土俗的三連画(1937)
@ 山岡重信 読売日本交響楽団 VICC-23008 1972.2.1
A 山田一雄 新星日本交響楽団 FOCD-3222 1986.5.27
B 広上淳一 日本フィルハーモニー交響楽団 KICC-0175 1995.8,9
C 石井真木 新星日響室内オケ LD32-5077 1988.2.27
D 花崎淳生他のメンバー TYCY-5369,70 1993.5.1
E 石井真木 新交響楽団 KICC377/8 2002.5.19
14人の室内オーケストラのための作品で全3楽章。「同郷の女達」、「ティンベ」、「パッカイ」からなる。初演
は昭和14年1月小船幸次郎指揮の新交響楽団により行われている。私はこの曲に出てくる「ティンベ」を
62年と平成3年に訪れたことがある。厚岸から道道1020号線を30分ほど走るとあやめが原という草原
地帯が出現する。ここは馬や牛が放牧されていていい感じのところなのであるが、その先端が「ティンベ」
である。私が訪れたのはいずれも10月の天気のいい日だったので、この曲のイメージとはまったく異なる
穏やかな岬であった。たぶんこの曲は冬の厳しい自然を表現したものなのだろう。ここは流氷こそ接岸しない
ものの冬ともなればそれはそれは厳しい環境となる場所である。「パッカイ」は萱野茂氏の「アイヌ語辞典」に
よると「おんぶする」という意味だそうで、おもにこどもに対して使われる言葉とのことである。いずれにしても
戦前の厚岸という僻地での生活、情景を彷彿とさせる作品である。さて、演奏であるがAを除いて全て
オリジナル編成での演奏である。山田=新星日響のは弦を若干増やしての演奏である。演奏は山岡=読響
がお勧めであるが広上=日フィルもなかなかである。前者は録音が27年前とだいぶ古いが弦楽器の出来が
素晴らしい。特に「パッカイ」はテンポが小気味よく、酔っぱらったアイヌ古老を彷彿とさせる演奏である。後者は
演奏の完成度から言えば一番だと思うが「パッカイ」のテンポが途中からやけに遅くなってきて残念である。
反対に山田=新星日響のはテンポが速くて演奏がいまひとつまとまりがないように感じる。録音のせいも
あるのかもしれない。
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