記事タイトル:さみしい報告 


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お名前: 谷口敦夫   
5/21/01に先端技術セミナーというのがあったので聞きに行ってきました。新宿ワシントン
ホテルでfreeという魅力がありました。しかし、内容は難しかった。聞きに来ていたのも
基礎の先生が多かったようです。語学力の不足も相まって「さみしい報告」になります。
ゲノム時代の遺伝子予測・機能解析というテーマで3演題ありました。このうち演題2
(Using genomics to find restriction enzymes)の演者はRichard J. Robertsで1993
年ノーベル生理学・医学賞を受賞した人でした(個人的にはこの先生の顔を見ることがで
きただけでも良かった?)。演題3は医科研の小林一三先生(ゲノムを作りかえていた制
限酵素とその利己的な遺伝子たち)でした。以下、抜粋です。
1. SNP研究の中で制限酵素が重要になる。特異な配列(palindromeなど)を認識する制限
酵素は90%くらい見つかっているが、そうでない一般的な配列を認識して切断する酵素は
90%以上見つかっていない。
2. bacteriaの中に制限酵素があるが、ゲノムDNAがこれで切断されてはかなわないので、
ゲノムDNAをメチル化して、制限酵素で切られないようにしている。このために
methyltranferaseがある。細菌に外来遺伝子(ファージやプラスミド)がやって来るとこ
れらはメチル化されていないので切断される。細菌では同じ配列を認識して切断する制限
酵素の遺伝子Rとmethyltranferaseの遺伝子Mは連鎖している(RM gene:restriction-
modification gene)。
3. ファージDNAのなかにRM geneが入り込むとファージDNAは安定化する。
4. RM geneはトランスポゾンのように振る舞う。
5. R geneはM geneと一緒に動くので、M geneの場所がわかるとR geneが予測できる。この
ことを利用すると新しい制限酵素の発見が容易になる。しかしmethyltranferase geneは活
性を持っていることが多いが R geneは発現量が少なかったり発現していなかったりする。
ON, OFF機構もある。
6. 細菌でも外来DNAを取り込む性質のあるもの(ピロリ菌:パイロリというのですね、ナ
イセリア、H. influenzae)はRM geneを多く持つ。
7. MRSAにはexotoxin gene clusterがある。この領域は元来不安定であるが、RM geneが
入ることによって安定化されている。それで強い毒性を持つに至っている。

まちがっていたら訂正してください。以下はRoberts氏の経歴をinternetからとったもので
す。いまは、New England BioLabsにいるそうです。

Richard J. Roberts/アメリカ合衆国1993年ノーベル生理学・医学賞受賞「分断構造を
もつ遺伝子の発見」によりP・A・シャープと共同受賞。 

リチャード・ロバーツ博士はフィリップ・シャープ博士と,一つの遺伝子がDNA(デオキシ
リボ核酸)の中でいくつかの断片に分断された形で存在することを,それぞれ独自に発見
した。それまでは遺伝子はDNAの中でひとつづきに存在すると考えられていたが,このよう
な単純な遺伝子構造の見方は両博士の発見によって大幅に変更された。彼らはアデノウイ
ルスという風邪ウイルスを実験モデルに用いた。しかしその後ヒトを含む高等生物でも,
ほとんどの遺伝子がこうした“分断遺伝子”であることが明らかにされた。分断遺伝子の
発見は,進化につれて遺伝子がどう変化するかについての考えを大きく塗りかえた。また
遺伝子が発現するために必要な,断片を連結して編集する「スプライシング」機構の存在
を予測することにつながった。この発見は,今日の生物学の基礎研究と医学的研究の基礎
を支える重要性をもっている。
[2001年5月23日 19時24分18秒]

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