記事タイトル:脳血流SPECTについて 


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お名前: 勝又康弘   
(補足)
 核医学検査は,病院によってはアイソトープ検査,RI検査,同位元素検査とも呼ばれま
す。
 SPECTは,single photon emission computed tomographyの略,即ち断層像です。脳や心
臓など各方向から調べたいときや,前や後ろからでは臓器が重なってみえにくいときに用
います。全てのガンマカメラは,骨シンチグラフィなどの平面像とともにSPECTも撮影でき
るような構造となっています。
 撮像の際は,患者さんはベッドに寝ているだけで,カメラが動きます。
 従って,SPECTは検出器1台(単検出器型)でも撮れますが,検出器の数を2-3台に増やすこ
とによって,1台あたりの回転半径を小さくし,それによって撮像時間を短縮し,感度や分
解能を向上させる多検出器型SPECTが導入されることが多くなってきました。SPECTには,
脳血流や心血流以外にも,TlやGaを用いた血流を利用した癌の核医学検査などもありま
す。
[2002年7月24日 13時16分53秒]

お名前: 鎌谷直之   
勝又先生、詳しい説明をありがとうございました。

我々の時代はシンチグラフィーでは患者の、例えば前頭断と垂直に進むγ線だけを
捉える装置で測定したのです。SPECTはCT、即ちコンピュータでCTのように分析する
所が違うのですね。おそらく、披検者か装置を回すのではないでしょうか。

PETは陽電子がでたとたんに体内の陰電子と反応し、光子が180度の角度で二方向に
でるため、発生個所が正確に測定できるようですね。陽電子はディラックが電子の
存在方程式を書いたときに予言したものです。実際に臨床に使われるとは楽しみですね。

むかし、ディラックの電子の波動方程式を解いたとき、その鮮やかさに驚いた記憶が
あります。
[2002年7月20日 17時54分12秒]

お名前: 勝又康弘   
(本院放射線科における現状)
 トレーサの選択は,放射線科医師の判断となり,依頼医の指定はできません。それぞれ
のトレーサ毎に利点欠点があり,また臨床研究の一貫性を保つためなどには,依頼医が選
択できると良いのですが……。尤も,私が以前勤めていた病院でも,依頼医が指定できる
とそうでないところがあり,放射線科医との力関係に左右されるのかもしれません。
 脳血流SPECTには定性検査と定量検査があります。定性検査では,読影医の判断に左右さ
れる部分もあるので,特に治療前後や異なる症例で比較する際などは,定量検査が望まし
く,最近はかなり普及していますが,本院では定性のみです。新総合外来棟が稼働すると
状況は変わるかもしれませんが……。
 因に,神経放射線科では,比較的マイナーな検査法ですが,133 Xeを用いた脳血流CT(通
称ゼノンCT)を行っています。
[2002年7月17日 17時16分58秒]

お名前: 勝又康弘   
(比較的詳しい説明)
 脳細胞は血流がある値以下に減少すると機能が低下します。血流減少状態が持続する
か,あるいは更に血流が減少すると機能がなくなり,やが細胞は壊死に陥ります。しか
し,機能障害の早期に血流が回復すると,脳細胞は正常の機能を取り戻しうると考えられ
ます。また,細胞の器質的障害を伴わない時期では,CTやMRI上,異常所見は見られないも
のと考えられています。従って,脳血流SPECTでは,例えば,形態学的検査法(CT,MRIな
ど)ではとらえることのできない,または早期にはとらえることが困難な臨床症状に合致し
た脳虚血病巣を発症直後から描出することができます。なお,正常脳組織の血流量は50 
ml/100 g脳/分であり,16-20 ml/100 g脳/分で機能障害が生じるといわれています。

 脳SPECT検査では,投与した放射線性医薬品から放出されるγ線を検出して断層像により
その位置を決定します。脂溶性物質である123 I-IMPや99m Tc-HM-PAOや99m Tc-ECDなどが
用いられています。
 123 I-IMPは,静注後,ほとんどが肺に取り込まれ,その後,動脈血中に放出されます。
動脈血液中の123 I-IMPは,血液脳関門を通過し,最初の循環で100%近く脳内に取り込まれ
ます。投与量の約8%が脳に取り込まれ,以後長時間脳内に停滞します。脳の放射能は投与
後20-30分でピークに達し,脳内分布は時間とともに緩徐に変化します。静注後1時間以内
の早期像では脳血流の多寡に応じて皮質および中心灰白質で高く,白質で低い脳内分布を
示します。一方,静注後3時間以降の晩期像では灰白質と白質の放射能の差は軽減し,より
均一な集積様式を示します。脳内分布が決定するまで,少なくとも5分以上はかかり,従っ
て時間分解能が低く,また脳内分布が変化するため,投与後1時間以内に撮像を終えないと
脳血流情報を得ることができません。
 99m Tc-HM-PAOは,静注後,肺を素通りし,その約5%が脳に集積します。初回循環での脳
への摂取率は約75-90%です。脳放射能は数時間以後も安定であり,脳内分布も一定です。
脳内分布は2分以内には決定しているので,時間分解能は高いです。
 99m Tc-ECDは,静注後,肺を素通りし,その約6%が脳に集積します。以後1時間あたり平
均約4-6%の割合でゆっくりと脳から洗い出されます。脳放射能は投与後2分でプラトーに達
し,脳内分布は投与後1時間程度までほぼ不変です。脳内分布は2分以内には決定している
ので,時間分解能は高いです。
[2002年7月17日 17時16分20秒]

お名前: 勝又康弘   
 本日の回診を含めてしばしばご質問のある脳血流SPECTの原理などについてご説明しま
す。

(簡単な説明)
 脳血流SPECTにおいては,脳血流測定用トレーサ(放射線性医薬品)は静脈内に投与された
あと血流量に比例して脳局所に運ばれます。脂溶性のトレーサであるため脳組織に自由に
拡散しますが,その後一定時間脳内にとどまります。また,脳血流を測定したいときにト
レーサを静注すれば,トレーサはその時点での脳血流量に比例して脳局所に運ばれ,しか
もしばらく脳組織内で一定の濃度を保ちます。すなわち,ある時点での脳血流情報がその
後しばらく脳内に保持されることになります。
[2002年7月17日 17時12分27秒]

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