水分補給
 よく熱を出したり吐いたりしているとの手引きに「水分補給をこまめに!」と書いてあります。なぜ水分補給をこまめにする必要があるのでしょう?
                                                                                         
 人間の体は体重の約60%(女子では55%)が体液と呼ばれる水分で占められています。この水分は口から飲料水や食物から取り入れられ、腸から吸収されて、尿や汗、便などとして体から出て行きます。健康な時は入る水分量と出て行く水分量が上手く調節され、体内の水分量はほぼ一定に保たれています。
 またこの水分はただの水として存在するのではなくて、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)などの電解質やブドウ糖などが溶け込んだ溶液として存在します。なんだか難しい言葉たちが並びましたが、点滴液やスポーツドリンクのような物と思ってください。

 さて熱があると、熱の原因になっているばい菌をやっつけようと体は戦っています。ちょうど空ぶかしの車のようにガソリンを燃やし続けているのです。体の中でエネルギーを使う時大量の水分を必要とします。それが熱によって普段より多くのエネルギーを燃やすためにいつも以上の水分が必要になるわけです。また熱があると、呼吸も荒くなり、呼吸からも大量の水分が奪われるわけです。使われ、出て行く水の量が増える割に、熱のあるときはだるくて、食欲も落ちるので当然口から入る水分量も減ってしまうわけです。そうなると、入ってくる量と出て行く量のバランスが崩れてしまうので、水分不足=脱水の状態になってしまうわけです。
 
 今度は吐いている時をかんがえてみましょう。大人では1日に1500〜2500ml.(500mlのペットボトルで3〜5本。すごい量です)の胃液が分泌されます。(子供の資料がなくてゴメンナサイ)そのほとんどは、腸から吸収され体の中に戻っていきます。しかし、嘔吐(=吐くこと)が何度も起こると、吸収されるはずの胃液が口から体の外に出てしまうことになります。しかも吐き気で口から水分が取れなくなります。胃液には大量の電解質も含まれています。したがってこの場合、水分だけでなく電解質のバランスも崩れてしまうわけです。

 では、下痢の時はどうでしょう。皆さんはおなかがゆるいからと水分を控えてはいませんか?腸は胃から流れてきた水分を多く含んだドロドロの消化物から必要な水分や栄養素を時間をかけて吸収する場所です。下痢が起こるとき腸は何らかの原因で、水分や栄養素を十分吸収できなくてそのまま便として排泄してしまっているのです。すなわち腸の中は水浸しだけど、体に十分吸収できていない状態なのです。体の中はカラカラなのに、吸収できずに脱水状態になっているわけです。
 
 子供の場合、体のわりに水分量が多いので、大人よりも脱水の状態に陥りやすいです。おまけに、熱と嘔吐、熱と下痢、下痢と嘔吐など、脱水になりやすい症状が重なることも多いもの。熱があっても、下痢をしていても、吐いていても、口から水分が取れていればまず大丈夫です。しかし、水が飲めなくなったら、大変なことになります。2つ以上の症状が重なった時も急速に脱水状態に陥ります。このような時は迷わず、病院に行って点滴を受けてください。

 では、どんなものを飲めばいいのでしょう。
 基本的にはお茶でも水でも飲めるものなら何でもいいです。下痢の時はおなかが余計びっくりするので温かいものの方がいいでしょう。熱のあるときはさっぱりするのでつめたいものでもかまいません。
 体の中の水分は前にも書きましたが、いろんな電解質や糖などが溶け込んだ点滴液やスポーツドリンクのようなものです。ただ水だけを補っていると、体の中でその電解質などが薄まってしまうことになります。

 そこでお勧めしたいのが、電解質の含んだ飲み物です。大きな子なら、市販のスポーツドリンクでもいいです。赤ちゃんなら赤ちゃん用のイオン水がいいです。(ナトリウムやカロリーが少ないので)電解質のバランスも保ちつつ、水分も補給できるので。若干のカロリーもあるので、落ちた食欲のカバーにもなります。具合が悪くなり始めたらすぐに飲ませるようにするといいです。体がカラカラになってからでは大変ですから。

結論
 飲めるものなら何でもいいが、出来たらスポーツドリンクや、イオン水の方がよい。量も飲めるだけほしがるだけ与える。吐き気のあるときは大量に飲むと吐いてしまって逆効果になるので、少しの量を回数多く、のほうがいいでしょう。
病院に行く目安
 下痢や嘔吐など、脱水になりやすい症状が2つ以上重なった時。
 水分が口から取れなくなったとき。
 2時間以上おしっこが出ない時。

表紙に戻るよ