記事タイトル:Report from US 


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お名前: 鎌谷直之   
レポート完全版

米国のゲノム研究の将来の方向性を知るための米国視察旅行(平成14年3月10日出発、3月
15日帰国)

出張予算:
 文部科学省、未来開拓の

日程は次の通り
1. 平成14年3月10日、ボストン空港着、この日は遅いのでホテル泊(一泊)
2. 平成14年3月11日、ボストン(実際の市名はケンブリッジ)のGCI (Genomics
Collaborative Incorporation)を訪問。
Genomics Collaborative, Inc.)
450 Sentry Parkway
Blue Bell, PA 19422
Tel 888-999-1268
Fax 484-530-5051
www.genomicsinc.com

これは、遺伝子、組織など患者さんのサンプルを集めて、世界の研究者の研究を助ける会
社です。遺伝子の解析は、解析技術もさることながら、サンプル収集が大変だということ
が皆わかってきたのでこれからの成長が予想される会社です。ここでは、最初に看護婦さ
んの資格をもつSue Flynnという人が出迎え、医師のWoody Jacksonと話しました。まず
Cheif Exective Officer (CEO)のMichael J. Pellini, M.D.が全体の説明をしました。
これまでに100000以上の臨床サンプル、DNAを集めたと言っています。
これからは、例えば彼らの研究により、ある多型のある遺伝子に疾患が関係していると思
えば、GCIのサンプルが使えるようになると言っていました。
さらに、後述のSequenomから購入したSNPタイピングの機械を見せてくれました。中々良
い機械ということでした。また、大量のサンプルをコンピュータで制御して容易に取り出
せるようなシステムを作っていました。コンピュータ専門の人もいて、色々な作業で大変
のようでした。Genetical Statisticianも(女性)もいていろいろ分析をしていました。
ソフト開発もさかんでサンプルから臨床情報からすべてを統合する環境を作っていました。
実際にこのようなことになるでしょう。
場合によっては、これは遺伝子実験機会になりえると思いました。もし、多くの疾患の
DNAが大量にあるとすると、そしてそれらを自由に整理し、取り出すことができるとすると
後は、どのような問題を解決したいかがわかれば実験を組み立てることが可能だからで
す。これは、場合によっては極めて伸びる会社だと思いました。
また、彼らの仕事のかなりが倫理問題に裂かれているのには感心しました。
我々もPSCでの1000人以上のDNAと臨床情報を倫理的に採集するという大変な問題を解決し
ました。これららその成果が次々に出てくると期待しています。
その後は、ワシントンDCへと飛行機で向かい、ワシントンDCのホテルに泊まりました(二泊)
3. 平成14年3月11日、ホテルからNCBIに向かいました。ところが、NIHのキャンバスに入
るのがシキュリティーチェックが大変でした。
 NCBI (National Center for Biological Information)は、遺伝子配列などの情報をコ
ンピュータに入れたデータベースを作り、世界中の研究者が使えるようにしている米国の
連邦政府の機関です。遺伝子を研究している人ならだれでも知っている組織です。
 バイオインフォーマティックで最も大きな組織はNCBIでしょう。Genbank, LocusLink,
Unigene, Genomes, dbSNPだけでなく、極めて多くのデータベースを作り、維持していま
す。世界中のひとがここのコンピュータに頻繁にアクセスしているはずです。しかし、中
心のコンピュータの規模は驚くほど小さいものでした。
私は、このようなデータベースを構築するにはかなりプログラムができるひとがいないと
無理だと思っていました。そこで、プログラムをどのようにやとっているかを聞いたと
き、驚くべき答えがそこにあったのです。それは、「多くのプログラマーはロシア系で、
それ以外でも外国人が多い。彼らは比較的安い給料でよく働く」という事です。なるほど
と納得しました。日本ではソフトウェア開発者のレベルが低い上に、外国から補充できる
わけでは無いところが苦しいところです。しかし、ここに私は米国のソフトウェアの実力
の本質を見ることができたような気がしました。

