蒼鷺(2000)

 

@ 藍川由美=トーマスインディアミューレ、岡田知子、黒木岩寿

  20CM-641,2 2000.10.28

 

北海道を歩くと蒼鷺には苦労せずにお目にかかれる。下の写真は

知床五湖で撮った蒼鷺の姿だ。蒼鷺の特徴は他の鳥とは違い岩の

上などにじっとして長時間立っていることだ。えさをじっと狙っ

ているのだろうか。その姿は超然としていて見るものを惹きつけ

る。作詞の更科氏は釧路川の近辺が故郷と聞いている。釧路川と

いえば丹頂だが、その丹頂よりも蒼鷺を題材に選んだのはその姿

と自らの生き様を重ね合わせてのことだろう。詩にも孤高といお

うか一徹といおうか、そんな氏の生き様が窺われるのである。曲

はソプラノ、ピアノにオーボエとコントラバスが加わるという変

わった編成だ。詩の寒々とした、けれども芯の一本通った雰囲気

をうまく醸し出している編成といって良いだろう。この曲は伊福部

歌曲の中では珍しくPPPからffまで強弱の変化がとても激しい。特に

前半の部分の最弱奏の部分は全伊福部音楽の中でも特徴的な部分だ。

思うに伊福部=更科というコンビでの作品はいくつかあるが、詩へ

の没入、感情の移入という点ではこの「蒼鷺」が一番ではなかろう

か。81歳で故郷の流れのそばで眠りたいといってこの世を去った

更科氏。その81歳を過ぎてこの曲を作曲した老大家の心中を私の

ような若輩ものには推し測ることは出来ないが、これが伊福部の感

情の吐露だといっても言い過ぎではないだろう。これは伊福部歌曲

のひとつの到達点と言っても良いのではないだろうか。

 

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