9月7日(土)にリウマチ膠原病・よつやセミナーという,主として留学後の若い(!)先生
に,留学中にした仕事を中心にupdateなことを発表させていただく会がありました。私も
「Nuclear dots型抗核抗体とnuclear body構成蛋白Sp140, Sp110」という題で発表させて
いただきました。他の先生方の演題を,理解できた範囲でご報告します。
来年は9月6日(毎年9月の第1土曜日),場所は毎回,四谷駅前の主婦会館だそうで
す。若い(!)先生方,是非出席して下さい。
1.相川眞範先生(順天堂循環器科)
「急性冠症候群における炎症とMMPの役割」
動脈硬化病変は炎症である。硬化病変ではマクロファージの役割にMMP,collagenaseが関
与する。特に,MMP-1, MMP-8, MMP-13でcollagenのmetabolismに強力な影響を与える。Low
lipid食でマクロファージの浸潤低下→MMP低下→細胞外基底膜分解酵素の低下→plaqueの
安定化が認められる。スタチンにはlipid lowering のほかanti-inflammatory effectもあ
る。
2.廣村桂樹先生(群馬大第三内科)
「細胞周期制御蛋白とアポトーシス」
細胞周期はサイクリン,CDKにより制御されている。腎炎では,サイクリン,CDKの活性化
により,メサンギウムの増殖がおこる。CDKのインヒビターp16, p21によりcollagen
induced arthritisが押さえられたとする報告がある。P27はcyclin D,E, Aのインヒビ
ター。P27 -/- マウスは巨大化,多くの臓器の過形成,不妊,発癌,アポトーシスが著
明。アポトーシスをおこす細胞ではCDK2(G1, S期の制御因子)の細胞内分布が異なる(細
胞質に移行する)。CDK2が細胞質に移行するために異なるターゲットを認識してアポトーシ
スを生じるのではないか。
4.三浦靖史先生(神戸大学保険科学膠原病学)
「RA滑膜におけるB細胞レパトアの多様化」
RAの滑膜ではCD21, CD35陽性のgerminal centerが認められる。しかし,RA滑膜のgerminal
centerでは,扁桃のリンパ節では認められるcentroblastを欠く。CD77(centroblastのマー
カー)でもdetectできない。RA滑膜のB細胞VH領域はRGYWモチーフへ変異したsomatic
mutation(insersion, deletion)が生じている。しかし,この変化は滑膜特異的とまではい
えない。
5.牧野雄一先生(東大医科研)
「IPASによる生体酸素応答の制御ム新たな抗血管新生療法の開発に向けて」
虚血に冠する疾患には糖尿病性網膜症,関節リウマチ,固形がんなど様々なものがある。
低酸素hypoxiaではglycolytic enzymeの誘導,VGEFの増加,iNOSやHO-1(hemoxygenase-1)
の増加が生じる。HIF-1(hypoxia inducing factor-1)はhypoxiaにより誘導され安定化する
転写因子である。演者らはIPASを発見しクローニングした。IPASはHIF-1a, HIF-2aと類似
のN末を持つが,C末を欠く因子。HIF-1, HIF-2の働きをDNA結合のレベルで阻害する。IPAS
は眼球,とくに血管のない角膜で発現している(すなわち,角膜では血管新生が抑制されて
いる)。IPASの発現をコントロールすることにより,虚血・低酸素による血管新生を抑制で
きる可能性がある。
コメント:インキュベーターの酸素や二酸化炭素の条件は生体内のそれとかなり異なる。
これらの条件が異なると,実験結果が異なることが往々にしてある。一度みなさん,イン
キュウベーターの条件を変えてみてはいかがですか?
[2002年9月9日 21時17分54秒]