午後はベセスダのNIH(National Institutes of Health)にいきました。
 これは、米国の連邦政府の健康医療に関する最大の機関です。病院もあります。森口先
生が元気に実験をしていました。森口先生のボス'Sheaと話しました。かれはシグナルト
ランスダクションに興味を持っていて、それを詳しくやっていました。次に、RAブランチ
の遺伝部門長Kastnerに合いました。なんだかSequenomの機械を購入して、やるよていと
言うことでした。
夕方はMedImmune社のRonald Wilderをよんで食事しました。
Dr. Wilderは小竹、古谷両先生のお世話になったかたでラットの関節炎の連鎖解析(QTL
解析を行っていた人です)。1年程前からバイオの会社、MedImmune社に移って、現在は色
々な活躍をしているようです。Respiratory Syncitial Virusに対する抗体とか、色々
もって居るようです。今や、ベンチャーとも呼べないような大きな会社になっているよう
です。中々生き生きしていて、日本の医者にもこのようなルートがあたりまえになるとい
いなと思いました。
4. 平成14年3月12日
 次の日はロックビルのセレラ社に行きました。これは、米国の遺伝子配列解析会社で
す。遺伝子を研究している人ならだれでも知っている会社です。クリントンと一緒に社長
が会見をしました。しかし、その社長も会社を去り、大幅に方向転換して再出発していま
す。最初は副社長のDr. Broderが会見する予定だ他のですが、急遽できなくなったと恐縮
していました。Broderとは東京で会談したことがあります。彼は、AZTをAIDSに効くこと
を証明した人(満屋さんのボス)で、Celeraにくる前はNCI (National Cancer Institute)
のディレクターをしていた人です。日本だと、癌センターの総長が民間会社を作るような
ものですね。
 セレラは世界最速の遺伝子解析能力を誇り、遺伝子配列へのアクセス権を売っているの
です。しかし、これからはそれでは生きていけないと確信したようです。これはほとんど
の遺伝子解析会社に共通することで、今や米国では遺伝子配列のみを行う会社はほとんど
ありません。セレラが何を狙っているか非常に興味があるところです。

まず第一に、ゲノム創薬を狙っています。次にオーダーメイド医療です。そしてプロテオ
ミックスです。日本でもそのように考えられていると思いますが、彼らは思ったらすぐに
やるというのが大変な力なのです。そのためには、これまでの栄光もすべてすて、例えば
社長のベンターは会社を去りました。ベンターはこないだクリントンとNIHのフランシス
コリンスとならんで記者会見していたひとです。ベンターにこれまでいかに功績があって
も、これからの進路に反するのであれば容赦なく切り捨てる(実際は自分で去ったのかも
しれませんが)、これが米国のダイナミズムで最も日本と異なる部分の一つでしょう。

セレラはこれから色々の製薬会社の依頼で、あるいは共同研究で遺伝子やタンパク質研究
を創薬に生かしていきたい考えのようです。
5. 平成14年3月13日
 13日の夜サンディエゴに着き、この日は一泊しました。
6. 平成14年3月14日
 この日は朝からSequenomという会社を訪問していました。これは、私の留学していた
Scripps Clinicの向かい側にある会社でSNP解析の新しい機械を作っていました。
半導体技術とマススペクトメトリーを用いて遺伝子(SNP)解析をのです。だいたいのこと
をいうと、PCRでddATPなどでDNAの伸張をとめます。するとSNPにより異なった大きさの
DNAができるわけです。それを半導体の上にスポットします。このようなたくさんのス
ポットを持った半導体に次々にレーザーをあてて、そこから飛び出てくるイオン化された
分子の質量を量るのです。そうするとアレルにより見事に区別されるようになります。
非常に正確であり、DNAをプールしても正確に値が出るそうです。
この手法には感心しました。アイソトープもマーカーもついていない。ただ、物理的な質
量だけを測定するのです。彼らはインベーダーはハイブリダイゼーション(同じ配列が結
合するか否かを検出する)だから、むずかしいのではないか。やはりアナログよりディジ
タルの法が信頼性があると主張指定した。MassArrayという名前の測定します。この会社
は日本の日立ハイテクと提携しているようでした。
昼食後、UCSDのTechnology Transfer & Intellectual Properties Services (TTIPS)の
director, Dr.Paauに会いました。UCSD (University of California, San Diego)は、最
大規模の医学部を持つ大学です。Ed Holmesという私の友達が医学部長をしています。
Dennis Carsonという昔の私の上司もここで教授をしています。Ed Holmesに紹介をたのん
だらDr. Paauを紹介してくれたのです。Edは分子生物学の学会で申し訳ないがこれないと
の事でした。

