下腺炎が疑われるときは抗生物質が処方されます。 |
<熱のケア> 発熱の一般的なケアを参考にしてください。 高熱が5日以上続くときは、合併症を起こしている可能性もあるので、再受診する。 <安静を保つ> 体力が落ちると免疫力が落ち、合併症を起こしやすくなるので、安静を保ち、体力を保持しましょう。元気であれば布団に寝ている必要はありません。耳下腺の腫れがなくなるまではウイルスを排出し、他人に移す可能性があるので、登園・登校は禁止です。(学校指定伝染病で、出席停止です。)お家の中でおとなしくしていましょう。 <痛みのケア> 腫れた耳下腺は熱を持ち、痛みもあるので、本人が希望すれば冷湿布をして冷やしてあげると痛みが和らぎます。かなり痛みが強いとく、つらそうなときは処方された鎮痛剤を、食事の前や寝る前に使用するといいでしょう。 食べ物を噛むときに痛みを感じることがあるので、やわらかくのど越しのよいものを食べられるだけ食べましょう。プリン、おかゆ、うどんなどかまなくても良い物がいいでしょう。唾液の分泌を促進するような酸味(すっぱいもの)の強いものは控えたほうがいいでしょう。 熱があるときは脱水になりやすいので、水分の補給をマメにしましょう。 <合併症の予防> おたふく(流行性耳下腺炎)の一般的な経過を参考に、異常を早期発見し、合併症を予防しましょう。 <清潔の保持> 体力が低下しているときは口の中の細菌が唾液腺に入り込んで急性の炎症を起こすことがあるのでうがいをしたり、白湯を飲ませるなどして口の中を清潔にしましょう。 お風呂は熱のある間、耳下腺の痛みが強い間は控えましょう。高熱で汗もたくさんかきますので、蒸したタオルで体を拭いたり、洗面器で、足やお尻を洗ったりしてあげるとさっぱりします。 不顕性感染や、耳下腺が腫れる前から、ウイルスを排出しているため、完全な予防は困難です。しかしおたふくワクチンにより予防が可能です。10歳以上で免疫のない場合は予防接種をしましょう。(任意接種なのでお金がかかります。) またおたふくの子供と接触したのに、症状が出なかった場合、免疫があっても十分ではなく、大人になってから発症することもあります。この場合でも予防接種を受けておくと、追加接種を受けた状態になり、より強い免疫ができると思われます。周りでおたふくが流行ったのにかからなかった場合は予防接種をうけましょう。 |
おたふく(流行性耳下腺炎)の予防接種は任意接種の1つで満1歳から受けられます。費用は自己負担になります。(私の周りでは5000円前後。近くの小児科にお尋ねください) ワクチンを接種しても約10%の子供には免疫ができず、将来おたふくにかかる可能性があります。しかし、その場合でもワクチンを接種しないで感染した場合に比べると、耳下腺の腫れや発熱の程度が軽く済むことがわかっています。また、自然感染したときより無菌性髄膜炎の発症頻度もかなり低くなっています。おたふくによる合併症を予防するためにも、ワクチン接種は有効といえます。 以前はおたふくのワクチンの副反応で無菌性髄膜炎を起こすことがあると問題になったが、現在はワクチンが改良され無菌性髄膜炎の発症率は大幅に低下しました。ワクチンの接種で難聴になることもまずありません。 まれにワクチン接種後の2〜3週間後に発熱や耳下腺の腫れがおこることがありますが2〜3日で治るので心配はいりません。 おたふくは年齢がいくほど、症状が重くなる傾向があるので、できれば3歳くらいまでにワクチンを接種しておくと安心です。 おたふく(流行性耳下腺炎)をおこすムンプスウイルスに感染しても、症状が現れず、知らない間に免疫ができていることもあります。これを「不顕性感染(フケンセイカンセン)」といいます。おたふく(流行性耳下腺炎)の免疫があるかどうかは、血液検査で抗体を調べるとわかります。この場合、予防接種しても問題はなく、ブースター効果でより確実な免疫になるそうです。
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