株式会社インサイト

                                                      環境システム部

                   トラップマスター技術マニュアル

1.微生物製剤について

微生物

弊社仕様の微生物製剤は、ISO9002を取得した米国の微生物製造会社の製品を使用しております。

この会社では、米国に有る微生物銀行(ATCC :American Type culture collection)が保有販売しているバイオセーフティレベル1の安全で有効な菌種を純粋培養させ、常に安定供給出来る体制を取っております。

製品には、タンパク質を消化する酵素(プロチアーゼ)、デンプン質を消化する酵素(アミラーゼ)、繊維質を分解する酵素(セルラ−ゼ)、そして油脂類を消化する酵素(リパーゼ)を生産するバチルス属を使用しています。

これらの菌種はそれぞれ純粋培養された後、混合し製品化されます。

本製品に使用されているリパーゼ生産菌は、油脂がリパーゼによって分解されて出来る脂肪酸に対して高い酸化力(ベーター酸化)により、早く炭素数の少ない低級脂肪酸に変え悪臭や排水を浄化します。

微生物添加により、水に溶けない炭素数の長い高級脂肪酸を、早く水に溶解する炭素数の少ない低級脂肪酸にする為にグリストラップ内に微生物の住家である『バイオフィルム』を形成させます。

バイオフィルムが形成されると悪臭は2週間以内に減少し、それとともに、動植物油脂や有機物も減少しドレインラインやグリストラップ内のメンテナンスを容易にします。

添加した微生物群は、15分ごとに増殖をくり返し、2日後には2192個に増えます。しかしながら、微生物の増殖は対数増殖なのでやがて減衰期を迎え死滅します。常に一定の菌体数を維持させる為に毎日添加させバイオフィルムの層を極力同じ状態に保つ事が重要です。

 

 

2.貯蔵保管上の留意事項

  直射日光を避け、0〜40℃以下、湿度70℃%以下で保管

   ( 最適保管条件は、室温20℃、湿度70%以下です。)

使用期限は製造日から2

  直射日光を避け、室温20℃・湿度70%以下で保管した場合は、製造後2年間が使 

  用期限です。冷暗所保管で2年有効です。開封状態で6ヶ月です。

 

3. 微生物を効果的に使うために       まず現場の状態を調べます。

排水の質・量を把握します。

(1)       一日の排水量はどのくらいですか。( ? )

(2)       一日の排水量に時間的変動はありますか。 

(3)       排水量が季節的に、また曜日で大きく変動しますか。

(4)       排水中の主な汚濁成分は脂肪、タンパク質、でんぷん、どれですか。

(5)       排水の温度およびPHはどれくらいですか。

(6)       排水のBOD,ヘキサン抽出物質濃度はどれくらいですか。

 

現行の排水処理システムを確認します。

(1)       グリストラップ(以下GTと略称)の大きさ・構造を調べます。

a.                      排水のGT内滞留時間、散気管の設置方法を推定します。

b.                      グリストラップの有効水深が、150mm程度の超浅型タイプは散気管によるエアレ−ションが完全にされにくいので、設置に適しません。

c.                      GTの汚れ具合、スカム脂肪塊の有無をチェックします。

d.                      GT前後の排水管のスカム、脂肪塊の有無をチェックします。

(2)       GT後の排水処理設備を確認します。

a.                      排水ピット、貯蓄槽、合併浄化槽があれば、大きさ・構造をしらべます。

b.                      それらの排水滞留時間を推定します。

c.                      それらの汚れ具合、スカム、脂肪塊の有無をチェックします。

(3)       GTならびに排水処理設備で悪臭が発生していないか確認します。

a.                      不快臭は主として排水混入物の腐敗によって生じます

b.                      特にカビ臭、腐敗臭なま、生魚臭、腐魚臭、し尿臭、塩素臭の有無をチェックします。

(4)       GTの清掃頻度、方法について確認します。

a.                      現在どれくらいの頻度でGTの清掃を実施しているかを確認しておきます。

  (回/月または回/年)

b.                      その時、排水管の目詰りについても調査します。

(5)       使用洗剤について確認します。

a.                      現場で使用されている洗剤、殺菌消毒剤、床洗浄剤、漂白剤の種類、名称、使用量を聞き、微生物に悪影響を与えるものがあるかどうかチェックします。

.微生物使用にあたって

   *1日あたりの使用量を算定します。

     次の2通りいずれかの方法で使用量を決めます。

(1)      油脂分量の3%を投与(ノルマルヘキサン抽出物質濃度から計算)。一般に                 

        はこの方法を使用してください。

        n-Hex(mg/g)x1日の排水量(m3/日)=排出する油脂量(g/日)

