製氷業者、氷販売店、氷屋さん必読の書


A5判 127頁
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    実践 「氷業学」                         著 今関靖將
 
 この度はImasekiホームページ、実践「氷業学」をご覧戴きまして有り難うございました。このコーナーは製氷業務に関わる方々とともに、氷についてより深くともに勉強して行きたいと思い、掲載いたしました。本文は私どもスタッフにより調査および実験結果をもとに記述いたしました、なお私独自の勝手な解釈も含まれております、誤ったデータ、記述がございましたら恐れ入りますが、ぜひご意見ご見解を、ご教授いただければ幸いと存じます。


 
   
 
  ―― 目 次 ――       

第1章 『氷とその水』について
  1. いろいろな氷の出来方(自然界の氷)
  2. 氷の結晶
  3. 白い気泡の出来るメカニズム
  4. 135kg角氷の出来方
  5. 製氷中のエアーレーション
  6. 角氷の解析
  7. 48時間の謎(本当に48時間はベストか?)
  8. 小型自動製氷機のしくみ
  9. 製氷方法による氷の違い
  10. 氷と水と不純物
  11. 「氷を溶かした水」の水質検査(氷と原水の不純物について)
  12. 氷と水の安全性
第2章  氷の熱学 〈氷と物理〉
  1. 氷の素朴な疑問
  2. 氷と熱量
  3. 135kg角氷の熱量と氷で冷やす時の熱量計算
  4. 貯氷庫、冷蔵庫の熱問題
  5. 資料(2)(3) 氷・その他の物質の、密度
  6. 資料(4) 比熱
  7. 製氷するときの、負荷計算

第3章  冷凍サイクルと製氷技術


  1,冷凍サイクル
  2、 冷媒回路と部品
  3, 冷凍庫の設備例
  4,異常時の対応
  5,いろいろな製氷方法 [2]
  6,ブロックタイプの製氷
  7,無気泡の製氷方法
  8, 流下式、プレート製氷
  9,アイスカン規格寸法
 10,故障診断一覧
 11,保守管理チェックリスト
  
第4章  氷業における電気一般の知識

  1.電気の基礎  100v電灯電気と200v動力
      周波数について 周波数が2つある理由
  2,電気設備の保全

     1,電線ケーブル 使用上の注意、日常の点検
     2,電気回路の保護装置が作動した場合
   3,電気に関わる災害
     1,漏電はなぜ起こるか
     2,電気絶縁の維持と接地アースの設置
     3,現場での感電災害事例
     4,接地(アース)と感電防止、機器側の接地
  4、電気設備の保安と安全
  5,電動機の保全
    1,湿気や水分からの保護
    2、温度管理
    3、電動モーターが逆転した」−−−−逆相
    4,インバーター装置による高調波発生とその障害
  6,よくある機器のトラブル、故障と修理
    1,フリーザの故障
    2,冷凍関連設備のブレーカーが落ちてしまう
    3,電圧降下
  7,テスタを使ってみよう 
  8,現場設備の電気回路
    1,操作回路の説明
    2,制御盤
  9.電気料金

巻末
  ●製氷工場のHACCP
  ●食品規格基準 氷雪販売業
  ●食品衛生法施行条例
  ●かき氷の衛生保持について



 序章  
 
私達はこれまでに、氷というものを勉強する為、多くの本屋さん、図書館へ足を運びました。しかし残念乍ら、私たちが知りたいとする所の角氷(陸氷、水産氷)つまり私たちが取り扱っている氷について書かれている参考書や資料を見つけ出すという事はとても困難でした。
一方、雪やあられ、また南極や北極の氷、すなわち気象学上の氷の学問、これは私たちの使う言葉の「氷雪」とは言わずに
雪氷学として各大学、各専門機関で、多くの学者の研究が重ねられています。そして豊富な資料に基づいた専門書も、数多く本屋さんに並んでいます。
しかしここでは、業者として私たちが取り扱っている氷を一人でも多くの消費者に、私たちの氷の本当の良さを知って戴きたい。
 そのような願いの上で、私たちに必要な知識、また身の廻りで出来る実験をし、そして、各機関から収集しました資料の解析、それらをもとに話を進めていきたいと思います。 

第1章
 『氷とその水』について


1-1 いろいろな氷の出来方(池の氷、135kg角氷、小型製氷機の氷)
 私たちの扱っている氷、またそれ以外の方法で出来る氷
氷の出来方についても自然での出来方、いわゆる天然氷、また人工的に機械で作る方法、色々な出来方、作り方、それに伴う製氷のメカニズムがあります。ここでは大きく4つに分けて話を進めていきたいと思います。

では最初に角氷に入る前に自然界での氷の出来方を知っておきます
池や湖に出来る氷はなぜ水の汚れ等があるのにもかかわらずあれだけ透明な氷がかなりの厚さまで出来るのでしょうか。これに比べ、水を入れた容器を冷凍室に入れて凍らせても、白い気泡のある氷となってしまいます。この違いは何でしょうか。(図1)を見て下さい。

冬になって、寒い日が続き気温が下がりますと、池の水温も徐々に下がり始めます。しかし外気温の割には、水温は高い温度を示しています。それには水温がなかなか下がらない要因があるからです。池の底の地熱によっても下がりにくいし、また水の比熱によって下がりにくいのです。
水は15℃の時比熱 1です。これに対し空気の比熱は20℃の時 0.241という値です。

■ 1-2氷の結晶

それでも数日間冷たい気温が続きますと、水面から冷やされ水温は次第に下がります。上層部の冷たくされた次第に下に下がり、底の方のいくぶん暖かい水は上へと上がります。そしてこれをゆっくり繰り返しています。対流がおこっているわけです。なぜ対流がおこるかというと、水は4℃の時、最も密度が大きいのです。それ以外の温度の水は密度が小さいのです。
氷が水に浮く原因も氷の密度が4℃の水より小さく、結晶にすきまが多いからです。このことについては、次の熱の項でもお話したいと思います。
上層部の水面は常に−5℃位の冷たい風にあたっていると仮定します。やがて水面の水の一部に、氷の結晶が生まれるわけです。
ここは大事な所なので、もう少し詳しく説明します。水の分子というのは、ちょうど1つの部屋に子供達が何人も入っているのに似ています。子供一人一人が水の分子と思ってみて下さい。部屋が熱くなれば子供達分子は活発にかけ廻り、それ以上熱いと子供は窓から飛び出していってしまいます。それが蒸発です。
また一方、寒ければ寒いほど、子供達の分子の動きは鈍くなり、更に寒いと何かにしがみつくか、隅の方に動かなくなります。他の子供達もみんな寄ってきて、一つの固まりになろうと強く抱き合います。水から氷になるときも水の分子が1つの核を見つけ、氷の結晶を作り、その結晶が次第にある大きさまで成長するという事です。
ここでは0℃の水が、0℃の氷になったという事なのです。水が状態変化をしました。
ここで水の分子の大きさについて少し説明致します。ここで全項を通しても、一番重要な事を知っておいて下さい。
氷の結晶にはどんな物質も入り込めないという事です.。
正確に言うと氷に結晶格子に入り込める不純物はほとんどないといって良い位です
水が氷になる時も、空気は氷から追い出されてしまいます。
また氷に色を付けようと食紅等を入れても、色の物質は氷から追い出され、氷と氷の間に固まってしまうのです。
氷はこのような特別な結晶構造を持っているのです。更にもう一つ重要なことを知っておいて下さい。
水の4℃という温度です。この4℃という温度は、水を計る上ですべて基準となる温度なのです。密度などでも、この温度を基準としています。そして水が最も安定している状態が4℃の温度なのです。なぜ4℃なのかは、各自興味のある方は勉強してみて下さい。これには4℃の水だけでも数多くの図書があります。  

