交響曲第8番 変ホ長調
Symphonie Nr.8 Es-dur
中学3年のとき高校合格記念でショルティのマーラー交響曲全集を大枚はたいて購入したが、その時の目玉は
なんといってもこの曲だった。LPに針を落としてあのオルガンの鳴り響く冒頭を聞いた瞬間は涙が出るほど
感動したものだった。そして今度は高校3年のとき大学の合格発表を見に行って運良く合格していたので、その
帰りにヤマハの銀座店で記念に買ったのがこの曲の輸入版スコアだった。当時の値段で6000円。はっきり
いって清水の舞台から飛び降りるぐらいの高価な買い物だった。あれから30年も経つがスコアというのはいい
紙を使っているのかとてもいい状態を保っている。さて、それぐらい思い入れのある
曲なのだが、恥ずかしながら肝心のゲーテの「ファウスト」を未読であったので今回
いい機会なので全篇読破をした。相良守峯訳の岩波文庫版だが訳が格調高すぎてかなり
苦労した。それでも第1部はまだ話しが分りやすくて読んでいてもおもしろかったのだ
が、第2部は難解でなにがなにやらさっぱりという感じ。巻末の註釈をそのつど見ながら
読み進めるため肝心の最終場面にたどり着くまで相当な期間を要してしまった。しかし、
そんなに苦労して読み終わったわりには、なぜマーラーがこの最終場面を本作第2部に
持ってきたのかという疑問が明快になることはなかった。いろんな評論家や学者が解説を
しているが、自分なりの解釈として「私が天に召されるときはこうありたい」という
ことなのかなあと思っている。ファウスト博士が天に召されるまでの紆余曲折を自身
の人生と重ね合わせたのかどうかは定かではないが、作曲家にとってのひとつの
理想がここにあるのではないだろうか。いずれにしても八万の神の国の住人には
いまひとつピンとこない話である。あとどうでもいい話しなのだが通常独唱のソロ
はスコアの指示通り8名
(S3MS1A1T1Bar1B1)なのだが、スコアを見るまでもなく3人目のソプラノはほとんど出番がない。なので演奏によっては第1ソプラノが栄光の聖母を歌って7名のソロでやり繰りしている盤が存在
する。私が聴いた中ではミトロプーロス、マゼール、シェルヘン、スヴァトラーノフ、フェドセーエフの5つの
盤がそうしていた。人件費の削減が目的かどうか知らないが、もしマーラーが知ったらスコア改定の際こんな
註釈を付けたかも。※ここのソプラノを第1もしくは第2ソプラノで代用することは絶対にしないこと!
お薦め度 |
ジャケット |
演奏者 |
ちょっとひとこと |
★★★★★ |
テンシュテット
ロンドンフィル |
第2部が素晴らしすぎる。特に女声合唱の美しさが出色。透き通るような美しさはまさに天上の音楽そのもの。児童合唱の出来もピカイチ。畳み掛けるような迫力もいい。文句なしのベスト盤。ちなみに第1部は普通。 |
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★★★★★ |
ショルティ
シカゴ響 |
全篇を通じてほぼ完璧な演奏。録音も完璧で各パートも鮮明。ルネコロの絶唱が素晴らしく、独唱陣、合唱陣、児童合唱ともに高水準。他の演奏同様機械的な嫌いはあるが名演である事に間違いはない。 |
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★★★★★ |
ハイティンク
アムステルダムコンセルトヘボウ管 |
技術、録音、迫力といったすべてのものが申し分ない名演奏。特に全体を通して力みが全くなく自然体での演奏が素晴らしい。 |
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★★★★ |
ジンマン
チューリッヒトーンハレ管 |
2009年の最新録音。録音が抜群によく非常に透明感のある演奏に仕上がっている。特に合唱陣が素晴らしく感動的な演奏をしてくれている。 |
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★★★★ |
ブーレーズ
ベルリンシュターツカペレ |
全体的に密度が濃く、どっしりとした重量感のある演奏。特に第2部は統一感があり骨太である。独唱陣も各人味わい深い演奏だ。 |
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★★★★ |
ホーレンシュタイン
ロンドン響 |
1959 年の演奏で一応ステレオとなっているが録音は今ひとつ。ただ演奏のほうはスケールが大きく雄弁でかつドラマティック。ライブであるが非常に高レベルで感動してしまった。 |
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★★★★ |
バーンスタイン
ロンドン響 |
VPO 盤の方が評価が高いが私はこっちの方が好き。全体的に重量感のある骨太な演奏。オルガンがもの凄い。独唱陣も合唱もVPO盤よりはこちらの方が上手い。 |
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★★★★ |
マイケルティルソントーマス
サンフランシスコ響 |
第1部は迫力十分。第2部もテンポをゆったりととって朗々とうたっている。特に中間部と神秘の合唱が美しい。 |
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★★★★ |
ベルティーニ
ケルン放送響 |