UCSDのTTIPSにはDr. Paauを筆頭に、Ph.D.を持っていて、このように科学的成果のパテン
ト化や会社設立にかかわっている人たちが8人も居るということです。またスタッフの数
は20何人だが、全く足りないと嘆いていました。Dr. Paauのお話は衝撃的なものでした。
まず、UCSDの研究費のほとんどは連邦政府から来るものである、との事です。残りが会社
や州政府から来ます。教授の給料は州政府からきているのに、そのようにパテントを取っ
たり会社をつくったりして問題にならないのかという質問に対しては次のようなものでし
た。州政府のお金は教育のためのものである。その証拠に研究のお金のほとんどは連邦政
府から来ていて、これは州とは関係が無い。連邦政府からのグラントは民間のグラントと
同じように考えているようでした。なるほどと納得しました。
UCSDの教授たちの発明はすべて大学の物になり個人のものとはならないという事でした。
日本では一般に大学は特許を取るのに積極的ではない。特許の申請にも維持にもお金がか
かる。一般に、特許でお金が儲かることは稀なので、日本では大学側が積極的に特許を取
ることを推進しない。というと、TTIPSが特許をとる価値があるかを判定するのだという
ことでした。そうすると特許をとる価値がないと判定された教授たちは怒るのではない
か、と聞くと、確かにそのような教授も居るが、わかってくれる、ということでした。や
はり、多少のいさかいはあっても真実を重んじる体制が大切だと思いました。

その後でDr.Paauは彼の構想を話してくれました。TTIPSがある特許を持っているとして、
それがやがては実現の可能性があるとする。しかし、例えばファイザーがこれに興味を持
ち、研究を始めるには、TTIPSにライセンス料を払わなければならない。さらに、New
Jergy (ファイザーの本社)の研究所でお金をかけて新たに研究を始めなければならな
い。これらは二重の費用として発生する。ところが、これを避けるためUSCDとファイザー
が協力してSan Diegoに小さな会社を作る。そこにファイザーが投資をする。ライセンス
料もその小さな会社がUCSDから買う。そうするとファイザーの出費は投資だけになる。投
資は費用ではないのでこちらの方が良い(これについては私は完全にわかっていませ
ん)。そして、小さな会社の研究がうまくいって何らかの医薬品が出てくる可能性が強く
なれば、ファイザーは権利を買い取る。投資をしているので産物を買い取る権利があるの
だと思います。また、うまくいかなければ自社での諸費用が無駄になるのではなく、投資
の失敗となるだけである。ここで、税法上などで、自社で新たにプロジェクトを立ち上げ
るより、ベンチャーに投資するほうが有利になるメカニズムがあるらしい。このため、も
しベンチャーを作らなければ雇用はニュージャージーで起きる。しかし、ベンチャーを作
れば雇用はSan Diegoで起きる。これも良い点だ、ということらしいです。

問題になるのはファイザーの会社内で研究を行う場合と、ベンチャーに投資する場合、ど
ちらが成功の可能性が高いかということです。米国ではおそらく後者のほうが成功する確
率が高いのでしょう。米国でも社内では事なかれ主義になって、画期的な仕事ができる可
能性は低いのだと思います。それに米国のベンチャーは大学教授とかがやるので、また、
ストックオプションとかインセンティブを引き出すメカニズムを作っているのでいいので
しょう。何よりいいのは内部でやるときは社員を増やさねばならず、それが固定費用とし
て発生することでしょう。ベンチャーであれば、投資をやめさえすればよいわけです。そ
れでももったいない場合は別の会社に売ればいいでしょう。

Dr. Paauは日本の製薬会社でもこのシステムを利用することができるといっていました。
例えば、中外がTTIPSの持っているある特許に興味を持って実用化をはかりたいとしま
す。あるいは、ファイザーがライセンスを取得していても、アジアに対する販売の権利は
持っていないとします。そうするとアジアへのマーケッティングに限っての権利も得るこ
とができます。かれらは共同でベンチャーをSan Diegoに立ち上げ、そのへんの教授を引
き抜いて社長にします。社長にはその会社がうまくいけば100倍ももうかるようなストッ
クオプションを与えます。中外は研究がうまくいけばそれを実用化し、うまくいかなけれ
ばストックをファイザーに売るか、会社をつぶせばいいのです。ここで、問題になるのが
従業員です。ところが、米国の人たちはこのようなことはなれているので、平気で次の仕
事を探します。しかもこのような仕事は結構たくさんあるのです。ベンチャーの会社を作
るには建設労働者が必要です。また道路も拡張する必要があるでしょう。会社を掃除する
人も必要だし、ベンチャーの意思を他人説明する人も必要です。このように、研究者だけ
ではなく、色々な方面に新たな雇用が生まれます。
[2002年3月18日 17時50分26秒]