■ 1-3 氷の中の泡は何故出来るか
さて話を戻しますと、先ほどは水面にほんの少し氷の結晶が出来た所でした。氷の周辺の水の一部は、ゆっくりとその氷を成長させます。水の中にとけ込んでいる空気や、不純物を結晶の中に入り込ませない性質の為、ゆっくりと追い出していくわけです。遅ければ遅い程、水の中の成分は分解して不純物を氷の結晶の間から追い出します。このように氷は、成長を続けている内に、下の方の水も不純物や空気がとけ込めない程の濃度になります。水が含むことの出来る空気の量には限度があるのです。
ここで1つの変化が現れます。氷には追い出され水にも溶け込めない空気や不純物は、1粒の泡を形成して氷と水の境界にいます。やがて氷は成長し、その泡は、廻りの氷に閉じこめられてしまうのです。
このように池の深さにも充分関係はありますが、透明な氷が出来てくるわけです。しかし自然の気温は不変ではありません。気温のゆるむ時もあるし、雨の降る時もあります。池の表面上には自然に大気中のチリ等がたまります。気温がゆるんだときには、表面の氷が溶け、又再度凍る時にはそのチリ等もとじ込んでしまいます。水が氷になる時、膨張して割れたところにそれらが入ってしまう事もあります。それらを防ぐ為、場所によってはシートなどをはって、衛生管理をして天然氷を作っているところもあります。

よく電気冷蔵庫の製氷皿で氷を作るときに、割り箸を入れると透明な氷が出来るという事を耳にします。これは机上の空論だと思います。全く間違っているとは言いません。それは割り箸をおいた事によって、製氷皿が冷却板から離れる為、冷却速度が幾分遅いという事なのです。
しかしこれまでに説明したように、氷の成長するメカニズムを知れば、この話は補正しなければなりません。
以上のように自然界に出来る氷を見ることによって、水の対流、水の中の不純物、空気の溶存濃度、不純物の排斥、氷の凍結速度、氷の結晶、氷の性質、氷の密度、氷の膨張、溶解熱、熱伝導など、氷を扱う上で学べる事はたくさんあります。

さてこれまでは自然が作る氷を説明しました。それではこれを冷凍室の中で出来ないものだろうか。そして池と同じような氷が出来れば立証されるのではないかと思い、いくつかの条件を設定しました。
1つは寒い風が吹く事、そしてもう1つは地熱となるものがある事です。そこで2つの調理用のステンレスボールを用意しました。1つは池で出来る氷の実験用、これをAとします。もう一つはそのまま水を張って手を加えないで凍らせるもの、これをBとします。
条件1は冷凍庫の冷却器から出る冷たい風があり、そのままで満たされます。但し室温−5℃、冷却器吹出温度−15℃に設定致しました。
条件2はちょっとしたアイディアがありました。ボールの下にホッカイロをガムテープではり、暖めるわけです。水の下の地熱の効果をねらったわけです。この二つの条件を満たし、ボールに水をはりAとBのボールを並べて置きました。
約1時間たった頃、両者にそれぞれの変化が現れました。まずAのボールには数ヶ所で氷の結晶が生じたらしく、それが少し成長した所でした。表面はうすい氷のまくとまくが、引っ張り合うようにスジが走っています。氷はあくまで透明です。Bのボールは同じようなスジは少し見られますが、よく見るとボールの表面及び氷の裏面に非常に小さな気泡が無数についているのが確認できます。
これから更に時間が経ちました。Aのボールでは先程と同じように透明な氷に覆われ、ボールの底まで見える為どこまで凍っているのかわかりません。ただボールのへりを見てみますと、氷と水の境界にスジが見られ氷が成長しているのがわかります。Bの方は先程の氷の下の小さな気泡が白くなっています。
この状態のまま数時間放置したところ、
Aのボールの方の透明な氷も厚さを増し、約半分をすぎると白い気泡が現れてきました。空気の逃げ場がなかったのと、そしてホッカイロも冷たくなっていました。
更に時間が経過するとA、B共に氷の膨張で氷が割れ、中央がふくれ上がった状態でした。
以上この実験で、池での氷の出来方が立証された事と思います。  

■ 1-4 135kg角氷の出来方
 続きまして、私たちが扱っております135kg角氷についてお話したいと思いますが、製氷の設備やシステムまた、専門的製氷の技術については各お取り引きの製氷メーカーを見学したりお話を伺ったりするのが一番良い方法ではないかと思います。
ここでは、製氷の工程を簡単に説明し、製氷の原理、氷の質について触れてみたいと思います。
多くの製氷工場ではあらかじめアイスカンに原水を入れておきます、
この原水をしばらく放置している間にも水の中に溶け込んでいる、塩素やカルキ臭つまり、水道水の滅菌消毒に使われている次亜塩素酸ナトリウム等は自然に空気中に放出されています、また近代設備の工場においては、原水の前処理を行いより良い水で氷を製造している工場もあります。
この原水の入ったアイスカンをブライン槽の中に沈めます、ブラインの種類、ブラインの温度は各メーカーによって異なっていますが、ここでは塩化カルシウムの溶液を−12℃まで冷却すると仮定致します、このブライン液も熱交換の効率を良くするために専用のポンプ、アジテータで循環しています。各工場とも広い製氷室のブライン槽で何トン/日の氷をローテーション良く作っていますが、ここでは、その中の1本について話しをしてみたいと思います。

ブライン温度は氷質に重要な意味を持たせます、あまりゆるい温度では、氷結速度が遅く生産性がありません、逆にあまり強く冷却しすぎますと出来た氷の品質が悪かったり、気泡が多かったり良い結果は得られません、また脱氷時においても氷にヒビが入る恐れが多いでしょう、その他各機器の損失、消耗をも伴う事になりますので各メーカーとも、非常に気を取りつかわれることと思います。
ブラインの冷却熱を受けたアイスカンの中では、原水の冷却が急速に行われています.
エアーパイプが水中に入れられるとエアーが水を攪拌し、効率良く冷却が進みます。
やがて、アイスカンの壁面、床面に、氷の結晶が出来始めます、ここからは前項の池の氷の成長と同じように、水の分子が集まって氷の結晶となり、やがて表面に氷の厚さを感じさせます。氷の厚さが数mmまでは非常に結氷速度は速く、見る見る氷になって行きます。
ここで、氷の中に溶け込んでいる空気、それに含まれる不純物は、少しずつ水の中央に追い出されて行きます。例えばこの時点でエアーレーションをしない場合氷の表面にごく微小な気泡があることを確認することが出来ます、しかしこのままですとその気泡は氷に捕まってしまいます、(図2)です、 
 

