ファンタジア(幻哥)(1980)

 

@ デボラ ミンキン(バロックリュート) FOCD3144  1985.4.9

A 野坂恵子(二十五絃筝)       TYCY5488   1996.1.29

 

原曲は「バロックリュートのためのファンタジア」。野坂恵子の二十五絃筝

のためにそれをリライトしたのが「幻哥」である。幻哥とはまぼろしの歌と

いうような意味の作曲者の造語であろう。もともとは東京音大でバロック

リュートを教えていたデボラミンキンの為に書かれた曲だ。リュートという

楽器は16世紀から17世紀にかけてのヨーロッパ音楽の重要な位置を占

めた楽器である。いわゆるバロック音楽の中枢を担った楽器といってもよ

い。J.S.BACHの頃にはすでにバロックリュートは廃れ気味だったとの

ことであるがBACHにもリュートのための組曲が何曲か残されており、イ

エペスなどが優れた録音を残したりしているのだ。最近は古楽器による演

奏が見なおされて、このリュートの音色もかなり一般的になり、つのだたか

し氏の「シチリアーナ」など人気の高いCDも現れた。ただしリュートの曲と

いっても十弦ギターで代用している場合もあり、その音色も楽器ごとに微妙

に違うので注意が必要だ。さて、演奏だが曲想からいって@をベストとしたい。

冒頭から心憎いほど渋い演奏だ。寂びれた海岸沿いの街を物憂げに独り歩

く訳ありな男……ってな感じがする演奏だ。男は市川雷蔵扮する眠狂四郎が

ピッタリなキャスティングである。