サントリーホールにおけるライブ録音。非常にオケが上手く録音も素晴らしい。特に第2部の贖罪の女以降の中間部が冗長にならずに飽きのこない演奏に仕上げている。 |
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★★★ |
クーベリック
バイエルン放送響 |
第1部は生命力みなぎる怒涛の演奏。迫力が違う。第2部はテンポがよく贖罪の女以降もだれることなくよいのだが、女声独唱陣が今ひとつ丁寧さに欠けるのが難点。 |
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★★★ |
コリンディビス
バイエルン放送響 |
第1部はどっしりした演奏で立派。第2部もバランスがよくとれておりライブとは思えない高水準な演奏である。 |
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★★★ |
ラトル
バーミンガム市響 |
第1部は透明感のある合唱が特徴だが中間部のテンポが快速で重量感のない演奏になっている 第2部はやさしい男声合唱と弦の美しさが特徴的だ。 |
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★★★ |
山田一雄
都響 |
ペットが落ちるとか児童合唱が1小節ずれるとか致命的なミスはあるもののそれを補って余りあるヤマカズの熱い演奏に拍手。個々の技術的な問題やオーケストラの統制という点では難あり。 |
|
★★★ |
バーンスタイン
ウィーンフィル |
第1部は合唱が濃い。ただテンポが揺れすぎで流れが澱んでいる。第2部は冒頭から劇的な演奏で非常に印象的。女声独唱と児童合唱の出来映えもよかった。 |
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★★★ |
エド・テ・ワールト
オランダ放送フィル |
非常にスケール感のある演奏。ワールトは全集を出しているが聴くのはこれがはじめて。マリア崇拝博士が美しくて素晴らしい。アルトは今ひとつ。 |
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★★★ |
ショウ
アトランタ響 |
アメリカのオーケストラらしく輝かしい音色と迫力で迫る好演奏。ラスベガスのような華やかさだ。ただ児童合唱が今ひとつで録音バランスも部分的に良くない。 |
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★★★ |
ヴィト
ワルシャワ国立フィル |
ヴィトのマーラーはどれも高レベルだが、8番も録音抜群で迫力のある演奏だ。ただ第2部の独唱陣が今ひとつのところがあり残念。 |
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★★★ |
ノイマン
チェコフィル |
第1部はテンポにキレがなく今ひとつ。一転して第2部は非常に高レベルで録音もいい。
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★★★ |
ギーレン
南西ドイツ放送響 |
第1部は迫力もテンポもいい。第2部も全体的に高レベルで特に前半は非常に厚い響きを聴かせる演奏。 |
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★★★ |
シャイー
ロイヤルコンセルトヘボウ管 |
第1部はゆったりしたテンポだが統制のとれた演奏。第2部も高レベルだが特にマリア崇拝の博士がとてもよく、印象的だ。 |
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★★★ |
小澤征爾
ボストン響 |
第1部は平板で面白みに欠ける。第2部はそこそこ聴ける演奏。テノールのリーゲルが非常にいい。最後の盛り上がりもなかなかのものである。 |
|
★★★ |
ギーレン
フランクフルト歌劇場管 |
ライブ録音。第1部はテンポ快速で迫力十分。ただ第2部は全体的にあっさりしすぎ、特に冒頭はもうすこしじっくり聴かせてほしかった。 |
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★★★ |
シノーポリ
フィルハーモニア管 |
全体的には整った演奏で特に第1部は重厚だ。第2部の児童合唱の音程が悪いのが残念。 |
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★★★ |
小林研一郎
日本フィル |
全体的に録音バランスが今ひとつで独唱陣もちょっと苦しいかなという演奏。神秘の合唱の音程の悪さ、最後のオルガン2小節フライング等難ありありだがコバケンの熱さに思わず目頭が熱くなるのも事実。 |
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★★★ |
インバル
都響 |
ちょっと合唱が弱い。あと録音バランスもよくない。インバルの歌声が耳障りでしかも音程が非常に悪い。ただ、室内楽的な響きが随所に見られ、特にマンドリンの音色がこんなに美しく聞こえるのはこの盤だけだ。 |
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★★★ |
ケントナガノ
ベルリンドイツ響 |