■ 1-5 製氷中のエアーレーション
  
そこでエアーレーションの役目となるのです、パイプから出たエアーは水中での上昇する浮力により氷の壁面の小さな泡さえもはがしてしまい、水を攪拌しながら上昇し空気中へ放出されます。
 ここでエアーレーションの意外な一面をご紹介致しましょう
エアーは単に水の攪拌だけでなく、もう一つ重要な役割があります、吐出泡の上昇浮力により、水中に混入している単位質量の軽い成分であるアンモニア性窒素などは、その勢いで上昇し水面で泡となって弾け、空気中に放出されるのです、一方、質量の重い不純物質は氷の成長表面の上を少しずつ氷に持ち上げられ、気泡のスジなどをともなって、やがて、氷の結晶に覆いかぶされてしまいます。
これからも解るように、エアーの吐出圧力、吐出量と言う事が重要となってきます。
 
エアーレーションについて、他に例を見れば一般に金魚などを飼う水槽でも云う事が出来ます。よく「エアーポンプで水の中に酸素を入れる!」などと云われますが、考えてみてもエアーパイプから出た空気の泡は、水面に届くまでの短い間に酸素が水に溶け込む時間はありません、もちろん少しは溶け込みます、新鮮な空気は水槽の水面から吸収し、水中の酸素量を確保しているのです。
 では何故エアーでブクブクとやっているのでしょうか?
先程のアイスカンの中の水と同じです。魚の出した排泄物などをバクテリアが分解し、分解された亜硝酸性チッソなどの有害成分をエアーの泡の上昇浮力によって水面まで押し上げ、空中に分解、放出させているのです。
同時に、この勢いで対流をおこし、新鮮な空気をゆっくりと水面から溶け込ませて、魚の住める環境を維持しているわけです。

では、話を戻しましょう。
氷が厚くなるにつれて排出された不純物は水の方にも溶け込みづらくなってきました、水の方の不純物残留濃度が高くなったからです。
これと同時に氷厚が増したことによって、氷の熱伝導率が悪くなり、氷結速度が遅くなってきます、そこで、これまでのアイスカンの中心部に残っている水を全部排出し、新しい水を注入するわけです。この水はこれまでに出来た氷の壁と融合し熱の交換により急速に水温を低下させ、当初の様な製氷を続ける訳です。
 製氷が進み最後に問題を残すのがエアーパイプです、これを抜き取るとこれまでに説明してきたように氷に芯が出来てしまいます。現在はこれも氷の中に埋め込み、後で抜く方法なども取られている所も見受けられます。
 以上、製氷については部分的に説明致しましましたが、次は氷本体についてふれてみたいと思います。  

■ 1-6 角氷の解析

 では、例えば皆さんが氷をカッターで切るように氷を輪切りに切断したとします、その切り口を見て下さい。外表面から1cm位迄の部分(ア)、そこから水の入れ替えまでの部分(イ)そして最後に残った芯の部分(ウ)と分けたとします、芯以外はすべて透明で、これら境界は肉眼での区別は出来ないと思います。そこで、各部分を更に薄くスライスして観察を重ねました、そしてそれらに変化があるかどうかを見ました、各部において氷の成長する速度や状況が異なるから変化があって当然と思いました、しかし、肉眼での観察では白い気泡の部分と透明な部分全部とが分けられるだけで、更にそれより緻密な観察は出来ませんでした。
そこで、ある方法を思いつきました、氷に赤外線をあてる事なのです
皆さんも、氷を配達した時などシートのかかっていない所の氷が、直射日光にあたり、スジ状にボロボロになってしまったという事があったと思います。これを再現し調べれば手がかりになるかも知れないと思いました。
このボロボロになってしまったスジの原因は氷の結晶と結晶の境界です、結晶間の圧縮された組織が直射日光、特に赤外線の熱の影響で壊され六角の柱状のスジとなって氷をボロボロにしてしまった訳です。これを拡大して見る事により、氷の出来る過程によって氷の結晶断面も異なることが解りました。

氷の切断面について、135kg角氷が他の氷と大きく異なることがあります。それは一般の人が見てもすぐに解るほどの、氷断面のツヤです、
一度冷凍でしめた氷を割ったとき、ちょうど石炭を割ったときのような、滑らかな割れ口は、現在の所135kg角氷以外では、なかなか見られません。
まるで生き物の様な光沢、滑らかさは、氷の密度、結晶の方向、理想の氷の成長速度、成分の影響、これらによって作られるものです、つまり、
 「他の氷と硬さが違う」という点も正にその通りであると言えます  

■ 1-7 48時間の謎

角氷についてはもう一つの疑問があります
「48時間の謎です」 なぜ48時間なのでしょうか?
製氷温度による製氷時間を見ると、実験の結果あまり低い温度、つまり−25℃より低い温度では良い氷質は得られません、では−5℃にしたらどうか実験をしました。なんと約160時間もかかりました、確かに氷質は良くなり透明度も増したように見ることが出来ます、しかしこれでは生産性が全くありません、この温度を氷質の満足出来るところまで移行し、生産性を上げ、作業のローテーションつまり水換えやその他の業務をを入れるとその分岐点が48時間という結果に現れてきました、
同じ方法で氷缶の厚さ、形を変えれば早い時間での同じ氷質の氷は出来ます、そのためには作業効率、コストの問題があります
現在でも氷缶サイズ「1種」が使われているのには、それなりの理由と思います。
また、これまでの製氷メーカーの長いい歴史の中の努力により、これらの製氷時間、製氷温度、氷質、全てを結集したものが、角氷という形をしてあるものと思います
 私たちが昔から云い続けてきた「48時間」と云う言葉には、業者だけかも知れませんが、快い響きがあります。またある意味では「48時間」と言う言葉は「長い時間丁寧に作った」と言う意味に置き換えても、今後とも大事に使って行きたい言葉だと思います。 

■ 1-8 小型自動製氷機
それでは次に、電気メーカーによる小型製氷機について説明したいと思います。恐ろしい程の勢いで進出しました。この小型製氷機地域によって、その普及率は異なっていました。すでに飽和状態になって横ばい状態の町、又この小型製氷機の勢力圏内に入りそうだという町。私たちにとって非常な驚異であり、これからも悩まされる存在であると思います。この小型製氷機メーカーもこれを送り出す迄には色々な氷を研究し、日本の市場に合うように開発し、又合わせて角氷の消費地域等、広く市場導入の調査を行い、この結果が現在のものと思われています。これに対し私たち業者は、長い間何の手だても打てないのがおおかたの現状でした。
 この項では、これら小型製氷機を少しでも知った上で、私たちの氷の良さをPR出来るお手伝いが出来ればと思います。

現在小型製氷機メーカーは、数多くあります。そして多くの製氷方法があります。
例えばダイヤアイス状のキューブアイスをセル方式という方法で作った物、氷をプレート状に作りそれをニクロム線できる方法の物、又丸い氷、円筒状の氷、星型状の氷などがあります。更に結氷ドラムについた氷を削ってフレーク状の氷を出す方法の物、そのフレークを押し固めた方法の物、このように例をあげただけでもいくつもの製氷機があります。
 
この中でも一般スナック等で標準的に多く使われているセル方式という小型製氷機について説明をしていきたいと思います。
製氷する所は大きく3つに分けることが出来ます。一番上にある製氷皿にあたる部分で氷を作る部分、その下に原水を供給するポンプや水のタンクのある部分、それとこの室とは別に冷凍機電気BOXなどがある部分です。

