ジャコモコジャンコ(1951・1984)

(日本の太鼓)

@ 手塚幸紀=東京交響楽団   K28G-7189 1984.2.21

A 伊福部昭=新星日本交響楽団 TYCY-5217,18 1991.12.13

 

ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」を聞いているとほんの一部分

だがこの「ジャコモコジャンコ」に似ている部分が出てくる。伊福部の

音楽は少なからずストラヴィンスキーの影響を受けていることを考え合わ

せてもこれは興味深い事実だ。ジャコモコジャンコは「日本の太鼓」という

副題からも分かる通り岩手県の鶴羽衣に伝わる鹿踊りに取材したバレエ音楽

である。下の写真のような衣裳を着て太鼓を叩きながら踊る。笛や唄などの

伴奏は無く、太鼓を打ち鳴らしながら踊るだけのものであ

る。宮沢賢治もこの鹿踊りが大好きだったようで「鹿踊り

のはじまり」という作品を書いている。実際のバレエでは

一人の王鹿、一人の女鹿、六人の男鹿が太鼓を打ち鳴らし

踊る。伊福部は実際に鶴羽衣までこの鹿踊りを見に行って

おり、そのときの感想を「恰も縄文式土器に接する思い」

という風に表現している。さて、演奏のほうだが普通に選

ぶとすると@の演奏をベストにするのが常識的だが今回は

敢えてAを推したい。なぜなら気迫が違うのだ。Aの演奏

 

は冒頭から太鼓のバチが飛ぶほどの熱演だ!馬鹿にしているのではない。本当

にそう思うのだ。作曲者自身の演奏は手塚盤に比べるとかなりゆっくりめのテ

ンポをとっている。第一楽章はデータによるとAndantinoとなっていて手塚盤

はほぼそれに忠実なテンポとなっているが伊福部盤はそれより二段階ぐらい

ゆっくりめのLarghettoだ。他の楽章も手塚盤が譜面に忠実なテンポをとって

いるのに対して、非常にゆっくりめの演奏となっている。作曲者の指揮だから

これが本当のこの曲の姿なんだとは私は思わない。多分手塚の演奏が音楽的に

は譜面に忠実なのだろうし、この曲の魅力を十分に引き出しているのだろう。

しかし伊福部盤はそれを超えたものがあるのだ。それは演奏者の作曲者に対

する熱い思いと尊敬が演奏の隅々に溢れているのだ。技術的には太鼓が合って

いないとか問題はあるものの、それを補って余りあるほどの熱演である。さて

@の手塚盤はLPで現在は廃盤になっている。カップリングの交響譚詩は一時

CDで再販されたことがあるがこのジャコモコジャンコはそのとき発売されな

かった。ぜひ復刻してもらいたいものである。

 

 

 

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