リトミカ・オスティナータ(1961)

@ 若杉弘=小林仁    読売日本交響楽団 KVX5506(VDC5505) 1971.1.5

A 井上道義=藤井一興 東京交響楽団 FOCD3143 1983.2.10

 

以前大学生のとき大学オケの指揮者をやっていただいていた家田厚志氏と飲みながら

伊福部談義をしていて、伊福部昭の最高傑作は何だという話題になった。ふたりともトップ

に上げたのがこの「リトミカオスティナータ」であった。この曲名は直訳すれば「リズムが執拗

に反復される」という意味である。この作品は伊福部昭にしては珍しく昔からレコードもスコア

も両方手に入る作品で、私も高校生のときからよく聴いた曲だった。この曲のすごいところは

演奏の難しさにあるといっていい。だいたいアマチュアオーケストラでピアノコンチェルトをやる

とソロとオーケストラが合わずに「集合地点」とか名づけてむりやり合わせるものだが、この曲は

多分プロが演奏してもオケと合わせるのが難しい作品だ。それをよく物語るのがAの井上=藤井

の演奏だ。個人的にはよくライブでやったなというのが正直な感想である。ピアノのソロも超絶技巧

である。伊福部のピアノの使い方はどちらかというと打楽器みたいな使い方をするがピアノ弾き

泣かせなのは間違いはない。高校のとき芸大に進んだ先輩にこれをちょっと弾いてもらったが、

テクニックとともに体力が相当いるとの感想だった。あとスコアをみていて面白いのが小節ごとに

変わる拍子であろう。中間部のAdgio assai からは1小節ごとに 4/16 6/16 4/16 7/16 6/16 7/16

8/16 という感じで拍子が変わる。指揮者はどういう指揮をするのだろうか。さて演奏は文句なしで

若杉=小林である。先ほどもいったとおりこの曲はライブでは難しいのではないかと思う。しかも、

井上=藤井の演奏はテンポも速いのである。もうちょっとじっくり聴かせても良かったのではと思って

しまう。若杉=小林の演奏は名演中の名演である。なんといってもオーケストラとピアノのコンビネー

ションがいい。一糸乱れぬ演奏とでも言おうか抑制されたテンポで確実な演奏なのである。オーケストラ

も細部にわたって丁寧な表現を心がけている。特にパーカッションの小道具がこの曲では重要なのだが

非常によくできている。この曲で面白いのが最後の終結部の部分でオーケストラとピアノが突如3/8G.P.

で全休止するところである。この発想は伊福部昭にしかできない芸当といってもいいだろう。録音から

30年近く経過しているが、当分これを超える演奏は現われないだろう。多分弾こうとするピアニストも

いないと思うが。

 

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