簡単に製氷サイクルを説明します。詳しく知りたい方は(図3)を見て下さい。
まず一番上には冷却板、すなわち製氷板が取り付けられています。形はちょうど家庭用の製氷皿を逆さにしたようなものです。下から見ると碁盤の目のように各マスに分かれていて、そのマス1つは2〜3cm位でダイヤアイスが1ヶ分入る位の大きさのマスになっています。
そしてその真上には冷却パイプがぴったりと溶着されており、それで一体となっています。そしてそのすぐ下には原水を入れるタンクがあります。そのタンクはちょうど人間のアゴが動くように先程の冷却板に密着したり、又出来た氷を落とすときに斜めに下ってきたりします。
これに原水を循環する為のポンプがついています。
 スイッチを入れると冷却パイプに冷媒ガスが流れ、製氷皿を冷却します。これと同時にタンクには水道水などが原水として供給されます。そうしながらタンクは口を閉じるように上に上がっていき、製氷板に密着して止まります。
その時点で循環ポンプが作動します。パイプから送られた原水はタンクの内部構造にある吐出穴を通して勢いよく各製氷マスをめがけて噴射致します。マスの数分だけの噴射穴が出来ていて、各マスにそれぞれ水が噴射します。噴射された水は各製氷マスの五面から冷却され、その噴射穴のすぐわきにある排水穴から元のタンクに集まります。
そしてこれが約数分間続きますと、ある水温を検出して製氷のタイマーが作動します。この部分は水温サーモや製氷サーモ等、各メーカーによって制御が異なります。製氷板の冷却と水の噴射が以前続いている内に、水温は氷の出来る温度となります。やがてマス内の五面から氷の成長が進みます。
 そして数十分で氷の成長が終わりに近づくと先程のタイマーやサーモ等で製氷が完了した事の信号を出します。
各部に信号が伝達されるとまずポンプが停止して水の噴射が止まります。水のタンクが口を開けるように開いて、氷の出口を滑り台の様に斜めの状態まで下ります。これと同時に先程まで冷却して製氷していたガスは、今度は同じ冷却管に暖かいガスが流れるよう切り替わります。
数分のうちにマス表面の氷が溶け、マスから落ちようとします。マスの天井のごく小さな穴から空気が入り、氷は落ちやすくなってタンクの滑り台を通って、下の貯氷室にたまります。
同時に次の準備の為に原水の供給も行われています。
製氷板がある温度まで上昇すると全ての氷が落ちた事を検出して元のサイクルに戻ります。これが1サイクルという訳です。もちろん貯氷室がいっぱいになればサーモや赤外線センサー等で検出し全ての運転を停止させます。
では製氷機で出来る氷の質も考えながら、もう少し詳しく説明致します。冷却するガスの流れる温度、すなわち製氷温度は−20℃〜−25℃くらいの低い温度です。
角氷でのブラインの製氷温度より、はるかに低い冷却マスの中に細い吐出穴から勢いよく出た水は、マスいっぱいに広がります。この時の水の圧力は例えば上のマスをはずした場合、約30センチも飛ぶ位の水圧になります。  

■ 1-9 製氷方法による氷の違い
 
 ここで、これまでの池の氷や135k角氷と比較してみましょう。凍結速度の違いによって出来た氷はどのような違いがあるのでしょうか。

空気はゆっくりと水の中に溶け込んでいきます。しかし氷になるのには前にも言いましたように、空気は氷の結晶格子の中には入り込めません。この水をゆっくり凍らせた場合には、はき出された空気はまだ凍っていない水の方に拡散されて薄まります。
角氷のように比較的あまい温度、−12℃位でゆっくりと時間をかけて空気や不純物を追い出して出来た氷にも、未だ無気化合物、いわゆるミネラル分は残っています。うまい水の成分であるカリウム、カルシウム、ケイ酸等が氷をお冷やとして飲んでも、水割りにしても、人の口は敏感に旨さを感じることが出来ます。
 しかし製氷機のように−25℃という温度の速い凍結速度と、水の噴射による強い攪拌により、おいしい氷に必要な成分を追い出してしまうため、艶のないクラックのある氷が出来てしまうわけです。更に結晶の方向についても製氷機の氷の場合は、氷の下のくぼみに向かって、結晶は上から周囲から成長してくるため、見た目にも氷自体のつや、なめらかさを失う一因となっています。又この氷には1粒の氷の中に多くのヒビが見られます。
これは製氷温度の比較的低い、つまり−20℃以下の製氷時、及び脱氷の時に出来るもので氷の中につかまっている気泡が膨張してヒビが作られるのです。このように氷としての違いは歴然と現れました。
しかしお客様にとってはもっと重要なコストの問題が残ります。資料7に製氷コストの計算例があります。時間があれば、見ておいて下さい。  

■ 1-10 氷と水と不純物
これまでにいろいろな氷の出来方と違いを説明してきました。ではこれ程までの良い氷を造りうる「水」はどうなのだろうか?
今度は水の問題、原水に目を向けてみたいと思います。

私たち業者は営業活動の時など、お客様にいろいろな言葉を馳駆しし、氷の良さを説明してきました。
例えば、「この氷は硬さが違う」「溶けにくい」また「透明度が違う」「48時間もの長い時間をかけて作っている」、更に「不純物がない・・・」もよく使われます
これらは昔から言われてきました。我々業者は、氷を見ればその氷の良し悪しを一瞬で見抜きますが、お客様にはこれだけの言葉をかけてもわかってくれないのが実状だと思います。
とは言うものの、私たちの扱う氷は他の氷と比べると本当に硬いのだろうか?不純物は本当に少ないのだろうか?これらのデータもあまり目にする事が出来ませんでした。そしてこれまで言われてきた題目だけを、繰り返していました。私たち氷業者に裏付けされた自信がなければ、私たちの取り扱う氷を選んでもらい、氷の本当の良さを知ってもらう事は出来ないのではないでしょうか。
 私は氷にいろいろな疑問を持ちました。そしてそれを解明しようと思いました。しかし調べるにも調べようがありませんでした。色々な研究所に電話で「氷を調べてもらいたい」とすると、ほとんど丁寧に断られました。
例えば硬さを調べるにも、様々な条件をそろえなければなりません。氷の種類やそれを作る水、氷の形状、氷体温度とその上で特殊な装置で計るわけです。その為、条件を合わせる事はなかなか困難でした。又透明度を調べるのにも、氷の透明の基準を定めなければなりません。そして、氷を作るのに長い時間とか短い時間とか、製氷工場ではブライン温度をかえてまでもは現実にはなかなか出来ませんせん。
そこで、不純物の検出はどうかと考えました。固体である氷そのものは無理と思いました。そこで、鉄やアルミを溶かして成分分離するように、氷を溶かして水にして、不純物の検出をする事を試みようと思いました。そこで、氷の中の不純物という問題に取り組む事にしました。
これまでよく言われました不純物のない氷、では氷を作る元の水、原水にはどのくらいの不純物が混入しているのだろうか?又その不純物とは、どのような成分か?陸氷につかう水としては、一般に上水道や、地下深い所からとった地下水を利用しています。
うまい水の成分、まずい水の成分、体に良い成分も体にとっては危険な成分も、又その地域によっても異なる成分は様々です。どれほど良い成分でも、水の純度という基準からするとこれら成分は不純物です。
このような私たちが飲料水として飲んでいる普通の水を氷にすると、氷にしたその水の成分はどのように変化するのか、 