お名前: 鎌谷直之   
ちょっといいわすれたけど、NIHで森口先生にお会いしました。
ものすごく元気にやっています。
狭いところでいっしょうけんめいやっておられました。頑張ってほしいと思います。

それから、ちょっと都合で会えなかったけど、私の同級生の生理の専門家とも連絡しまし
た。この人は日本の教授だったのですが米国に就職して、もどってくるつもりは無い
そうです。日本を見捨てる頭脳流出が始まったのでしょうか。心配です。
[2002年3月15日 22時39分30秒]

お名前: 鎌谷直之   
あと30分くらいで、サンディエゴのホテルを出発します。

今回の訪米ではかなり精力的に主にバイオ関係の会社や大学を訪問しました。

ボストンのGCI (Genomics Collaborative Incorporation)
 これは、遺伝子など患者さんのサンプルを集めて、世界の研究者の研究を助ける会社で
す。遺伝子の解析は、解析技術もさることながら、サンプル収集が大変だということが皆
わかってきたのでこれからの成長が予想される会社です。

ワシントンDCのNCBI (National Center for Biological Information)
 これは、遺伝子配列などの情報をコンピュータに入れたデータベースを作り、世界中の
研究者が使えるようにしている米国の連邦政府の機関です。遺伝子を研究している人なら
だれでも知っている組織です。

ベセスダのNIH(National Institutes of Health)
 これは、米国の連邦政府の健康医療に関する最大の機関です。病院もあります。

ゲイザースバーグのMedImmune社
 これはモノクローナル抗体などの医薬品を開発する会社です。

ロックビルのセレラ
 これは、米国の遺伝子配列解析会社です。遺伝子を研究している人ならだれでも知って
いる会社です。クリントンと一緒に社長が会見をしました。しかし、その社長も会社を去
り、大幅に方向転換して再出発しています。

サンディエゴのSequenom
 これは、半導体技術とマススペクトメトリーを用いて遺伝子(SNP)解析を行う会社で
す。技術的にすぐれており、これから伸びることが期待できる会社です。

UCSD (University of California, San Diego)
 これは、最大規模の医学部を持つ大学です。Ed Holmesという私の友達が医学部長をし
ています。Dennis Carsonという昔の私の上司もここで教授をしています。ここでは、大
学での成果を企業が使えるようにするための責任者と会談しました。

を視察しました。

今回は、特にバイオ産業がどうなっているか。バイオベンチャーがどのように維持されて
いるか。大学と産業界の連携がどのようになされているかを中心に視察しました。

やはり、米国のエネルギーはすごいものです。それは、会社が次々に作られることにより
維持されています。ということは、次々に会社がつぶれているわけです。それでも失業率
が低いのは、人々が簡単に会社を変わることができるからです。会社が倒産すると当然失
業がでるわけですが、それにより新しい会社が参入するチャンスが出るのです。日本では
倒産させないのはいいのですが、そのために若い新卒が就職できないという事態が生じて
います。どちらがいいのでしょう。

米国では日本と違って、ベンチャーとは投資の対象なのです。日本では確実に利益が上が
らないとお金を出す人はいません。それは銀行員の能力の差にもよりますが、日本では不
確実な投資をしないような銀行が生き残れることが問題なのです。確実な投資先として土
地や株の持ち合いをしたから今のようになったと思います。本当は銀行とは、新しい会社
の評価を行い、それに基づいて投資をする会社ではないでしょうか。

また、米国政府はベンチャー育成のため、大企業をいつも攻撃しています。これにより
ATT,IBMなどが支配することを防いでいるのです。大企業の支配のもとでは、若い人がベ
ンチャーを作ることはできません。この政府の姿勢が無ければマイクロソフトなども出て
来れなかったでしょう。日本では政府は大企業を保護します。

