舞踏曲「サロメ」(1987)
@ 山田一雄 新星日本交響楽団 LD32-5054 1987.5.15
A 広上淳一 日本フィルハーモニー交響楽団 KICC0177 1995.8,9
B 金洪才 大阪シンフォニカー VPCD-81036,7 1987.9.13
サロメというとオスカーワイルド=ビアズレーの名コンビを思い出す人は多いだろう。かくいう
私も大学1年生のとき英語の授業でこの名作を勉強した。このサロメの元ネタは聖書である。
マタイ伝の「洗礼者ヨハネの死」という章(マルコ伝にも同様の話がある)にその話が載って
いるが、ここにはサロメのサの字も出てこない。澁澤瀧彦はその著書「女のエピソード」の
中でなぜ聖書の話がワイルドの作品のようにここまで膨らむのか、またサロメが多くの
芸術家の創作意欲を掻きたてるのかについて分析を試みている。
さて、音楽の「サロメ」というとリヒャルトシュトラウスのオペラが有名だが、前者を「西洋の
サロメ」とするならば、伊福部の作品はまさしく「東洋のサロメ」といえるだろう。山田一雄
指揮のCDの解説によると作者自身の言葉として「中近東の音階を意識している」とある。
東洋人としてのサロメを意識した作品といえるだろう。基本的にこの曲はオスカーワイルド
のサロメを下敷きにしたバレエ音楽であり、音楽もあの物語のエピソードに従って進んで
いく。ワイルドの作品、シュトラウスの作品に慣れ親しんだ人にはこの音楽自体に違和感
を感ずるであろう。しかし、既成のキリスト教文化はヨーロッパ人の創造したものであって、
もともと聖書の舞台はアジアやアフリカに近いということを考えれば、このような「サロメ」も
あって然るべきものなのである。ただ、残念なのはこの曲の元となっているバレエ「サロメ」
を見ることが出来ないことだ。ぜひ一回舞台を見たいものである。さて演奏だが@とAが
甲乙つけがたい名演である。広上の演奏は前半がかなりゆったりめテンポで唄っているが、
後半になるにしたがって白熱してくる演奏である。山田の演奏はライブにしては録音もよく
新星日響第100回記念定期演奏会を飾るに相応しい演奏である。私の 個人的な趣味
からいうと山田=新星日響をお勧めとしたい。山田のほうがバレエ音楽ぽっい感じが強く
出ているからだ。ただ、広上=日フィルのCDは細かく場面ごとにトラックがついており、
どの場面の音楽かがひとめで分かるようになっているので曲の理解という点では大変
優れたCDだ。またサロメのほかに「兵士の序楽」という珍しい曲もカップリングされている
のでファンにはお勧めの1枚だろう。この「兵士の序楽」の伊福部自身の解説が面白い
ので是非一読をお勧めする。
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