マーラー ウィーン紀行 その3
2010.10.3-10.7
ウィーンでの初日はグリンツィングに始まりウィーン各所のマーラーゆかりの地を巡りましたが、2日目は午前中は普通の観光をして、
夕方から今度はシュターツオーパ周辺にあるマーラーゆかりの地を巡ることにしました。まずは
Rennwegの通りにあるマーラーの住居を訪ねてみましょう。ここは宿泊したホテルのすぐそばでしたので割合簡単に見つかりました。このマンションはオットーワグナーの設計
によるもので世紀末建築の代表作としても有名な建物です。
(5階のワンフロアーを使っていたとか) (マンションの入り口には記念のプレートも設置されています)
マーラーは
1898年から1909年までウィーンでの生活拠点をここに置いていました。100年以上経過していますが非常に堅牢な造りでまったく古さを感じさせない建物です。マーラーはここからシュターツオーパまで毎日通勤していたわけです。通勤前にマーラーは妹の
ユスティーネとここからベルヴェデーレ宮殿を一周する散歩コースを毎回4周していたとのことですが、わたしも実際1周してみましたが
相当な距離がありました。だいたい早歩きで1周20分はかかるかと思われます。ちんたら歩いたら30分以上でしょう。これを4周です
から1時間以上はかかる計算ですね。ヘーエヴァルテからの徒歩にしてもこの散歩にしてもマーラーの健脚ぶりは相当なものだと思い
ます。ただ実際この散歩道、歩いて見ますとベルヴェデーレの宮殿は常に見えるわけではなく、そんなに眺望のいい道とはいえません
(Rennwegの通り 左側がマーラーの住居) (ベルヴェデーレ宮殿上宮) (PrinzEugen Strasse 右側が宮殿)
でした。特に時計と逆周りで歩くと帰りの下り坂は宮殿側がほとんど壁で面白くない散歩でした。さて、リング通りに向かいシュターツオーパに
向かう道を歩いてみましょう。ここはマーラー監督の通勤路となります。シュターツオーパの手前に
Mahler Strasse という通りがあります。ここはアルマの回想にあるマーラーを記念してその名を冠しその後ナチス時代マイスタージンガー通りと改名されてしまったという通りと同一かどう
かはちょっと分かりません。しかし、もし同一なのであれば、また元に戻されたということなのでしょうか。ただメインの通りからは一本奥まってい
て、オフィスビルが建ち並ぶちょっと地味な通りでした。通りにはどういう関連があるのかは分かりませんが
Gustav Mahler Hof というビルもあって(通りの標識) (そんなに長い通りではない 正面がオペラ) (直訳するとグスタフマーラー館)
興味を惹かれます。ここの通りをまっすぐ歩くとシュターツオーパに出るので、マーラーはもしかしたら、ここを毎日通っていたのかもしれません。
さて今夜はシュターツオーパでプッチーニの「トスカ」を見ることにしました。マーラーのレパートリーはどちらかというと偏っていてモーツアルトと
ワーグナーに比重が置かれていたように思われます。国際マーラー協会のホームページではマーラーが音楽監督として在籍していた期間の
演目カレンダーが見ることができますが、モーツアルトとワーグナーが多いですね。プッチーニも振ることは振っていますが「トスカ」は振って
いないようでした。シュターツオーパは本当に立派な建物でウィーンの街のランドマークといっても過言ではないでしょう。そこの音楽監督なの
ですから彼はウィーンのスーパースターだったのだと思います。日本だと巨人の監督やサッカーの代表監督みたいなものかもしれません。
そんなものと一緒にするなと怒られそうですが、何かあると新聞やマスコミで叩かれる立場は何となく似ているような気がするのは私だけ?
