交響譚詩(1943)

@ 山田一雄   東京交響楽団         CZ30-9017 1962

A 芥川也寸志  新交響楽団          FOCD-3222 1977.8.8

B 広上淳一   日本フィルハーモニー交響楽団  KICC-0175 1995.8,9

C 原田幸一郎  新交響楽団          LD32-5077 1994.4.23

D 手塚幸紀   東京交響楽団         TYCY-5369,70 1984.2.21

 

私の伊福部昭入門曲である。当時(昭和53年)はこの曲のレコードが皆無でスコアだけあるといった状態

だった。先輩からFM放送からの録音をダビングしてもらいテープで聞いたものだった。私の高校のブラス

バンド部では夏のコンクールの自由曲にこの「交響譚詩」の第1譚詩を選曲して予選に臨んだ。私はオーケ

ストラでコントラバスをやっていた関係で手伝いに駆り出されたのだが、その当時はすごい曲があるものだと

カルチャーショックをうけたものである。原曲はもちろんオーケストラなのでブラスバンドの部長が編曲したの

だが、時間が規定内に収まらないのであちこちカットして演奏した覚えがある。今思うと作曲者に無断で編曲、

演奏してまずかったのかなあと思うが、その当時はそこまで頭がまわらなかったようである。結果は予選落ち。

よき青春時代の思い出である。この曲の演奏で面白かったのは原曲ではチェロがやるバルトークピチカートで

ある。これは通常のピチカートよりも弦を強く叩きつけて「バチッ」という音をさせる奏法なのであるが、これを

コントラバスでやったのである。当時はおもしろくてそれこそバチバチ力任せにやっていたが今思うと楽器には

よくない奏法であった。さて演奏であるが文句なし山田=東響、これしかないという演奏だ。録音は昭和37年と

かなり古く、聴いていてもそれがわかるが、さすがに初演者だけあって演奏はピカイチといえる。どこがいいかと

いうとまず全体の統一感が素晴らしい、それとテンポもいい。非常に緊張感のある演奏なのである。交響譚詩

の「譚詩」とはバラードの訳語(広辞苑)だそうだが、山田の演奏は「物語」を感じさせてくれる演奏だ。また、弦 

やハープの細かい動きがこの曲は重要なのだが、それがきちんと聞こえるのもこの録音のすごいところである。

こころに響く名演奏だ。ところで山田一雄はこの録音のころは山田和男だったらしくCDもそうなっている。改名

したらしいのだが、プロ野球選手ならともかく指揮者では珍しいのではないかと思う。このほかの演奏をみてみる

手塚=東響もいい演奏だ。この演奏で残念なのはテンポが突如曲の流れに反して遅くなることで、一番顕著な

のは第1譚詩35番のソロヴァイオリンにのってオーボエがメロディーを吹くところがあるのだが、ここを朗々と唄

いすぎていて曲の流れからすると違和感を感ずるのである。手塚幸紀は高校の先輩で一度高校のOBオケを

指揮してもらったことがある。ぜひまた伊福部作品の新録音をリリースしてもらいたいものである。

 

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