記事タイトル:頭部MRIの原理(T2強調像とFLAIR法) 


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お名前: 勝又康弘   
以下,FLAIR法の原理について詳しく説明します.

通常のspin echo (SE)やgradient echo (GRE)などのパルスシーケンスの前に反転パルスと
呼ばれる180°RFパルスを付加する方法をinversion recovery (IR, 反転回復)法といいま
す.

この反転パルスと励起RFパルス(SEやGREパルスシーケンスの始まり)の時間をTI 
(inversion time, 反転時間)と呼びます.

IRはもともとT1強調を強めるためのもので,この場合にはTIを500ms程度に設定します.

100〜150ms程度と短く設定すると「短いTIのIRという」意味のSTIR(short TI IR)法のパル
スシーケンスになり,これが「脂肪抑制法」の一つとして用いられています.

また,TIを1500〜2000ms程度に長く設定すると,T1が最も長い自由水の信号が抑制され,
「液体を減衰したIR」という意味のFLAIR法のシーケンスになります.通常のT2強調像では
病変も脳脊髄液も高信号になり区別しがたいことが多いのですが,脳脊髄液が低信号のT2
強調像が得られるFLAIR法は,脳溝や脳室に接する病変の診断に特に有用です.
[2002年11月7日 21時50分44秒]

お名前: 勝又康弘   
脳脊髄液の信号を抑制したT2強調像がfluid-attenuated inversion reovery (FLAIR)法で
す.脳血管障害において,皮質や脳室周囲上衣下など脳脊髄液に接する小さな高信号病変
の診断に威力を発揮します.gliosisと血管周囲腔の開大の鑑別にも有用です.但し,小脳
や脳幹の実質内病変については濃度分解能が不十分で,検出能はT2強調像よりも劣るので
その代替にはなりません.
[2002年11月7日 21時50分24秒]

お名前: 勝又康弘   
脳梗塞急性期においては,T2強調像において,血管性浮腫による組織水分量の増加を反映
して高信号と腫脹を来します.(その前の細胞性浮腫段階では,即ち超急性期では,組織全
体の水分含有量に著明な増加がないので,T2強調像では信号変化を認めません)
[2002年11月7日 21時49分59秒]

お名前: 勝又康弘   
T2強調像では,多くの病変が水分含有量が増加することを主因として白くなりますが,こ
れは非常に敏感で,殆どの病変が高信号域として描出され,非特異的です.(脳脊髄液と同
程度の著明な高信号の場合は,意味があり,嚢胞,神経鞘腫,海綿状血管腫などが相当し
ます)

従って,T2強調像で高信号(白)というだけでは,梗塞,炎症,脱髄,gliosis,血管周囲腔
の開大などの病変の区別はできません.(その分布や形状で或る程度の推測はできますが)
[2002年11月7日 21時49分31秒]

お名前: 勝又康弘   
H原子核を含む分子が自由に運動できるような状態にある(水分子の場合には自由水と呼ぶ)
とT1(縦緩和時間)もT2(横緩和時間)も長くなります.これには脳脊髄液,尿,漿液,浮腫
などが相当します.これらは,T1強調像で低信号(画像上は黒),T2強調像で高信号(白)に
なります.
H原子核を含む分子の運動が制限されてくるにつれてT1もT2も短縮してきます.濃い粘液や
脂肪の状態になるとT1強調像で高信号,T2強調像でやや低信号になります.
[2002年11月7日 21時48分57秒]

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