■ 1-11 「氷を溶かした水」の水質検査
 そこで、氷を溶かした水の水質検査を行いました。検査した機関は、各メーカー様が毎年、あるいは一年おきに行っている検査と同じく、薬剤師会検査センターです。そこで理化学検査及び細菌検査を行いました。方法と致しましては、2つの水を持って行きました。一つは氷を作る5時間前の水、そしてもう一つは一旦それと同じ水で氷を作り、その氷を溶かした水です。それを18項目に及んで検査致しました。検査は一度のみならず、数回繰り返します。
このデータの主な成分を資料1に記載致しました。この表について少し説明をしたいと思います。氷を作る過程において、
水の中に入っていた不純物は、本当に無くなるのか?
これは本当だったのです。しかも驚くべき程、不純物は減少していたのです。

表を見ますと、見慣れない科目がずいぶんと出てきますので、簡単な説明を加えておきます。
(1)硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
地中には、人や動物のし尿や排泄物、又生活用水などから出来る、アンモニア性窒素が含まれています。そしてこれらは地中のバクテリア微生物によって、段階を経て分解され、安定します。これらが多量に含まれるという事は、汚染が進んでいる可能性を示すものです。又、活魚や金魚、熱帯魚等を買っている方は、この硝酸性窒素という言葉を聞いたことがあると思います。水槽の中では、魚の排物や餌の食べ残しで出来たアンモニア性窒素をバクテリアが分解し、亜硝酸性窒素の残留をなくしているのです。そして魚の住める水にしているのです。亜硝酸性窒素を多く含む水は危険なのです。特に乳児のいる家庭では、1L中、20mg以上の場合は要注意です。ここで表を見ると原水の時、6.5mgあったものがそれを氷にすると0.3mgと驚く程値は下っています。なんと原水の時の約100分の5にも減少していたのです。
(2)塩素イオン
前の硝酸性窒素と同じで、人畜のし尿の混入により増加するので汚染の目安となります。この値も、原水33mgの所、4mgと10分の1まで下っています。
(3)カルシウムとマグネシウム
これらの量で水の硬度を調べることが出来ます。よく軟水とか、硬水というのがこの値です。。硬度が高すぎると、胃腸障害をおこす場合もあります。
 
こうした水質を表すひとつの指標が「硬度」で、水の中に含まれるミネラルのうち、カルシウムとマグネシウムの量で計算します。
硬度=(カルシウム量×2.5)+(マグネシウム量×4)
現在, WHO(World Health Organization,世界保健機構) では、飲料水水質ガイドラインで、硬度を次の4つに分類しています。

(1)軟水(硬度0〜60mg/l)
(2)中程度の軟水(硬度60〜120mg/l)
(3)硬水(硬度120〜180mg/l)
(4)非常な硬水(硬度180mg/l以上)

つまり、軟水と硬水は、硬度120mg/lを境にしています。軟水は軽くすっきりした味わいが特徴で、硬水は重くコクがあるのが特徴といわれています。
ちなみに、農林水産省の「おいしい水の要件」は、硬度100mg/l以下の軟水としています。

原水では98mgの軽軟水度でした。これを氷にする過程によって、3mgと軟水となっています。又この他に、300mgの硬水を製氷実験しました所、同様な結果が出ました。これらが示すように、製氷手段は軟水化するのに非常に有効であると言えます。 


 資料1
水質検査表 (角氷を解かした水の水質検査)        単位 mg/g
検査科目 基準値 製氷前の原水  氷を溶かした水 
硝酸性窒素および亜硝酸性窒素  10mg 以下 6.5 0.2
塩素イオン 200mg 以下 33.0 0.6
有機物等
過マンガン酸カリウム消費量
 10mg 以下 1.4 0.3
0.3mg 以下 0.02 0.01
カルシウム・マグネシウム(硬度) 300mg 以下 98.0 3.0
P・H値 水素イオン濃度 5.8〜8.6 6.4 6.7
色度 5度 以下
濁り度 2度 以下
                検査 :平成12年7月18日 (財)茨城県薬剤師会公衆衛生検査センター において

■ 1-12 水と氷の安全性

 これらの検査データが示すように、製氷方法の違いは多少ありますが、不純物の除去作用が非常に高いということ、そしてすばらしい浄水効果があるという事です。しかし水のうまい成分である、カリウムやケイ酸の値も若干落ちています。
しかし水に一番大事なこと、それは安全という事です。この表は、その安全性をしっかりと伝えてくれます。これらの氷を溶かした水の検査と同じく、市販のミネラルウォーターとの比較や浄水器との検出比較も行いました。ミネラルウォーターを例に挙げますと、現在では数多くのメーカーがこの市場に参入しております。現在の都市部での飲料水の状況、又地下水に於ける水質悪化など、ミネラルウォーターはなくてはならない物になりつつあります。しかしこの中でも、水の旨さだけを追求するために安全性に疑問視するものさえあります。又、水を入れる容器によっては流通過程の過酷な温度変化による酸化等の成分変質も否めません。又、浄水器に於いては、最近の消費者センターの報告の様に表示通り不純物を除去できない器具が多数見られたり、器具そのものに細菌がついてしまうという事が発表されています。
 
さて、私たちの取り扱う氷はどうでしょうか。氷という個体の為に、外部からの様々な影響にも変質しにくく、又冷凍保管の為、細菌の発生、増殖が抑えられます。但し氷を作るときに、細菌が入ってしまっては危険です。大腸菌やコレラ菌は、−50℃でも死滅しないのです。ただ、増殖出しにくいというだけのことです。
このように氷は安全な水として、又保存の水としてもうってつけのものではないでしょうか。私たち業者自身が、より先に氷を見つめ再認識されることを希望したいと思います。又せっかくのこれだけの水を作る氷ですから、消費者の手に届くまで、これまで以上に充分な衛生管理を合わせて願いたいと思います。
 
これは余談ですが、氷の変わった使い方として、次の方法を試されてはいかがでしょうか。
それは氷を溶かした水でいつも飲んでいるお茶を飲んでみることです。作り方は簡単です。ヤカン、鉄びん等に水の代わりに氷を入れてわかし、それでお茶を戴くというだけの事です。それを今までの味と比べてみて下さい。自然なまろやかさをはっきりと味わうことが出来ます。これは水の軟水化、及び不純物の除去作用によりお茶本来のもつうまみ成分を、引き出してくれたのです。同じように、みそ汁や米、更には麺類など調理用として最高級の水を使うことになるのです。水の安全性についても他の類をみないでしょう。これまで氷の砕氷加工時、ロスとして出た小さな氷も捨てられなくなります。但しこのときは作業室内のホコリ等には充分に注意して下さい。氷の表面積が大きくなり、氷自体の温度が低い為,、ホコリなどの吸着が増えます。

近年、135k角氷がに袋詰め氷として形態を変え、市場に戻り確かな位置を築いております。消費者もある時は安くて大量の氷を、又ある時は最高級の本物志向の氷をと求められる様になる思います。これらの多種多様なニーズに応えるためにも、氷業者は更に勉強をし、より良い氷を提供出来るよう力を合わせなければならないと思います。
 
 以上で第一項を終わります。この項では代表的な氷の出来方について説明致しましたが、この方法の他にも色々な製氷方法があります。これらの方法はあとの第三項「冷凍サイクルと製氷技術」の所で色々な実験氷をも含め、説明したいと思います。