米国ではベンチャーで一度失敗しても、何回でもチャンスがあります。それが非常に大切
なことです。日本では一度失敗すると次のチャンスがないため、非常に慎重になり能力の
一部しか発揮できません。また、日本の法律が比較的あいまいであり、取り締まる方の裁
量が大きく影響することも問題です。そのような状態では国民は思い切って仕事ができな
いからです。逮捕されるか否かも、世論によって影響されるような社会ではちょっとでも
思い切った仕事はできないでしょう。日本は思い切った仕事をさせないような社会になっ
ているのです。

米国ではバイオの会社のほとんどは、最近できた会社です。大学の先生が作ったものがほ
とんどです。日本では既存の大企業がバイオをやっています。若い人もベンチャーを作る
よりも大企業に就職したいのです。それは、日本では大企業が得をしてベンチャーが損を
するようになっていて、それを若い人が良く知っているからだと思います。若い人が就職
できないのにベンチャーを作らない理由は、一度失敗すると立ち直れないからでしょう。
しかし、今の日本は大企業でさえ大変なことになっているようです。もし大企業が次々に
つぶれるようなことがあれば、大量の失業者が出るでしょう。そのような人たちが政府を
頼るのではなく、自分でベンチャーを立ち上げることができるようにするにはどうしたら
いいのでしょう。
[2002年3月15日 22時31分2秒]

お名前: 鎌谷直之   
今、サンディエゴのホテルです。
毎日忙しく大変です。
一日目はGCIといって、患者のDNAを集める会社を訪問しました。
同日、ワシントンDCに飛び、一泊。
翌日はNCBI、NIH(森口先生のラボ)
その翌日(今日)はセレラ社、
明日はSequenom社とUCSDに行きます。
明後日朝、帰国します。

忙しいので詳細は後日。
[2002年3月14日 16時30分28秒]

お名前: N Kamatani   
今、ボストンのホテルばい。
今回は初めて、バイオベンチャー、大学と私企業とのバイオの
連携などを視察し、日本の産学連携のありかたをさぐるのが目的です。

ITの分野では重要な発見はすべて大学ではなく、私企業からきています。
しかし、米国で最近進歩が著しいバイオの分野ではほとんどが産学
共同によって成果が上がっています。しかし、日本では産学協同が
あまりすっきりといっていない。その問題点を探るための視察です。

明日は、GCIというボストンの会社。この会社は世界中のヒトから
遺伝子と臨床データを集める会社なのです。いまや、遺伝子の解析
はコンピュータと機械が行うようになったので、おそらく近々その
中国となるでしょう。しかし、問題は臨床データを含めた臨床サンプル
の正確な収集と、それを遺伝子データと参照させた解析です。

製薬会社の仕事も様変わりしようとしています。薬物に対する社会の要求はうなぎのぼり
なのに、薬害などの倫理問題も深刻です。
かつては、良い化合物の特許を持っていた会社がすぐれた製薬会社
であったのですが、現在は多くの化合物はコンピュータが苦も無く
つくるのです。

そして、生物情報学の進歩により、薬物のターゲットは疾患や、機能
ではなく、分子そのものであることがわかってきました。いまや、薬物と特定の分子の結
合をコンピュータで実際に見ることができるように
なっています。

そうすると、化合物は特許性が薄いことになります。また、遺伝子配列はほとんど解明さ
れました(ということは、ほとんどの遺伝子はすでに実態としては同定されている)。分
子は遺伝子によりつくられているのですから、ある化合物は特定の分子と結合することに
なり、その分子は遺伝子にコードされていることになります。

いま、製薬の目的は化合物で病気を良くすることなのですが、当然
知識無しにそのあたりの化合物を投与してもよくなりません。そんなことで患者に適当な
薬を試すことは、倫理上不可能になりました。

そこで、ある化合物がある分子に結合するから、ある病気を改善するということを言わな
いと、それ以上に進めなくなったのです。

現在では、製薬会社は化合物を作りその特許を持つ会社ではなく、ある分子に結合した薬
をさがせば、ある疾患の治療薬を得ることができるという証拠を集めることなのです。だ
から、米国では化合物を
全く持たずに、遺伝子と疾患の研究をしている会社が次々に薬会社と
称するようになっています。

このような変化に日本の製薬業はついていっていないというのが
現状でしょう。このギャップがどのくらい大きいのか、実際に
米国の提示する未来像は(私の提示する未来像でもありますが)
正しいのか。じっくり見てきて議論して期待と思い思います。
[2002年3月11日 18時58分27秒]

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