合唱頌詩「オホーツクの海」(1954)
<オリジナル>
@ 手塚幸紀=東京交響楽団 K28G-7190 1984.2.21
<ソプラノ室内楽版>
A 藍川由美=太田、吉田、斉藤 LD32-5078 1988.3.4
B 藍川由美=戸澤、吉田、遠藤 TYCY5369,70 1993.5.1
C 藍川由美=井上、吉田、遠藤 30CM-391,2 1995.2
オリジナルは変則オーケストラと混声合唱のためのオーケストラ曲であるが
いまでは藍川由美による室内楽ヴァージョンのほうが一般的になってしまった。
私としてはオーケストラと合唱のほうが断然いいと思っているのだが、なぜか
こちらのほうは全然録音が出ない。逆に藍川版は3つも録音が出ているのだ。
お願いだから誰かオリジナルで演奏して!って感じである。歌詞は伊福部との
コンビで数々の名作を生んだ更科源蔵で、滅亡するアイヌ民族の叫びを唄って
いる。ゴジラ(1954)の最後の場面にこの曲の旋律を使用したのは、たぶんゴ
ジラの境遇とアイヌとを重ね合わせてのことと私は思っている。曲とは関係ないが
私はオホーツク沿岸をドライブするのが大好きだ。特に紋別から北を宗谷岬まで
国道238号線に沿って走るのがとてもいい。私のオホーツクお勧めスポットは
浜頓別だ。このあたりのオホーツクは網走辺りとは趣が違う。厳しさが違うのだ。
いまはやりの廃線めぐりで旧国鉄の興浜北線の廃線跡を歩くのもオホーツクを
体感するのに絶好のロケーションだ。ぜひ一度訪れて欲しい。オホーツクには
郷愁が漂っているのだ。多分わたしの祖先は北方系なのだろう。藍色の海、
さびしい青色をした空、太平洋とは異質の世界がそこには広がっているのだ。
また、流氷の来る海としてもオホーツクは特異性があるといえる。近年地球温暖化
の影響で流氷の接岸の少ない年が増えてきている。流氷のオホーツクの荘厳さは
言葉では言い表せない。なんとか環境破壊を食い止めてオホーツクを昔どおりに
保ちたいものである。さて演奏だがオリジナルは@の手塚=東響の1種類しかない
ので選びようがないが、これはなかなかの名演である。ただCDで出ていないので
早く復刻してほしいものだ。藍川由美による室内楽バージョンは現在3種類出て
いるが、どれも甲乙つけ難い演奏でどれがベストか選べといわれても困るのが
正直なところだ。あえて個人的な趣味で選ぶならCの最新録音(伊福部昭全歌曲)
をとりたい。雰囲気がいちばん荘厳な感じがするのだ。藍川由美も昭和63年の
初演のころと比べると格段に貫禄がついてきたような感じがする。
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