物云舞(1979)

 

@ 野坂恵子 32CM-290 1980.10.27

A 野坂恵子 TYCY-5296 1992.11.26

B 野坂恵子 TYCY-5488 1995.9.1

 

伊福部の筝曲はその後期作品群の重要な柱となるものなのだが

それはこの「物云舞」から始まったといえよう。1979年の

作曲で初演は同年11月。たしかその翌年か翌々年か記憶が定か

でないがFM−NHKで放送されたのがこの曲に接する最初だっ

た。多分そのときの演奏は@と同じものであったような気がする。

曲名の「物云舞」とは平安朝中期の歌舞の様式であり、その典雅

さへの想いがこの曲の作曲の動機となっている。曲は静−動−静

−動と緩急のコントラストが鮮やかな構成となっている。さて演

奏のほうだがAは録音が悪いんだかどうだかしらないが薄っぺら

な音しか聞こえてこない演奏だ。ベストは@かBかで迷ったがB

の新しい録音のほうの演奏をベストとしたい。なんといっても動

の部分の迫力が違う。野坂の息遣いを間近に感じることの出来る

白熱した演奏だ。静の部分の詠い方や間の取り方も絶妙だ。@は

Bの15年前の演奏で若々しさが前面に出た演奏。エネルギッシュ

といえる名演だ。