全体にゆったりペース。第1部はテンポが不自然に遅くなる。弦の音量も不足気味。第2部は児童合唱の出来が今ひとつだが全体的には高レベル。 |
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★★★ |
ヤルヴィ
イエーテボリ管 |
第1部はテンポがよく勢いがあるがオルガンが浮いているのとソプラノ独唱が今ひとつ。70分を切る演奏だが第2部もそんなに早いという印象はない。ただ各部への入りが雑で丁寧さに欠ける感じはした。 |
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★★ |
セーゲルスタム
デンマーク国立放送響 |
オルガンの響きがとてもいいがテンポは重すぎで今ひとつ。第2部の各部分への移行時に音が途切れるのに違和感がある。 |
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★★ |
ストコフスキー
フィルハーモニア管 |
第1部はステレオでないのが残念なぐらい充実した力強い演奏。ただ第2部の前半、冒頭部があっさりしすぎなのと独唱合唱とオケの息が合っていないのが非常に残念。後半は持ち直してくるのでなおさら。 |
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★★ |
ベルティーニ
都響 |
全体的に走りすぎといった感じ。独唱陣のレベルが今ひとつ。
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★★ |
フリプセ
ロッテルダムフィル |
録音がモノラルであまりよくないのが残念。演奏はそれなりのレベルなのでステレオだったらもう少し高評価だったかも。 |
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★★ |
ゲルギエフ
ロンドン響 |
せっかちで落ち着きのない演奏というのもさることながら録音がそれ以上によくない。特にホールのせいか合唱の残響が残りすぎ。また独唱陣の出来も今ひとつ。 |
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★★ |
インバル
フランクフルト放送響 |
インバルの他の盤と同様控えめで繊細な演奏。パンチが足りないという感じでもの足りない。 |
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★★ |
マゼール
ウィーンフィル |
第1部はテンポがゆっくりすぎて流れが悪い。音楽に奥行きがなくぶつ切りな感じ。第2部は テンポは遅いままだがどっしりとしたスケール感が感じられる。テノールがしょぼくて残念。 |
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★★ |
ミトロプーロス
ウィーンフィル |
モノラルなので Tuttiはちょっと苦しいかなという感じ。テノールが浮いているのと、バックに雑音?らしきものが入っているのが非常に耳障りだった。 |
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★★ |
若杉弘
都響 |
第1部は録音に難あり。各パートがバラバラに聞こえてくる。第2部はそれでもかなりまとも。独唱者の声が聞こえづらく、迫力も不足している感じだがオケの統制がとれており演奏自体はいい。 |
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★ |
アバド
ベルリンフィル |
第1部はいいが第2部はよくない。合唱が全体的に弱く特に児童合唱が良くない。演奏も雑で迫力不足だ。 |
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★ |
クーベリック
バイエルン放送響 |
こちらはライブ盤。基本的には変わらないのだがライブの分だけ綻びがかなり多い。特にテノールの出来はかなりいまいち。 |
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★ |
スヴァトラーノフ
ソビエト国立放送響 |
ロシア人の指揮するマーラーはどれもこれも快速だと思っていたが、これはかなりゆったりした演奏で非常に意外。独特な表現が多い。児童合唱が良くなく残念。 |
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★ |
朝比奈隆
大阪フィル |
オール関西の意気込みは感じられるが技術的に難あり。特に全体的に音程が悪すぎである。児童合唱がとてもかわいいのが救い。 |
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★
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シェルヘン
ウィーン響 |
結構手に入りにくくてオークションなどでは高値がつく盤だが演奏は常識的で拍子抜け。第2部に入ってから若干シェルヘンらしくなってくるがそれも中途半端。最後のほうはひどくて聴くに堪えない。 |
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× |
フェドセーエフ
モスクワ放送響 |
テンポが早くてしかも雑。独唱もおそろしく下手。指揮者の意図が良く分らない。 |