        排出する油脂量(g/日)x3%=1日当たりの微生物使用量(g/) 

       () ノルマルヘキサン抽出物質濃度:300mg/g

         1日の排出量(水道使用量と同じと考える):103/日とした場合

         300mg/g)x10(3/)3000(g/日)

         3000(g)x%90(g/日)の微生物が有効投与量です。

(2)BOD量の2%を投与。排水汚濁成分が主とし油脂分以外(タンパ

  ク質など)によるとき。水質としては、ヘキサン油出物質濃度が低い

       にも関わらず、BODが高い値を示す場合。

      ()BOD:600mg/g

       1日の排水量(水道使用量と同じと考える)103/日とした場合、

       600(mg/g)x10(3/)6000(g/日)

       6000(g)x2%=120(g/日)の微生物が有効投与量です。

1)、(2)の場合、微生物使用開始後の4週間は、できるだけ上記算

式で算出した数量の1.5培量を投与するようにしてください。

(3)           1日あたりの調理、給食数から算定(目安)。

 


                使用開始後4週間           5週間以降

  食/日         微生物使用量(g/日)         微生物使用量(g/日)

 


  10000             9500                  6300  

   8000             7500                  5000

   5000             4500                  3000

   3000             3000                  2000

   2000             1950                  1300

   1000              950                   630

    800              680                   450

    600              530                   350

    400              420                   280

    300              380                   250

    200              350                   230

    150              300                   200

    100              260                   170

     50               45                    30

     10               30                    20

 


☆ 機器装置準備、設置場所を確認します。

(1)          最初の投与は出切る限り、グリストラップ、ピット等の清掃後が望まれます。

      a.グリストラップ、ピット、配管内壁等に汚泥が大量に付着している場合は、可    

 能な限りポンプによるくみ取りやジェットウォッシャーによる洗浄をします。

 

 

(2)          トラップマスター設置に最適な場所を選びます。 電源、水源を確保し、次ぎのチェック項目を守ってください。

a.       屋内設置

b.       周囲気温が40℃以上、0℃以下は避ける

c.       直射日光の当たる場所は避ける。

d.       湿気の多い場所、水のかかりやすいところは避ける

 

 

(3) オゾン/エア−の投入時間を設定します。

    微生物製剤投入前にオゾンを投入し残留塩素の除去 予備脱臭・殺菌を行う

    排水中の脂肪と微生物との接触をよくするために、エアレーションは重要で

    す。また、好気性微生物の脂肪分解を促進します。

 

   

     

(4) 微生物製剤の投入時刻を設定します。

    1日の必要量を投与するため、厨房の時間帯別稼働率を聞き取ります。

a.   稼働率の低い時間帯、例えば午後の閑散期、終業後の夜間時間帯に

  トラップマスターの微生物製剤投入の稼動時刻を設定します

 

(5) 散気装置の設置方法

     次のチェック項目を守ってください。

a.     基本は水の流れ(アミカゴ側からトラップ管への流れ)と平行に散気装置を設置します。

b.     底部からの整流板などにより極端に短くなる場合は、水流と直角に設置します。

 

c.     出来る限り、アミカゴ下部、トラップ付近にも散気装置して、槽全体が、きれいにエアレ−ションできるようにします。

   

 

 

 

 

 ☆ アミカゴ部清掃のお願い          

   グリストラップ内アミカゴは、定期的に清掃していただく様に厨房関係者に  

   徹底してください。スキットロン(エコメッシュ)の使用が効果的です。

 

 ☆ 投与方法の注意事項      

(1)         できるだけ、使用開始後の4週間は通常使用量の1.5倍量を投与します。

a.                          グリストラップ、ピット、浄化槽などの排水処理設備の微生物が安定するま

の約4週間は、1日あたりの微生物資材の使用量の1.5倍を投与すると効果的です。

 

(2)         使用前にグリストラップ、ピットなどの清掃が不十分な時は、ハイポルカ併

用が効果的です。

a.                          清掃が不十分なときは、投与開始後の23週間、投与する微生物製剤量と

同量のハイポルカを併用すると効果的です。

 

 

(3)         季節的に排水量が増減する施設には、排水量増加の2週間前から増加量に対

応した微生物製剤の量を投与します。

a.                          観光地、リゾート地など排水量の季節的変動が大きい場所は、急激な負荷の

増加により、排水処理設備の機能が悪化し、排水管の目詰まり、悪臭発生、

汚泥増加などが起こります。

排水量の増加の見込まれる2週間から、微生物製剤の量を増加します。

 