(昼間のシュターツオーパ) (夜の雰囲気は最高です) (カフェインペリアルの入り口)
さて、オペラが始まるのは19時30分で、開場は1時間前ですので、ちょっと時間があります。なのでマーラー監督がよくお茶をしていたという
ホテルインペリアルのカフェに寄りました。ホテルインペリアルは五つ星の超高級ホテルなので泊まるのはちょっとという感じですが、カフェは
そんなに敷居が高くなく普通に利用できる感じです。ウィーンの代表的なコーヒーは
Schwarzer(シュヴァルツァー)といってモカのブラックコーヒーが定番なのですが、メニューは英語でストレートコーヒー
(ミルク付)となっていました。店内は明るく、非常に静かな雰囲気で落ち着いて過ごせました。お茶だけでなくちゃんとした食事もとれるようでした。ちなみにウィーンで有名なスイーツといえばホテルザッハーのチョコトルテ通称
「ザッハートルテ」が有名で、私もわざわざ朝8時の開店時に食べに行きました。しかしこれ
が大失敗。甘さが半端じゃなくて、体の調子がおかしくなりました。いままで甘いもの食べて
調子が悪くなったことなどないのですがこのトルテの甘さは尋常じゃないです。ちなみに添え
てある生クリームには砂糖は入っていません。日本人の好む甘さというのはどちらかという
と「甘さ控えめ」のような微妙な甘さだと思うのですが、このケーキは甘くなければお菓子じゃ
ないみたいな主張が感じられました。あとこっちのコーヒーはぬるいですね。もっと熱いのを
出せ!って言いたくなります。どちらにしてももう二度と食べるものかと思いました。本当は
もうひとつの老舗デーメルのも食べに行こうと思っていたのですがやめにしました。また機会があれば体調の良いときにでもって感じですね。
(客席へ向かう階段) (劇場内部)
さて、開演1時間前になりました。座席への案内開始です。席は
LOGEと呼ばれる側面にある個室のBOXです。1つの個室に7名ぐらい入れるようになっています。今回は奮発して168ユーロの一番高い席にしました。それでも今日の
演目である「トスカ」は公演ランクからいくとそんなに高いランクではなく、これがワーグナーなんかになると最高ランクに
なってチケットももっと高くなるわけです。席を確認したので内部の探検に出掛けました。まずお目当てはなんといっても
(作者がわからないの絵) (ロダン作の彫像 幕間にワインを飲んだりする広間にある)
ロダン作のマーラーの彫像です。これはすぐ見つかりました。劇場の左右側面と後方の3箇所に広間があり、ここで幕間に
ワインとかシャンパンとかを飲んで楽しく語らうのですが、この後方の広間の一角にマーラー像は置いてあります。この彫像
当初のものはナチスにより破壊されてしまったそうで、現在飾られているのはカールモルが所有していたものだそうです。
マーラーのほかにもカラヤン、ベーム、クレメンスクラウス、リヒャルトシュトラウスといった歴代監督の彫像が至るところに
置かれており、それを見て歩くだけでも十分楽しめます。あと誰の作品だかわかりませんがマーラーの絵も同じところに飾っ
てありました。さて今度は劇場内部を見てみます。なんといってもマーラーが立った指揮台を見に行かないといけません。
当然、当時のものとは違うのでしょうが、ここにあの
Gustav Mahlerが立って指揮をしていたんだと思うと感激もひとしおですね。はるばるウィーンくんだりまで来た甲斐があったというものです。さて今日の「トスカ」の指揮者はケリーリン・ウィルソンという女性
の指揮者です。シュターツオーパに女性指揮者というのも驚きましたが、あとで調べたら彼女はオペラの世界ではわりと有名なん
ですね。全く知りませんでした。でも女性の指揮者すごくかっこよかったです。ウィーンというのは保守と革新が同居した街なんで
すね。今回それを強く感じました。100年以上も前、前例のないユダヤ人を音楽監督に迎えたり、最近では初の東洋人を監督に
迎えたり、今夜も女性が指揮台に立っているわけです。そんな空気がこの街にはあるのだと思います。さて、オペラも堪能しま
したので、そろそろこの旅を打ち上げたいと思います。打ち上げにはマーラーが好んで
飲んだというドイツバイエル地方のビールの老舗
SPATEN(シュパーテン)の黒ビールドッペルボックで乾杯です。わたしは冷やしてぐびぐび飲みましたが、多分マーラーは
常温でちびちびと舐めるようにして飲んだに違いないと思います。飲みながら音楽に
ついて、そして芸術について熱く熱く語ったのでしょう。それではマーラーとウィーンの
街に乾杯!
(マーラー ウィーン紀行 おしまい)