第二章 氷業に関わる「熱の知識」

■  氷の疑問 
この章では氷についての疑問、そして氷の熱の事や氷にまつわる様々な物理的な現象、問題に取り組んでみたいと思います。 いつも当たり前のように見ている水と氷。実は氷と水は色々な物質の中でも特に例外な物質なのです。
一般に物質の温度が低くなればなるほど、そして液体から固体に変化すると体積は小さくなります。ところが物質の中でも例外である液体の水は4℃の時、最も体積が小さくなり、それよりも温度が低くても高くても体積は大きくなります。更に氷になるとその体積は急に増えます。その為に氷は水に浮いてしまうのです。これは水や氷の特別な性質の1つですが、現代科学をもってもこの水と氷の全てが解明されている訳ではありません。解明されているのはほんのわずかで、むしろ未だわからない事の方が多いくらいです。私たち氷業者に於いても、これまで当たり前すぎて考えてもみなかった事が実はよく調べてみるとあらためて気づくことが意外と多いものです。
 ではあなたは氷についてどのくらい答えられるでしょうか。一つ一つ考えてみて下さい。

 Q1.氷の中心温度は何度でしょうか。これは水が凍るときの温度ではなく、すでに氷体となった氷の中心部の温度です。
 
 A1.水は0℃で凍り始まるとよく言われています。では凍り続けている間は何度くらいなのでしょうか。又製氷が終わったとき、更に貯氷室に入れているとき、それぞれは何度になっているかという問題です。氷自体の中心温度は凍り始めてから凍り終わるまで0℃です。0℃の水から0℃の氷へと凍り続けている間中、状態変化をしているわけです。理論的にはこういう事なのです。そして全部が凍り終えると、そこから温度はまた下っていきます。
例えばブラインの温度が−12℃とすると、その温度近くまで下っていきます。またその氷を−20℃の冷凍室に入れたとしますと、その氷は−20℃の氷となります。その反対にこの氷を冷凍室から外に出しますと、−20℃からゆっくりと0℃まで戻ってきます。そして0℃の氷から氷が溶け、氷の形が無くなるまで、氷自身の温度は0℃のままです 

 Q2.製氷会社で氷がぎっしり並んでいるのを良く見ると、透きとおった青色に見えます。これはなぜでしょうか。
 
 
A2.製氷工場の貯氷室での、あの透きとおった何とも美しい薄青緑の色のことと、それに良質の氷を割ったときに見られる、輝くような割れた表面のツヤ、これらについてです。これは光の現象によるものなのです。では光について話をしてみたいと思います。
光には赤外線、可視光線、紫外線とあり、その中の目に見える光、可視光線には波長と色があります、波長の長い「赤」から波長の短い「青」までです。
物質の光の透過度により、光を当てると赤色のような波長の長い光は殆どそのままの方向に進みます、ところが波長の短い緑や青は微粒子によって強く散乱されます、そして私たちの目には、その散乱光が入るので透明で薄青緑に見えるのです
 

 Q3.氷を割ったときキラリと光るツヤは、なぜ氷によって異なるのでしょうか。
 
 A3.氷の欠片の美しさは光の屈折率によるもので波長の短い青や緑の方が長い波長よりも屈折率が大きいのです。
ダイヤモンドは物質の中で最大の屈折率をもち光を良く分散させるので、そのカット方法で磨かれたダイヤモンドが七色に輝くのも、光の分散現象のためです。
これを見ても「ダイヤアイス」は素晴らしいネーミングと思います。
氷も屈折率の大きい、そして密度が高く、透き通った薄緑色の氷こそ、最も透明度の高い、艶やかな氷と言えます。 

 Q4.氷は膨張するとよく言われます。それを具体的に説明してみて下さい。
 
 A4.水が氷になる時、膨張する、つまり体積が大きくなる、という事を聞いたことがあると思います、では、実際にはどの様に膨張するのでしょうか?
例えばバケツなどに水を入れて凍らせる場合など、水面の中央付近で盛り上がって凍っていることが見られます。これを説明します
バケツの中の水は水温が下がり氷結点以下になると周囲からそして水面からも凍り付き次第に厚みを増します、水面を氷で覆われ塞がれ、氷は中へ中へと厚みを増して行きます、中心部の水は氷が厚みを増すにつれ、次第に圧力をかけられています。
液体である水はもうこれ以上その形を縮める事は出来ない程になります
しかし、氷はそれでも厚みを増してきています。
すると、その力は一番破りやすい所、即ち氷の厚さの薄いところ、これが水面の中央付近なのです、ここを破って水を噴き出し、内部圧力を逃がします、これを数回繰り返すうちに中央付近は噴きだした水が盛り上がって凍り、やがてバケツ内の水全部が凍る訳です。
 
これは135K角氷でも、同じ様な事が起こるときもあります。
角氷の頭の部分が盛り上がって出来た氷を見ることがあります、もちろん芯抜きの全部が凍らない内に抜いてしまった氷は別です。
エアーパイプをぬいた時からアイスカンの中の未凍結の部分の水はエアーからの少し温かい空気を導入することがなく、四方から徐々に凍っていきます。もちろん第一項で説明したように気泡を取り込みながらという事になります。水面も周囲の冷却熱の影響で凍っていきます。
やがて前項のバケツの中の水同様、氷の真上をやぶって外の出ます。これを繰り返し凍っていきます。この時氷の被膜の出来方によって最上部には指で押せるくらいの大きな気泡が出来ているのを見ることも出来ます。
ビール瓶を開けないまま冷凍室に入れると、この膨張によって瓶が割れるときがあります。しかし割れない方法もあります。割れる場合はビールの口の方が先に凍ってしまった為、中央の液体は凍るときの膨張、圧力がかかり、液体のためにそれ以上縮むことが出来なかったため破裂したのです。
では口の部分を凍らせないで下の方から凍らせたとすると、圧力は上へ上へとかかります。すると瓶の上は液体ではなく気体なのでもっと押し縮めることが出来ます。よってビールが全部凍っても瓶は割れません。

このように氷の膨張は日常においても多く見られます。
寒い冬の朝、例えば外に出ている水道管が凍るくらいの氷点下の気温だとします。外の水道管は凍っても破裂しないで、氷点下になっていない室内にある蛇口が壊れている場合があります。なぜかといいますと、外の水道管の中では水が凍り、その氷は膨張します。そしてその膨張する圧力はまだ凍っていない水の方へと向けられます。パイプの中から蛇口まで外と室内とは関係なくすべて等しい圧力がかけられます。すると一番構造的に弱かった部分、この場合蛇口のパッキンなどが破損するわけです。もちろん老朽化している水道管が室内にあってもその部分が先に破損します。よく夜中は蛇口から水を出しておけば良いといわれますが、それは水流で蛇口を凍らせない為ではありません。ほんの一滴二滴出ているだけで水の圧力は逃げるので破裂しないという事です。

さて、この膨張を雪氷学者はどうみるのでしょうか。次のような言い方になります。
「水が凍ると水分子の様子が変化し、水素結合を形成し、その配列は規則正しい構造となり水素結合に囲まれた部分に隙間が出来、体積が膨張する。」とこういう事なのです。そしてなぜ氷が水に浮くかというと、水は4℃の時密度が最大となる。そして4℃以上では分子運動の為、次第に体積が増える。氷も同様に膨張により体積の変化となり、よって氷は水に浮くという事なのです。氷はどのくらい膨張するかというと氷の膨張率は約11%です。 

