ヴァイオリンソナタ(1985)

 @ 小林武史=梅村祐子   LD32-5077 1988.2.27

 A 小林武史=梅村祐子   32CM-290 1988.7.7

 B 花崎敦生=浅井道子   TYCY-5369,70 1993.51

C 木野雅之=木野真美  MTWD-99009 2002.8.30

 

伊福部の弟子の故黛敏郎によれば伊福部の作曲の特徴は「対位法の欠如」

と「主題の有機的展開が全くないこと」の二点だそうだ。また「伊福部昭室内楽全集」

の片山素秀の解説には「ヨーロッパ的美意識の洗練、進化とともに歩んできたソナタ

と伊福部の相性は必ずしも良くない」とあるし、伊福部自身も小林武史の委嘱時に

ソナタを作曲するにはかなりの時間が必要というようなことを言っていたという。

以上のようなことから察するに伊福部にとってこの「ヴァイオリンソナタ」という作品の

意味合いは重いといえるだろう。だだ前述のような予備知識や先入観のあるなしに

かかわらず、この曲は違和感の無い素晴らしい作品に仕上がっている。もともと

交響譚詩の第1譚詩やタプカーラの第1楽章などはソナタ形式で書かれていることを

考えれば、それは当然のことといえるだろう。演奏はAの小林=梅村の新盤がすば

らしい演奏でこれをベストとして推したい。Bの花崎盤も素晴らしい出来だが、男性

と女性の表現の違い、曲の解釈の違いが出たような気がする。小林盤は原始的エネ

ルギーとでもいおうか荒々しさが前面に出た演奏だ。それに比べると花崎盤は女性的

なやさしさが全体をつつむ演奏だ。どちらにしてもこの曲には男女双方の感性を受け

止める奥の深さがある。

 

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