インフルエンザと解熱剤
  各地でインフルエンザが猛威を振るっているようです。ここ数年でよく聞かれるようになった「インフルエンザ脳症」。原因はいまだにはっきりはしていませんが、その1つとして考えられているのが「解熱剤」。いわゆる熱さましの座薬です。
 
 3年前(2000年)から発熱時に使うと急性脳症をおこす恐れがあるとして、インフルエンザの子供には投与を中止された2種類の解熱剤(ジクロフェナクトリウム(商品名:ボルタレン)、メフェナム酸(商品名:ポンタール))が小児科を除く医師の16%が投与を続けていることが大阪府立公衆衛生研究所の調査で分かりました。

 子供は小児科にかかるからいいじゃない…と思う方もいらっしゃるかと思います。なかには近くに小児科専門医がなくて、「内科・小児科」に通っている方もいるかと思います。この「内科・小児科」という看板。「専門は内科です。でも小児科も診れなくはありません。」そういう意味だって知ってましたか?もしかすると、その医者が上記の16%の一人かも…

 大半の小児科以外の医師も、インフルエンザによる子供の発熱時には別の解熱剤を使っているとか解熱剤は投与しないといった処置をしているようです。(ご安心ください)

 インフルエンザ脳症は発熱や全身の倦怠感などが急に発症し、脳症にいたるまでの時間が非常に短く、診断することも難しいようです。最近はインフルエンザをすぐに調べられる検査キットが開発され、流行期にはすぐに診断できるようになりました。夜中に高熱がでた時家に残っている解熱剤を使ったりしませんか?そのための死亡例も実際に報告されています。これは小児に限ったことではありません。大人でもおなじです。

 熱が出たら解熱剤。この考えはやめた方がよさそうです。特に12月〜3月のインフルエンザの流行期には。

 熱の出方はいろいろな病気の指標にもなります。また熱はその細菌やウイルスの活動を抑え、体の免疫反応を活発にさせるためにでています。その熱を下げてしまうことは、結果的に、病気の特徴を隠し診断を妨げ、原因になっている細菌やウイルスをのさばらせることになってしまいます。また、解熱剤は熱を下げますが、熱の原因になっている細菌やウイルスをやっつけてはいません。だから効果が切れればまた熱は上がってきます。この熱の上がり下がりが体力を余計に奪っていくのです。

 じゃ、高い熱が出ているのにほっておくのか?
 小児科では発熱時に家に常備して置くように解熱剤が出されます。使用条件は「38.5℃以上あってぐったりしている時」とかかれていませんか?熱があるからすぐ解熱剤という考えはどうかと、私は思います。熱があって、水ものめない(脱水の危険)、体がだるくて寝付けない(安静の障害)、熱が数日続き体力が低下している(体力の温存)と言う条件が重なった時に一時休戦で解熱剤を使うのがいいと思います。

 体温が41.5℃を越えると細胞内の障害が始まり、42〜43℃以上の高熱が数分以上続くと不可逆的(元には戻らない)細胞の機能障害が起こるとされています。

 インフルエンザによる発熱は40℃近いことがおおいです。しかも脳症にいたるまでには時間が非常に短い。できればインフルエンザ流行期は、慎重を期して夜間でも診察を受けた上で、解熱剤を使った方がよさそうです。

  インフルエンザでも使える解熱剤はあります。アセトアミノフェン(商品名:アンヒバ、アルピニー)というものです。これは効き目が穏やかです。具体的には40℃くらいの熱が38℃近くに下がる程度のものです。熱の出る理由を考えると、少し楽になるくらいに下がる方が体には良いと思われます。

 この時期、解熱剤は子供に限らず安易に使うべきではありませんね。そして今一度自宅に常備している解熱剤がなんと言う名前の物でどんな時に使ったらいいのかを確認し、判断に困ったときは何も使わないで受診することをオススメします。
 

表紙に戻るよ