 Q5.氷はなぜ水に浮くのでしょうか。これまでにも何度か説明致しました。
  
 A5.前項、氷の体積の膨張を参照して下さい 
 
 
.氷に色を付けられるでしょうか。しかも透明感のある色です。
 
 
A6.この問題については第一章の「氷の成長するメカニズム」の所で説明してありますよう、現在の時点では透明感のある着色は難しいと思われます。
氷結晶は不純物を排除しながら成長するため、例えば色素を添加した水を凍らせても一部に色素が凝集し、その他は透明な氷となるか、氷の結晶の中に色素等、水以外の成分を均一に含有させることは出来ません。
例えばインクを溶かした水溶液を凍らせようとした場合、水溶液の水分子はどんどん氷の結晶となり、不純物であるインクの原料は粒子となって分離し氷の結晶から追い出され同時に気泡と混ざって氷の中に閉じこめられるのです。その為透き通った感じの色が出せないのです。

 ただし、不透明色のカラーアイスを作ることは可能です、私のその後の研究ではパステルカラーを出すことも可能となりました。製造方法は原料水に着色料を入れ良く混合させ、その液体に澱粉の加水分解により得られる物質を入れます、これらを充分に攪拌して弊社アイスメーカー等で凍結製氷させることによって作ることが出来ます。
なお食品衛生法により定められた着色料を使用する事によって口に入れても安心なカラーアイスを作ることが出来ます。更に果汁飲料等においては、解凍したときに均一な溶液が得られ、また、特別な製造設備や、特殊な安定剤等を用いる事なく製造する事も可能です。これらは氷結晶間に均一に色素や糖類を入れることを可能としたものです   
 

 
.真水で作った氷と、塩水で作った氷。さて、どちらが早く溶けるでしょうか。そしてそれは何故でしょうか。
 
 
A7.塩水で作った氷と真水で作った氷はどちらが先に溶けるでしょうか。
同じ量を作るのには塩水の方がずいぶんと時間が多くかかりました。答えは塩水で作った氷の方が先になくなってしまいます。
以外と思われた方も多いと思います。また凍った道路に塩をまくことがあります。もちろん現在では良い消雪材がありますが、これは別々の理由のようで実は同じ事なのです。水に塩を加えると凝固をおこすためにはもっと熱を取り去らねばならなくなり、その為凝固点は降下します。この場合氷の結晶を作るためには水の分子の運動を充分おそくし、また塩のイオンとの結合からも離さなければなりません。
塩は又、沸点を上昇させます。この場合塩による引力から水分子を離して蒸気の状態にするには水分子の熱運動を早くする必要があります。同様の凝固点降下と沸点上昇は、不凍液などに用いることが出来ます。熱量の面からいいますと、塩水で作った氷は真水の氷よりも冷却力に高い効果があります。つまり同じ量ならばより低い温度で冷やす力は大きいという事です。
このため魚などへのふり氷のあと、約15%くらいの塩水をかけたりするのも魚の表面温度を下げ、ドリップを少なくし、品質を保持するためにも有効なわけです。

 

.氷はノコギリだけでなく熱でも切れます。さて、どの様な方法があるでしょうか
 
A8.ここでは氷を熱で切る方法について少しふれてみたいと思います。
これまでのニクロム線でのカットはご存じの事と思いますので、ここでは省きます。このニクロム線での他に、曲線等をも切れる方法があります。これは畜熱板に刃となる部分のうすい金属板を取り付けることで出来ます。

まずヒーターをセットした金属で出来た畜熱板を作り、そこに約3cm位のうすい金属を溶着して、一体のものとするわけです。そしてこれにサーモスタットを取り付けて出来上がりです。但しこの加工技術はなかなか困難です。使い方は氷にただ押し当てるだけの方法で、氷をカットしたり、スジを入れたりする事が出来ます。しかも色々な形、皿の切り抜きや模様付けの曲線も自在に出来ます。
氷を切断するときの温度は畜熱板の厚さにもよりますが非常に弱くてすみ、約40℃位とちょっと温かい位の温度なのです。但し効率が良く、切断速度が速いのは氷厚3cm位までのようです
。 

.氷の割れる方向は予想できるでしょうか。
 
A9.氷加工には切るほかに割る、削るがあります。
私たちはなにげなく氷を割ります。この氷の割れる方向について予想が出来るかという事です。
角氷を横にして約1/3位の所を手引きのノコギリで切っていくとします。そして約2/3位の所まで切ったらノコギリのミネの厚い所でポンと割るとほとんどその割れスジは氷の中心方向に向かって少し斜めに走ります。もちろん全部が全部ではありません。氷にはよく言われるように目があります。それは氷が成長する方向に伴った目です。この目を無視して割った場合、その方向は氷の体積のより小さい方向へと割れます。
 例えばここに30cmの角氷があったとします。ノミで氷の中心に向かって力を入れたとします。何の物理的作用が加わらなければ中心方向に割れるのですが、氷はその反対の体積の小さい方へとスジを走らせます。そして10cmの方の小さいかけらとなってしまいます。
これは体積にかかる力の差によるものなのです。氷に平均に加わった力は、体積の大きい方へ力が集合され、氷を置いておく台などによっても氷に加わる力が分散され、予測出来ない方向へ走る事もあるようです。氷彫刻師はこれらを全て体で会得し、素晴らしい作品を想像し生みだしてくれるわけです。
 

 

10
.氷を冷凍室から出して、急に水またはぬるま湯をかけるとヒビが入ります。何故でしょうか

 A10氷には割れるという所までいかずにヒビが入るという事がよくあります。
原因としては温度差による氷の膨張や衝撃などによるストレス、また製氷温度の低下によるヒビもあります。
しかしこれらのヒビは方向性も発生する場所もなかなか予測が出来ません。
私の所での実験では、まず温度差によるものは例えば−20℃位まで冷凍した氷を外へ出し風や衝撃を与えないようにして、氷体温度を約−4℃位まで上昇すれば例えぬるま湯をかけてもヒビは入りませんでした。しかしそれ以前に風や衝撃を当てるとヒビが入ってしまいました。
 また極端に低い温度、例えば−40℃位でプレート状の氷を作ったとします。この場合には約2cm位の大きさで蜂の巣状のヒビがびっしりと入ります。−20℃位ですと、4cm位の大きさのヒビというようにヒビの大きさは冷却温度に伴って変化します。
いずれにしても、ヒビの方向を予測することはなかなか難しい事と思います。 

11.氷を直射日光にあてておくと、スジ状になってボロボロになります。このスジはいったい何でしょうか。
 
A11.第一章を参照、詳しくは135k角氷の所を開いて下さい。 

12.氷彫刻等を冷凍室に長い期間置いておくと、丸く小さくなってしまいます。氷の溶けた様子がないのに、こうなってしまうのはなぜでしょうか。

A12 .よく冷凍室に入れておく氷、特に氷彫刻などは日が経つにつれて角が丸くなって次第に小さくなってきます。
本来、氷は一旦水になって、それが蒸発するならわかりますが、ここではドライアイスのように氷という固体からいきなり気体に変わってしまうのです。
この現象は冷凍室内の気温が氷点下でより低く入れておく氷の周辺の空気が乾燥状態にある、つまり水蒸気が未飽和状態にあるとき、もちろん庫内気圧も下がっています。このような時に氷にも昇華の現象がおこるわけです。
特に冷凍庫内の冷却器が直膨式のヘアピンコイルよりも、強制対流式の冷却器でしかも冷却面積が小さく蒸発温度が非常に低い場合により多くおこります。
 私たちは常識的に水の状態変化、つまり固体から液体、液体から気体という流れを知っています。又その逆に空気を冷やして液体の水に更に水を冷やして固体の氷という事です。しかし氷と雪は厳密には区別して考えます。氷は水という液体が凍って氷の結晶を作ります。しかし雪は気体である水蒸気が直接空中で冷却され、結晶を作るのです。もちろん水蒸気の中の水分の結晶という事です。
 

