帝王切開経験後の普通分娩=VBAC(ブイバック)
 帝王切開で子供を産んで次の出産を経膣分娩で出産することを、帝王切開経験後の普通分娩VBAC(ブイバック)といい、帝王切開経験者の半数前後が実施可能と見られています。もっとも心配される子宮破裂は完全な予測は難しいが、出産監視装置を使ったり、帝王切開時の手術状況、術後の経過を評価したりして安全性を検証し、VBACに成功する妊婦が少なくないようです。

 国内外のデータでは帝王切開を受けた妊婦の40〜70%がVBACに臨み、うち60〜80%が成功。残りの妊婦はお産の進みがよくないなどの理由で途中から帝王切開になっている。VBACが慎重に行われるのは、帝王切開で切った子宮の傷跡が裂ける子宮破裂の可能性が傷跡のない人より高いことが理由。

 子宮破裂は予測が難しい。万が一子宮が破れ、胎児が母体の腹部側に出てしまうと、酸素不足に陥り胎児に障害が残るケースもある。さらに完全子宮破裂では大量出血による子宮摘出を余儀なくされたり、母体の命にかかわることもある。ただ軽い破裂では無症状のことも…
 帝王切開の経験のない妊婦の子宮破裂が起こる確率は1万〜2万人に一人だか、VBACの場足は1000人に一人、最近のデータでは100人に1人とも言われている。

 事前の評価としては、
超音波検査による子宮壁の厚さを見たり、異常な痛みの有無も参考になる。切開部の傷の形状も重要で、帝王切開が別の病院で実施されたときは当時の状況も問い合わせることもある。胎児の大きさも考慮される。

 東京の愛育病院ではVBACの相談に訪れる妊婦に対して、
1.胎児心拍がわか分娩監視装置で出産中母子を監視する。
2.予定日を過ぎても陣痛が来ないときは帝王切開に変えることがある。
3.適当な陣痛があっても進行がよくないときは帝王切開に変更する可能性が一般のお産より高い。
などを説明し了解してもらうことが、VBAC実施の条件になっているそう。

 現在のところVBACの実施は各医療機関の自由裁量で決められている。
 2001年から03年にかけて中部地方の病院でVBACで3人が子宮破裂を起こし、新生児一人が死亡したことが明らかになった。
 
30代。
帝王切開から約2年後VBACに臨み、無事第二子を出産。産後2日目に子宮破裂が判明。
30代。
2度目のVBACのさい大量出血でショック状態になり、この病院に搬送。帝王切開の後に沿って子宮が断裂、子宮後方まで裂けていた。
30代。
帝王切開から3年後VBACで出産中に胎児心拍が低下し、緊急帝王切開を受けた。子宮が破裂し、胎児の体の一部が出ていた。新生児は死亡。
 
 このような詳細な症例報告は初めてだと言う。
 この中部地方の病院の医師は「VBACの実施は緊急帝王切開や大量輸血を行える施設に限るべき。安全確保のための統一的な基準必要だ」としている。

 普通にお産をしてみたい。誰もが思うこと。特に帝王切開を経験した人ならなおさらその思いは強いと思おう。十分は説明を受け、緊急時に対応ができる施設を選んで、納得のいくお産をしてもらいたいものです。
(2003年9月8日〜東奥日報より抜粋〜)
(2004年4月19日加筆)

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