5.何か、おかしいと判断したら、次の点をチェックしてください。

 


   原因            解説             処置

  

 温度が変化している。 5℃〜50℃の範囲で設置  高温の排水が排出される

            可能ですが、酸素及び微生  時間帯を避けて、微生物

            物には至適温度があり    製剤を投入してください。

            15℃〜40℃が最適です。

 


 排水のPHが変化して  温度と同様、最適PHがあ  食器洗剤機などが使用され

 いる。        あります。微生物は     る時間帯を避けて、微生物

            PH6〜8の範囲です。     製剤を投入してください。

 


 塩素系殺菌洗浄剤が  殺菌剤によって、微生物    他の洗剤を使用してくさ

 多用されている。   の働きが阻害されます。   さい。できなければ、使用

                          される時間帯を避けて、

                          微生物製剤を投入してくだ             

                          さい。

 


 強酸性あるいは強ア  PHの変動は微生物の活動   中性あるいは弱酸性、弱

 ルカリ性の洗浄剤が  を阻害します。       アルカリの洗浄剤に切り替  

                          えてください。できなけれ

                          ば、使用される時間帯を避

                          て、微生物製剤を投入して

                          ください。

 


 日/排水量または油   設定当初より油脂分量が増  4.の計算式に再度、当て

 脂分濃度が上昇して  加していれば、微生物の   はめて適正量の微生物製剤

 いる。あるいは、調  量が不足しています。    を投入してください

 理加工食剤が増加                

 している。

 

 


   原因           解説             処置

 


 排水量の時間的変動  グリストラップに一定の   グリストラップに排水が

 が変化している。   滞留時間がないと微生物   滞留している時間帯に、

            の効果が発現しにくい。   微生物製剤を投入してく

                          ださい。

 


 使用している洗剤の  多量の洗剤は微生物反応   なるべく洗剤の量を控え

 が増加している。   を阻害する可能性があり   るようにしてください。

            ます。           発泡の原因にもなります。

 


 油脂以外の有機物   微生物の量が不足し    4.(2)に従い、敵正量

(糖類、タンパク質等   ています。         の微生物製剤を投入して

 BOD分)が増加して                 ください。

 いる。

 


 SS分(浮遊物質)が  不溶解性の植物残さ等の   グリストラップに設置され

 増加している。    固形物は、このシステム   ているアミカゴで適当に

            では分解できなせん。    固形分を取り除いてくださ

                          い。スキャトロン(エコ

                          メッシュ)の使用が効果的

                          です。

 

 


.こんなときは 

 ☆排水の酸性状態が続くなら  

  処置 :グリストラップの排水のPH5以下のまま(腐敗状態)なら、夜間、稼

 動していないときに、グリストラップの容量1 に対して炭酸ナトリウ

 ム500gを目安に投入して、PHアルカリサイドにします。

 

  チェック事項:(1)微生物製剤が有効に働くのは、PH68の時です。

             排水中の有機物が微生物で分解される過程で有機が生成され

             るので、測定時によっては一時的に酸性サイドになっている

             場合があります。

           ()酸性洗剤を使用していないかどうか現場に確認して、使用し

             ていれば、使用量を減らすか弱アルカリ洗剤に切り替えても

             らいます。

 

 

 ☆鼻に塩素臭がしたら

  処置:塩素系洗剤の使用を中止して欲しい旨、現場に要請します。

      過度の使用は微生物が死滅します。

 

 ☆泡立ちがひどい

  処置:次ぎの3通りのいずれかお選択します。

(1)     使用する洗剤の量を減らすことができないかどうか、現場と相談

    します。

(2)     シリコーン系消泡剤を使用します。

 

チェック事項:(1)界面活性剤(洗剤)の使い過ぎによる泡立かどうか、調べます。

 

  ☆スカムが発生、しかし悪臭はなし。

    処置:一過性の現像と考えられます。微生物製剤の継続使用で改善できると 

         考えられます。

    チェック事項:微生物製剤の使用開始に伴なって排気管内、グリストラップ

            底部、壁面などに付着していた含油汚泥が分離、剥離して浮上

            していることがあります。それらを餌とする糸状菌が増殖し、

            スカムを生成している事があります。微生物製剤の継続使用で、

            排水中の油脂分が減少すれば、糸状菌も増殖しなくなります。

 

  ☆設置当初よりエアー供給量が少ない。

     処置:散気管の目詰りが考えられます。散気管の交換、あるいはエアーポ

 ンプとホースのつなぎ目の点検をします。

     チェック事項:エアーポンプの異音がしていないかチェックします。