■ 2-2 氷と熱量
では次に氷とそれにまつわる熱と熱量について話を進めて行きたいと思います、少しやっかいな数式などが入りますが、資料の方を見ながら進んで下さい。細かいことより全体的なことを知っていただければよろしいかと思います。
 
私たちの身の廻りは熱に取り囲まれているといっても過言ではありません。
ただそれをわざわざ意識して暮らしているわけではありません。水をどんどん冷やし、更に冷やすと氷になります。その冷やす熱のエネルギーも計算することが出来ます。そのようなことによって色々な事までもがわかってきます。
私たちがお客様との対話の中にもお客様から何気ない質問をされる時があります。例えば「飲み物を100人分、2時間くらい冷やすのにどのくらいの氷の量があればいいのか?」また、氷柱、または彫刻1本で何時間もって、どのくらい涼しくなるか。これは数字ではなかなか答えられません。
そして氷に塩をふれば長時間溶けませんか?など、この他にもいろいろと聞かれます。氷販売店の従業員の方とお客様との話を聞いていると、その答えもどうにか合っているようです。長年の蓄積された経験とプロとしての実績からでしょう。
しかしこれらの1つ1つの話にも調べてみるときちんとした数字的裏付けから成り立ちます。もちろんそんな面倒なことをしなくても向こうから来たお客様には氷は売れます。しかしこれは氷を売ったではなく「売れた」の方です。単なる店から客への氷の移動です。もちろんそれも大切な事なのですが、氷はそのお客様にとってどんな使い方、このくらいの量が一番経済的か、また他にどんな種類があり、どれが合うかなど的確な情報をサービスとし、私たちの仕事は氷という商品の持っている特徴、すなわちものを冷やす、飲料として飲む、嗜好品として味わう、清涼感を与えるなどの機能をいうものをお客様に提供するものかと思います。

では先程のお客様の質問のうち、「飲み物を冷やすのにはどのくらいの氷の量が必要か」という事から入っていきたいと思います。
例えば60gのプラスチックの容器を持ってきてビールを冷やすのにどのくらいの氷を入れればよいかという問題です。私たちは日常的にだいたい氷一貫目のものを4本くらい入れて、「これで良いでしょう、後はビールと水を入れておけば冷えますよ」と感じで答えます。さてこれが本当かどうか検証してみます。
まず熱の項では是非とも知っておいて戴きたい事があります。それは1gのものを1℃上げるのには1カロリーの熱量が必要という事です。つまり1kgでは1kカロリーです。
例えばここに10gの水、ここでは10kgにしておきます。この10kgの水を5℃上げたとするとどのようにすれば熱量が出るでしょうか。
熱量の計算は(水の重量×移行した温度差)、これで出来ます。
ここでは5℃上昇したので10kg×5℃で50kカロリーという事になります。温度を下げるときの熱量の計算もやはり温度差ですから同じです。 

■ 2-3 氷と熱量計算

 氷の入ったものを計算する前にちょっと練習してみます。常温の水に冷たい水を入れたとき、何度になるかを計算してみます。
ちょっとややこしくなるので資料3を見ながら聞いて戴きたいと思います。

20℃の水が30kgあるとします。これをAそして5℃の冷たい水が20kgあるとします。これをB。これらを混ぜると何度の水になるかという問題です。

Aの持つ水の熱量を0℃を基準に考えると。30Kg×20℃=600kcal----@
 Bの持つ水の熱量を0℃を基準に考えると、20Kg×5℃=100kcal----A
 AとBを混ぜそれをCとすると熱量は @+A=600cal+100cal=700kcal-------B
またCの重さは20kg+30kg=50kg----C
Cの1グラムあたりの熱量はB/Cで700kcal/50kg=14cal/g
0℃を基準に考えているので Cの温度は14℃となります
答えは
 14℃の水が50kg
です

それでは次に氷を入れることにします。ここでもう一つ重要なことを知っておいて下さい。
氷には潜熱というものがあります。1gにつき、80カロリーの熱を放出しなければなりません。つまり、水は氷よりも80カロリーの熱を余分に持っているという事です。逆に氷が溶けるときも同じく、80カロリーの熱をうばいます。これらの凝固熱や融解熱を潜熱といいます。
0℃の水が0℃の氷に変わる状態変化のエネルギーなのです。氷の入った計算の時はこの80カロリーという熱量が出てきますので資料4と5を見てよく覚えておいて下さい。
例えば10kgの水を1℃下げるのには10kg×1で10kカロリーの熱量が必要なのですが、0℃で10kgの水を氷にするのには80カロリー×10kgで800kカロリーとなり、水を1℃下げるのに比べ、水を氷にするというのは何と80倍ものエネルギーを必要とするのです。氷を溶かすときも同じエネルギーが出ます。氷を作るという事は、非常に多くの熱量、つまり電気料が必要になるという事です。
 
さて本題に入ります。
まずポリ容器には缶ビールと水、合わせて40kgになるとします。この時のビールも水も25℃とします。これを冷やすのに
  
  
してしまいます。梅雨時のしめった空気ならなおさらの事です。パイプに霜がつきすぎると、パイプの温度がいくら温度の低いガスを流したとしても霜という壁を作ってしまうので後から入ってくる空気を冷やすことが出来なくなってしまいます。
通常の冷凍室の冷却器は定期的に霜取りを行うよう、設計されています。しかしドアの開けっ放し等、機械が予期できないほどの霜がついた場合、「温度が下がらない」「故障だ」とあわてることになります。
 庫内の品物を中に入ってから考え考え出すようでは、大変なロスとなってしまいます。まず何を出すかを入る前に整理し、計画的に入出庫するようにいつも心がけるべきと思います。 

資料(2) 密度(g/cm3) 
  温度 密度  
    0℃    0.917  
    0℃    0.99984 +3.98℃
で最小
  +4℃    0.99997
  +15℃    0.99910
  +99℃    0.95906
海水   1.01〜1.05  
空気      0.0012  
※密度とは物質1cm3あたりの質量(g/cm3)  密度=質量(g)÷体積(cm3


資料(3) 
その他の物質の密度 
個体(20℃)
g/cm3
砂糖  1.59  19.3
食塩  2.17  10.5
ガラス 2.4〜2.6   8.93
水晶  2.65 アルミニウム   2.69
液体
g/cm3
灯油 0.80〜0.83 水銀(0℃)  13.59
気体(20℃)
g/l)
プロパン  2.02 二酸化炭素  1.977
  ※訂正  物質の密度、金、銀、水銀の値が間違っておりました。  お詫びして訂正いたします  2000/06/05
      


資料(4) 比熱  
物質名 温度 比熱 物質名 温度 比熱
0℃ 0.47 ゴム 20〜90℃ 0.3〜0.5
15℃  1.00 木材 20℃ 0.30
空気 20℃  0.241 0〜100℃ 0.28〜0.3
水蒸気 100℃ 0.492 0℃ 0.104
海水 17℃ 0.94 アルミ 0℃ 0.211
      0℃ 0.091
※ 比熱とは、物質1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量 (cal/g℃)

では次の項からは現場に戻って実践的な話の内容になります。

       以下制作中です。少しお待ち下さい   


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