サハリン島土蠻の三つの揺籃歌(1949)

 @ 平野忠彦=三浦洋一  SJX-1041  1974.4.6

 A 藍川由美=斉藤京子  LD32-5078  1988.3.4

 B 平田恭子=井上直幸  32CM-290  1974.3.9

 C 藍川由美=遠藤郁子  30CM-391-2  1995.2

 

 まず曲名の「サハリン島土蠻」であるが先住民族に対する配慮からB

 では「土民」、Cでは「先住民」という表現に改められている。ただ、私

 としては芸術作品については創作時の時代背景等も作品を理解する

 上での重要なファクターであるとの考え方からオリジナルでの曲名を

 使用させてもらった。ご了承頂きたい。この曲はサハリン島にすむ

 ギリヤーク、オロッコ、キーリンのそれぞれの「子守り歌」を使用して

 いる。ただ、旋律は伊福部のオリジナルである。昭和60年(1985)

 の冬、私は網走にある「ジャッカ ドフニ」という資料館を訪れた。

 ここは戦後網走に移り住んだオロッコの人達の文化を紹介するため

 オロッコ人のD.ゲンダーヌが建てたものだ。内部にはオロッコの民族

 衣装、刺繍、食器や楽器などが展示されており、その豊かな文化に

 触れることが出来る。残念なことにゲンダーヌは前年の59年秋に死亡

 しており、その親戚筋に当たる方と地元の高校の先生が管理をされて

 いた。私が訪れたときは資料館は閉められていたが、電話をして無理

 をいって開けてもらった。約半日親切に応対をしていただき、オロッコの

 文化についてていねいに教えてもらった。やはりオロッコ人で日本名を

 北川アイ子という女性の作った「イルガ」というオロッコの伝統的な刺繍を

 販売していたので記念に購入した。あれから15年経つがそれ以来

  (オロッコの伝統的刺繍 イルガ)

 「ジャッカドフニ」には行っていない。機会があればまた訪れたいと思っ

 ている。さて演奏だが「子守唄」だから女性というのは大間違い、@の

 平野=三浦の男性コンビの演奏がピカイチの名演である。なにがいいか

 というと本当に眠くなってくるやさしい演奏なのである。特に1曲目の

 「ブールー ブールー」は素晴らしい演奏だ。これとは対照的に藍川の

 旧盤は逆に目が冴えてくる演奏だ。女性陣から選ぶとするとCの藍川

 の新盤がいい。旧盤とは歌い方がまるきり違う「子守唄」を意識した

 演奏になっている。ちなみにBの平田盤はCDが出たのは95年だが

 演奏はその20年前という長らくお蔵入りになっていた録音である。

 

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